第4話 大変!姉が来た!

 カリカリと、筆記具と答案用紙のこすれる音のみが響く、そんな、ぴりぴりとした緊張感に支配された空間を、突如として電子音が切り裂く。


 ピピピピッ。


 「先生、応答してもいいですか?」

 スッと手を挙げるセフィア。

 「はい、手短にね」


 教師も鳴れたものだ。もう全く驚きもしてない。セフィアは戦闘モードの声で、遥か宇宙にいる部下との交信を始めた。


 「状況を」

 「アステロイドベルト内の敵艦隊が前進を開始。総数三十、編成は重機動艦隊と推測」

 「了解。こちらは退席不可のため戦術パターンBの23で対応せよ。補足修正はナミシマ参謀に一任、以降の戦況報告は不要」

 「ラジャ。司令官、ご武運を」


 ぴっ、と通信を切る音。教室内は再び、生徒各々の静かな戦場となった。


 期末考査。


 これを抜けずして、明るい未来はやってこない。人それぞれに目標や基準はあるだろう。トップを目指す者、中間テストよりは上になりたい者、赤点を取らなければ゛それでいいと妥協する者、何も考えてはいない者。


 一学期の終わりを目前に立ちはだかる壁、それが期末テストなのだ。





 ピピピピッ。


 「先生、応答しても」

 「どうぞ」


 今まで授業中にもこんなことはあったから、担当教師たちもそんなに気にはしていない。


 「状況を」

 「火星軌道にて敵艦隊に動きあり。スペシウム採掘と思われます」

 「その件はムラクモ隊に一任したはずだ」

 「そのムラクモ少佐と交信不能です」

 「……ジェリアン大尉の部隊が近くにいるはずだ、連絡を取らせろ。以降はササメユキ参謀に一任、以降の戦況報告は不要」

 「ラジャ」





 ピピピピッ。


 「先生」

 「いいぞ」


 テストが始まるたびに連絡が入ってくる。テスト期間を見計らった嫌がらせだよな、これ。


 「状況を」

 「第六番惑星重力圏に敵補給艦と思われる艦艇十隻がワープアウト。ヘリウム及び水素の奪取が目的と推定」

 「土星か、遠いな。十隻では大したことはできないだろうが、一応観測ドローンは飛ばしておけ。それからこの手の判断はササメユキ参謀に任せてあったはずだ」

 「それがその、参謀は早めのお昼で離席しておりまして」

 「くっ」


 テスト中なので横を向くことはできないが、右側からなにかものすごい圧力を感じる。ああ怒ってるんだろうなこれ。


 「……恐らくは敵の作戦準備行動だ。しっかり見張っておくよう参謀に伝えろ。以上」

 「ラジャ」





 ピピピピッ。


 「……先生」

 「はいどうぞ」


 午前最後のテスト時間、四限にもきっちり通信機は鳴った。


 「状況を」

 「はーいセフィアリシスん、元気してるぅー?」


 能天気な声が教室に響いた。


 「わっ、おおおおおお姉ちゃん!?」

 「んもう、全然連絡くれないんだからー。こっちから連絡しちゃった」

 「ちょっと、軍用の秘匿回線私的に使わないでって前からあれほど」

 「いいじゃないのちょっとくらいー。【状況を】とかかっこつけちゃってもう、カワイイんだから」

 「やっ、やめてよもう!」


 あー、うん。もうテスト中の雰囲気がぶっ壊れた。


 「今からそっち行くから。あと三十分ってとこかな?一緒にご飯食べようと思って。待っててね?」

 「そんなお姉ちゃん、急に言われても」

 「これは命令であるセフィアリシス大佐。待機するように」

 「!……はっ、了解しましたエリシエラシス中将」


 おおよそ姉妹の会話とは思えない内容と声色で通信は終わった。こんなの聞かされて、この後テストに集中なんてできると思う?





 そんなわけで(どんなわけだ)、校庭に着陸したスペースボートから軍服をぴしっとキメた妖艶な女性が降り立った。生徒も教師も教室の窓からその様子をじっと見ている。


 出迎える僕とセフィアとの距離は約五十メートル。しばらく周囲を眺めていた彼女はセフィアを見つけると、こちらへとゆっくり歩き出し……そしてコケた。


 「まったくもう!」


 慌てて駆け寄り、助け起こすセフィア。


 「なんでこんなところで転ぶのよ!」

 「官給品のパンプスなんて普段履かないもん、歩きにくくて」


 ゆっくり近づく僕を見て、彼女は微笑む。


 「ふーん、彼がレイジくん?

 「どうも、長戸零士です」

 「ふーん」


 やたらとじろじろ見られている僕。あからさまな品定めに慌てたセフィアが、僕と彼女の間に割って入った。


 「そっそれよりお姉ちゃん、本部付きの中将閣下が前線になんて、なにかあったの?」

 「うん、何かあったから来たの」


 姉妹というのにタイプが全然違うんだな、と会話の中身に入れない僕は無責任な感想を心の中で述べることにした。活発可愛い系の妹に、しっとり妖艶な姉。美形の方向性が全然違うはずなのに、どことなく重なる部分もある。


 だってしょうがないじゃないか、軍のことなんてさっぱり判らないし。


 「とにかくお昼にしましょうよ、地球のピザってのを食べてみたいわ」


 えっ。


 その唐突な提案に、僕とセフィアは振り返って小声で密談を始める。


 「……レイジ、学校に出前って、取れた?」

 「いやー、先生が職員室でラーメン食ってるのは見たことあるけど、生徒が出前ってのは」

 「あら、ダメなの?」

 「うわっ!」


 いつの間にか中将殿が僕とセフィアの前にしゃがんで、二人の顔を不思議そうに見上げていた。


 「たったぶん、許可がもらえないと」

 「まあ、士官学校もそういうの厳しかったし、ここも学校ならそうなのよね?」

 「うん、ゴメン」


 謝るセフィアの頭をぽふぽふと撫でて中将殿は笑う。


 「じゃあいいわ、ピザは夜にしましょ。それまで私勝手に街を見て歩くから。それと」


 手の中の小さな直方体を中将殿が操作した瞬間、スペースボートが消え失せた。転送?それとも光学迷彩?この超科学はいつ見ても判断に困る。


 「中将殿ってのやめて。エリシエでいいわよ」


 なんで声に出してないのにバレてんのー!?





 学食でカレーライスを確保し、食べる僕とセフィア。午後の公民のテストで今日の分は終わる。


 「ごめんねレイジ、びっくりしたでしょ」

 「いやまあ、突然肉親がやってくるってありがちなパターンだよね」

 「それだから問題なのよ」


 福神漬をスプーンでつつきながらセフィアは言う。


 「みんな地球だからってノリノリ過ぎ」

 「地球だから?」

 「そ」


  ふう、とため息をついてセフィアは続けた。


 「たぶんレイジは知らないと思う。昔、この地球から一隻の宇宙船が、遥か外銀河を目指して飛び立ったんだ。その名前はパイオニア。パイオニアには、まだ見ぬ異星人との交流を目指した金属板が載せられていた」

 「そんなことがあったのか」

 「それからしばらくして、地球からまた宇宙船が飛び立った。その名はボイジャー。ボイジャーにも、人間の文明、文化の一部分を記録した媒体が乗せられていた」


 はー、ユーミンの歌くらいしかわからん。


 「先行していた銀河の文明は、新しい後輩の誕生にとても喜んだわ。そしていつかこの幼い文明が自分たちと肩を並べる日がくることを望んだ。知的生命体が、自分たちの太陽系から外に出るっていうことは、それだけ大変で、それだけ難しいことなの」

 「なんだかそういうの判る気もするな。未知の世界に足を踏み出すって、おっかないもんな」

 「だから、あたしたちは地球の成長を見守ることにした。何千年かかるか判らないけれど、きっとここまで来てくれる日を信じて。そう、あの時まで」


 あの時。それはきっと……


 「ダグなんとか星雲人?」

 「そ、ダグラモナス星雲人。連中がこの地球に目を付けてしまった。だからもう、黙って見守るなんてタテマエを貫くことはできなくなった。その結果」

 「その結果?」

 「パイオニアの金属板、ボイジャーレコード。その二つで興味津々だったところに、もう自重する必要もなくなったから……今もう連合国家内では地球の文化が大ブームなのよ。特にサブカル系」

 「そう来るか!?」


 なんかすっごくハードでカッコいい雰囲気の導入からの落差に僕はズッこけた。


 「いずれは沈静化するとは思うけど、この想像力っていうか妄想力?これはたぶんこの地球人が飛び抜けてる能力だから、よその惑星人じゃ真似するのは難しいかもね」


 つまり地球のサブカル文化は宇宙を制覇する、のか!?マジかそれ。


 「色々言われるかも知れないけど、我慢してねレイジ?」

 「大丈夫だと思うよ、だって君の姉さんなんだろ?」


 たぶん悪意を以て何かをすることはないだろう。スキル最強人格ポンコツがこの手の人間なんだということを理解し始めている僕は、動じずスルーする方向に覚悟を決めた。ええ後ろ向きな覚悟です。それ以外にどうしろと?






 ピピピピッ。


 「先生」

 「はいはい」


 午後のテスト時にも通信機は呼び出し音を鳴らす。


 「状況を」

 「敵中規模艦隊が金星の大気圏に突入の模様」

 「放っておけ、連中の艦では金星の大気圏内活動は不可能だ」

 「ですが、突入艦艇の一部にグリカトス反応が」

 「馬鹿な、通商連合が裏切るはずがない」

 「AIは、味方艦残骸からのリバースエンジニアリングによるものと推測」


 出てくる固有名詞とか全然判んないんだけど、聞いちゃうと気になってテストどころじゃないんだよなぁ。たぶんこの教室内にいる連中もみんなそうなんだろうなぁ。


 「ならば技術評価試験の可能性が高い。月軌道艦隊出動、一隻残らず撃沈せよ。作戦パターンDの8、以降の対応はナミシマ参謀に一任する」

 「ラジャ」


 ちなみに今日はテスト二日目。あと二日あるんだぜ!毎時限これでもうグダグダさ!でも地球のピンチを守ってくれてるんだから何も言えない!言っちゃいけない!


 僕自身はこんな状況にも馴れつつある。ていうか、いちいち驚いてたら体が持たない。セフィアは前にテンションが大事だって言ってた。その意味が、なんだか判って来た気がするよ。とほほ。





 「大失敗ね、テヘペロ」

 「可愛らしく言ってもダメですお姉ちゃん」


 未開封のピザの箱が四つ積み重なっている。二箱はなんとか食べ切った。


 「だからレイジがM二枚って言ったのに、なんでLを六枚も頼むのよ」

 「だってだって、あんなに種類があったらみんな食べたくなるじゃない。しかも一枚頼んだらもう一枚同じのくれるっていうのよ?」


 代金が日本政府から出てるからって頼みすぎである。


 「冷めたピザって扱いに困るんだから」

 「いいわよーだ。冷凍しといて、後でちびちび食べるから」


 エリシエさんはちょっとおしゃれなデザインのハンドバッグを開けて、ピザの箱を無造作に突っ込んだ。ああ、例の異次元バッグだから入るんですよ、僕はもうこの異様な光景に慣れてしまった。


 「でもまぁ美味しかった。カロリーすんごいけど」

 「美味しさ重視で積んでる食べ物だからね。毎日なんか食べられないよ」


 自分の家だと言うのに、エリシエさんがいるだけでなんとなく落ち着かない僕がいる。セフィアには馴れたけれど、女性が近くにいるっていうのはやっぱり落ち着かない。


 「さて、じゃあ中央からの仕事だけ先にしちゃうか」


 そう言うとエリシエさんの目つきが変わった。鋭い、冷たい、怖い。


 「大佐。大佐の報告に中央は不満を持っている」

 「えっ?しかし、迎撃艦隊の損耗は想定以下に収めております」


 セフィアの畏まり方も、さっきまでの姉妹の会話とは全然違う。これが軍隊の上下関係なのか。


 「損耗率の話ではない。作戦時間に対する成果が少ない。これは大佐の意図的サボタージュではないかとの声も出ている」

 「そんな、艦隊戦の前提が迎撃行動である以上は、戦果の追及は不可能です!」


 「口答えが多いな大佐」


 「申し訳ありません」


 ふん、と鼻で笑う中将殿。いや、そう表現しないといけない雰囲気じゃね?


 「それに大佐、貴官は何か勘違いをしているのではないか?誰が艦隊戦と言った」

 「はっ?と、申されますと?」


 ぱしぱし、とテーブルを叩く中将殿。


 「作戦に就いて約二か月。この間の成果がデート三回手繋ぎ三十二回、ハグ十七回キス四回、しかも一度は額。これは一体どういうことだ」


 えっ。


 「中央は迅速なる戦果を期待している。この意味が判るか?」

 「し、しかし、本作戦には互いの感情と関係の育成が不可欠でありまして」

 「そんなことだから私が来たのだ!」


 苛立っているように口調がきつくなる中将殿。だけど話の内容おかしくないか?


 とか考えていると、中将殿の視線がこちらを向く。おっかない。


 「だ・か・ら、エリシエでいいって」


 声色の落差がすごい!逆に怖いよ!



 「ねーレイジくん、君から見て妹ってどう?」

 「は、はひ、そ、そりゃまあ、可愛らしい、です」


 なんかもう変なロボットみたいな返事になってしまう。


 「じゃあどうして、手を出さないの?」

 「そ、それはその、僕未成年ですし学生ですし、責任とかいろいろ、その」

 「ふうーん、優しいのかな、それとも優柔不断なのかな、それとも迷惑なのかな」


 僕はセフィアの顔をちらりと見た。下を向いて口を真一文字に結んでいる。肩をぷろぷろ震わせて、何かに耐えている。


 「フィクションだったら良かったかな?ゲームなら、小説なら、アニメなら良かった?そういうお話みんな好きなはずなのに、どうして君は手を出さないの?もう充分に現実離れしてるんだし、ふっきれてもいい頃なんじゃないの?」



 「……違うんです」



 「何が?」


 僕はエリシエさんとセフィアを交互にチラ見しながら重い口を開く。


 「突然で、あまりに突然で。世界が一気に変わって、驚いて。だから、だからこそ僕は」

 「僕は?」


 「出来る事なら、大事にしたいんです。急ぎたくないんです」


 次の瞬間、セフィアが僕に飛んで抱き着いた、その勢いで二人は椅子から床に転げ落ちる。


 「レイジありがとう!」


 セフィアは泣いている。涙がぼたぼたと僕の頬に落ちる。こんなに号泣する女の子なんて初めて見た。僕はそっとセフィアの頭を撫でる。


 「うわーん、レイジ!」

 「成る程、状況は把握した」


 そんな僕たちを見て、エリシエさんがまた軍人モードに戻った。


 「中央の要求が些か拙速であったようだ。作戦は順調に進行中と報告しておこう」

 「お゛ね゛え゛ぢゃ゛あ゛ん゛!」


 涙と共に鼻水までが落下し始める。僕は気づかぬふりをする。


 「まあ中央の老人たちを恨むな。全てが0と1で判断がつかないということさえ忘れてしまうくらいに、我々は遠くまで来てしまった。それを引き戻すための戦いでもある。責任は重大だぞセフィアリシス大佐」

 「り゛っ、り゛ょ゛う゛がい゛であ゛り゛ま゛ずぅ」


 そうだ。流されつつ、受け入れつつも最低限自分の意思を貫く。それが今の僕に出来ること。めっちゃ後ろ向きだと思うけど仕方ない。仕方ないんだ。


 「ほらほら、そんなに顔ベタベタにしちゃって。洗ってらっしゃい」


 ぐすぐす言いながらセフィアは洗面所に向かう。


 「ふふ、可愛いでしょあの子」

 「は、はあ」


 エリシエさんのモードチェンジもすごいな、と思う。今僕を見ているのは慈愛そのものの眼差しだ。


 「うちは代々軍人の家系でね、幼いころから指揮官としての考え方や行動を叩きこまれるの。十二で戦場デビューして、あとはずっと軍務一辺倒。だからお姉さんもちょっと心配になっちゃってさ、ひょっとしたら、急な話で妹が受け入れられてないんじゃいかって。だからぐずぐずしてる妹を焚き付けに来たんだけど、余計なお節介だったみたいね。」


 ……なんかいい話っぽくまとめようとしてるけど。


 「あの、ひとつ聞いていいですか?」

 「なあに?ちなみに今恋人はいないよっ☆彡」

 「違います。さっきデートとかハグとか回数言ってましたけど」

 「あああれね。一応作戦行動だから、全部カウントしてるわよ。未遂含めて」



 うわーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!



 「やめてください悪趣味な!!」

 「でもでも、作戦だしデータは残さないと。大丈夫、記録にアクセスできるのは中央でも五十人はいないわよ」

 「みぎゃーーーーっ、ごっごじゅうにんも!?」

 「トップシークレットですもの。そのうち十人はうちの親族よ。父と母なんかもう盛り上がっちゃって、新しい報告を心待ちにしてるのよー」

 「ああああああ……」


 なんできょとんとしてるんだこの人は!


 「……あのですね!」

 「はいはい」

 「これ以上記録取るなら、手を出しませんよ」

 「ん?」

 「プライベートを監視されるなんて嫌すぎます!見られたくない権利があるはずです!」

 「んーんー?」


 本気で判らないんだろうか?


 「つまり、秘密裏でないと作戦進行に支障がある、ということでいいのかな?」

 「そんなもんです。そういうのは、僕と彼女だけの秘密にしたい」

 「でもでもさ、子供出来たら逆算で判っちゃうじゃん」


 生々しいよ!


 「セフィアはそのへんどうなの?」


 顔を洗って戻って来たセフィアにエリシエさんが声をかける。


 「何の話?」

 「作戦の行動記録のこと。彼ったらね、あなたとのスウィートなメモリーは二人だけで大事にしたいんだって。きゃっ」


 そこまで言ったかな?


 「うーん、でも作戦の経過記録の共有って大事たとは思うんだけどな」


 ああなんかここ感覚違う。


 「でもレイジがそうしたいっていうなら、それでいいよ」

 「ならそうしましょう。別に必須ログでもないし」

 「えええ必須じゃないなら最初から記録しないでくれよ」

 「あ、やっと声で突っ込まれた」


 なんかエリシエさんが嬉しそうにしてる。ツッコミ待ちだったのか!?声で、ってどういうことよ!?


 「まあでもたぶん、ログ更新止まると色々あるよ。たぶん父さんと母さん来る」

 「げっ」


 セフィアがげって言ったぞ。どんな両親なんだ?


 「とにかく元気そうにしてて良かったわ。報告書だけじゃ判らないことばっかりだしね」

 「うん、でも大丈夫だよ。セフィアリシス大佐は必ず任務を遂行します」

 「うむ、大佐の戦果に期待する」


 姉妹は笑顔で敬礼し合う。まあなんとなくうまいことまとまった感じでいいんじゃないか?流されてるだけかも知れないけど、まあそんな感じだ。







 ピピピピッ。


 「先生、応答していいですか」

 「はいどーぞ」


 結局、テスト期間全日を通じて星雲人は活発な動きを見せた。


 「状況を」

 「火星の北極付近に敵中規模艦隊ワープアウト。AIは中継基地設営目的と予測」

 「ムラクモ隊との通信は回復しているな?」

 「はっ、六時間前より戦線に復帰しています」

 「護衛の相手はムラクモ隊だけでは無理だ。超々距離射撃で資材の搬入を妨害せよ。新配備のメルクリウス・レーザーをスタンバイ、敵が狙撃可能位置に入り次第撃滅だ」

 「しかし、メルクリウス・レーザーは試射もまだで」

 「今が試射だと思えばいい。ナミシマ参謀に指揮を任せる」

 「ラジャ」


 たぶんメルクリウス・レーザーってのはエリシエさんが持ってきたおみやげのうちの一つなんだろうなー、とか考えてしまうテスト中であった。


 そんなこんなでうちのクラスのテスト結果はおおむね壊滅したのだけれど、政府とか教育委員会とかがあれこれしてくれたらしく、全員それなりにゲタを履いた点数を頂戴できることになったのでした。赤点も無しで、まあめでたしめでたし。




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