第27話 発表
月曜日。どういう発表をするか気が気では無かった俺はまた朝少し早めに行った。
しばらく経つと、日奈子や森本、上水などが来たが特に何も言わない。まだ、言わないのかと思ったが、井川が来てだいたいのメンバーが揃ったところで、森本が言い出した。
「さて、ここで発表があります」
「なんだよ」
井川が不機嫌そうに言う。
「日奈子、どうぞ」
森本は日奈子に振った。
「私?」
「そりゃそうでしょ、自分のことなんだから」
「そうだけど……言わなくちゃダメかな。えっと、彼氏が出来ました」
「「「おめでとう!」」」
発表内容をあらかじめ知っていた森本や上水、竹田は一斉に祝いだした。
「ありがとう」
日奈子も嬉しそうだ。
だが、井川は苦虫をかみつぶしたような顔で日奈子を見ていた。そして言った。
「誰だよ、彼氏って」
「それは秘密」
森本が言う。
「お前、知ってるのかよ。言えよ」
「言えるわけないでしょ、日奈子のプライベートだもん」
「この学校のやつか?」
「さあ」
「……しらばくれやがって。この間デートしてたやつか」
「そうだよ。ようやく付き合い出したんだって」
チッ。井川の舌打ちが響いた。
「ちょっと、おめでたいことだよ。お祝いしてよ」
「……おめでとう」
「ありがとう」
日奈子は猫かぶりスマイルだ。
まあ、これで井川も大人しくなるだろう。
井川は不服そうに教室を出て行った。
日奈子はその後も女子達に囲まれていろいろ聞かれている。
「ね、どういうところ好きになったの?」
「え、優しいところかな」
そうだったのか。俺、優しいかな。
「どっちが告白したの?」
「うーん、私かな」
「え、そうなんだ! 日奈子の方が彼にべた惚れって感じなの?」
「ま、まあ、そうかな」
「すごいね、相当なイケメンなんだろうね」
「そうでもないよ。普通の感じ」
ま、そうでもないな。
そんな話を聞いていたら竹田が俺の席に来た。
「日奈子の彼氏って相当すごい人みたいね」
分かってて俺に言ってくる。
「さあな」
「優しい人だって」
「うるせえよ」
「ふふ。まあ頑張って」
「ああ」
竹田は席に戻っていく。
「はーい、その辺にしておいてね!」
森本が女子達の質問を打ち切らせた。さすがに本人が居るところでいろいろ聞かれるのはかわいそうだと思ったのだろう。
「はぁ」
日奈子がため息をついた。相当疲れた様子だな。俺はメッセージを送った。
陽太『昼休みサービスしようか』
日奈子がスマホを見て返信している。
日奈子『うん、お願い』
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