第22話 月曜の朝

 月曜日の朝。俺が教室に入ると、委員長の竹田美子が俺を見て言った。


「笹垣君、おはよう」


 俺はいつものように無視して自分の席に行く。


「笹垣君、おはよう」


 竹田はしつこく挨拶してきた。あ、そうか。この間、無視しない約束したんだっけ。


「……おはよう」


「うん、おはよう」


 竹田は満足したようだ。

 ふと、見ると周りのやつらが驚いた顔で俺を見ている。俺が竹田に挨拶したからだろう。

 俺は何人かをにらみつけて、自分の席に座った。


 昼休みになり、竹田が俺の席に来る。


「笹垣君、進路調査票出してないでしょ」


「あ、悪い」


「笹垣君だけだから。今日中に出してよ」


「分かった」


 それだけ言うと竹田は席に戻っていった。すると、竹田の周りの生徒達の声が聞こえてくる。


「美子、今、笹垣君と会話してた?」


「うん、そうだけど」


「いつの間に会話出来るようになったの? いつも無視されてたよね」


「うん、ちょっとね。弱み握ったから」


 弱みかよ。


「へぇー、そうなんだ。どんな?」


「言えるわけないでしょ。でももう無視はされないと思う」


「そっかあ」


 竹田は偉そうにしていた。


 そんなとき、日奈子からメッセージが届く。


日奈子『ほんとごめん』


陽太『いいから』


日奈子『屋上行ってて。サービスするから』


 ほんと、いいのに。だが、あれはやっぱり見たい。


陽太『わかった』


 俺は屋上の誰にも見られないような場所に来た。しばらくすると、日奈子が来た。


「陽太……」


「もう謝らなくていいからな」


「うん、分かった。早速やる?」


「いきなりは味気ないだろ。少し話そう」


「うん」


「今日はストレスたまってないか?」


「うん。今日は割といいよ。今までのところはだけど」


「そうか」


「あれ以来、井川が話しかけてこなくなったからだいぶ楽になった」


「森本のおかげだな」


「うん。でも、陽太のおかげでもあるから。感謝してる」


「そ、そうか」


「うん。だから、こんな事でしか返せないけど……全力で行くね」


「う、うん……」


「にゃあ」


 日奈子が猫のポーズを取った。可愛い。俺は今日こそ照れずにしっかり見ようと思ったが、やっぱり照れて目をそらしてしまう。


「ふふふ。なんか、照れる陽太を見れて私にもご褒美なんだけど」


「い、言うな」


「満足した?」


「ああ、ありがとう」


「なんか、お礼言われると照れるわね。たいしたことしてないから」


「いや、俺にとっては癒やしだ」


「そ、そう。なら、良かった」


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