第21話 条件
委員長・竹田美子は俺と日奈子が一緒に帰ることを秘密にする代わりに条件を出してきた。
「条件って何?」
「私は笹垣君がもっとクラスに馴染んでほしいって、言ったでしょ。だから、クラスのメッセージグループに入って」
俺に入れって事か。日奈子を守るためだ。仕方ない。
「わかったよ」
「あら、素直ね」
「いいだろ」
俺は仕方なくクラスのメッセージグループに入った。
「それと、今後、私が笹垣君に話しかけたらちゃんと聞いてもらっていいかしら」
「え? 今まではどうだったの?」
「こいつ無視するのよ」
「あー、私も最初無視されたからねえ」
「でしょ。伝えたいことがあっても無視して全然聞いてくれないから会話にならなくて。今後はちゃんと聞いてよね」
「わかったよ」
「うん。だったら、交渉成立! 私も秘密守るから安心して」
「美子、ありがとう」
「うん。じゃあ、私は退散するから後はいつものように2人の世界に入ってね」
そう言って、竹田は立ち上がった。
「え、降りるの?」
「ううん。前の席に移動するだけ。2人のお邪魔はしないから。じゃあね」
そう言って、竹田は前の席に移動した。
「はぁ。またまたごめんね」
日奈子が謝る。
「なんでだよ。日奈子のせいじゃないだろ」
「そうだけど。なんか陽太に迷惑掛けてばかりな気がする」
「気にするな。俺もお前と一緒に帰れるのは楽しいし」
「そうなの?」
「ああ。楽しんでるぞ」
「良かった」
そう言って、日奈子が俺の腕をつかむ。
「あ」
日奈子がそう言って前の方を見た。すると、竹田が俺たちの方を見てニヤニヤしている。
「……電車の中ではスキンシップは避けた方が良さそうね」
「そ、そうだな」
「あー、でもそうするとまたストレスたまりそう」
「お前、スキンシップでもストレス解消してたのか?」
「そうよ。悪い? 陽太を叩いてストレス解消してたのよ」
「まったく。さっきまでの猫かぶりはどこいったんだよ」
「いいでしょ。陽太の前なんだから」
そんなことを言っていると、電車が止まる。竹田はここで降りるようだ。俺たちに手を振ってきた。日奈子も振り返し、竹田は降りていった。
「降りたからいいか」
日奈子が俺の腕をつかんでくる。
「電車の中では触らないんじゃ無かったのか」
「いいでしょ。もう美子居ないし」
「まったく。いいけどさ」
「陽太も私に触りたければ触ったら?」
「な!? そんなことできるわけないだろ」
「ふふ、冗談冗談。陽太はそんなことしないもんね」
「当たり前だ」
「ふふふ」
そう言って、俺との間を詰めてくる。俺の腕と日奈子の腕が完全に触れあった。
「お前、近くないか?」
「そう? さっきまで遠慮してただけよ」
「まったく」
「……嫌だった?」
「嫌じゃないけど」
「離れて欲しいなら離れるから言って」
「いいよ、お前がしたいようにしろ」
「ふふ、ありがと」
結局降りるまで俺たちの距離感は変わらなかった。
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