第20話 委員長

 翌日からは特に変わることも無く、俺は日奈子と帰っていた。

 教室でも大きな変化は無い。ただ、井川が日奈子と話すことは大きく減った。そして、森本が井川に積極的に絡むようになった。あとは、ときどき上水が日奈子を彼氏ネタでからかうぐらいか。


 金曜日。今週も終わりだ。俺は図書室で日奈子からの連絡を待つ。


日奈子『来て』


 メッセージが来たので、俺は電停に向かった。だが、電停に居たのは日奈子一人では無かった。あれは、確か委員長、竹田美子たけだみこだ。ショートカットで眼鏡を掛けている。日奈子の隣に居て何か話している。


 今日は一緒に帰るのはあきらめるしかないか。俺は気がつかれないように少し遠くに立った。


「あ、笹垣君」


 だが、すぐに竹田に気がつかれてしまう。おれは少し会釈して無視することにした。


「ちょっと、なにしてるの。こっちおいでよ」


 竹田が俺を呼ぶ。仕方ないので俺は近づいた。

 俺が竹田の隣に立つと、竹田は言った。


「2人、いつも一緒に帰ってるよね」


「「え!?」」


 俺と日奈子は同時に驚きの言葉を発した。


「なんで知ってるの?」


 日奈子が言う。


「だって、私も電車通学だもん。たまに見てるよ」


 見られてたのか。これはまずい。


「美子、ごめん。これは内緒にしてくれるかな」


「え? 内緒だったの? まあ、いいけど」


 そこに電車が来た。俺たちは乗り込む。竹田が一番後ろに座った。その隣に日奈子が座る。俺はその横に座った。


「内緒にするのはいいけど、いくつか聞いていい?」


 竹田が言う。


「うん、いいけど」


「2人、いつから付き合ってるの?」


「付き合ってないわよ」

「うん、付き合ってない」


 俺たちは2人で否定した。


「え、そうなの? 電車の様子からてっきり……」


「ただの友達。たまたま電車で一緒になってるだけだよ」


「たまたまじゃないでしょ。いつも、一緒に居るし。それにいつもイチャイチャしてるでしょ」


「イ、イチャイチャなんてしてないし……」


「してないつもりなんだ。ふーん」


「……そんな風に見えた?」


「うん。見えたよ」


「そ、そっか……」


 日奈子は落ち込んだように言った。


「それと、前に由美が話してたデートしてた人って笹垣君?」


「う、うん……」


「やっぱりそうなんだ。私はすぐピンと来たけど、みんな知らないんだね」


「教室では話さないようにしてるからね」


「確かにそうだね。私は笹垣君がもっとクラスに馴染んでほしいって思ってるから、日奈子と仲良くなったのは嬉しいんだけどね。でも、クラスで話さないから何でかなあって」


「私は話してもいいんだけど、陽太がね」


「……陽太って、笹垣君のことね」


「あ、笹垣君がね」


「言い直さなくていいから。確認しただけ」


 竹田は俺の名前に確信が無かったようだ。まあ、仕方ない。


「俺がいきなり日奈子と話しても変だろ。日奈子にも迷惑がかかりそうだし」


「そんなことないけど」


「なるほどね。まあ、確かに大騒ぎにはなるだろうね」


 竹田は納得したようだ。


「だから、お願い。秘密にしていて」


「……しょうがないなあ。でも、条件がある」


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