第18話 放課後の教室

 教室に行くと、そこには石川日奈子と森本由美が居た。


「わ、ほんとに来た!」


 俺が行くと森本が驚いている。


「なんだよ」


「ごめん、一緒に帰ってるの言っちゃった」


 日奈子が俺に言った。


「はぁ。森本ならいいけど。お前、誰にも言うなよな」


 俺は森本に釘を刺す。


「分かってるって。それにしても、毎日待ち合わせしてるの?」


「そうだよ」


「すごっ。ずっと図書室で待ってるの?」


「そうだけど」


「いや、すごいなって」


「何がすごいんだよ」


「だって、暇じゃ無い? 日奈子のためにそこまで出来るってすごいなあ」


「暇じゃ無いよ。俺は以前もそうしてたから問題ない」


「そうなんだ。それにしてもすごいなあ」


「何よ」


 日奈子が森本に言う。


「ほんとに付き合ってないの?」


「付き合ってないわよ」


「ふーん。まだ付き合ってないってやつか」


「う、うるさいわねえ」


「ふふ。分かった分かった。私は味方だからね」


「はぁ。で、今日はどうするんだ?」


 俺は日奈子に聞いた。まさか3人で帰るのか?


「あ、私はもうカラオケ行くし邪魔しないから。先に日奈子と電停いってる。遅れてくるんでしょ?」


「ああ」


「じゃあ、お先に。日奈子行こう!」


「う、うん。じゃあ、連絡するから」


「わかった」


 結局、また待つのかよ。俺は手持ちの本を教室で読みつつ連絡を待った。

 しばらくするとメッセージが来た。


日奈子『来て』


陽太『了解』


 いつもこれだけのやりとりだ。俺は電停に急いだ。


◇◇◇


 電停に行くと日奈子が一人で居た。


「ほんと、ごめん」


 日奈子が俺に言う。


「いいけど、一緒に帰ってることまで言わなくて良かったろ」


「由美がどういう関係だってしつこく聞いてくるから。私たちの関係って、一緒に帰る仲間って言っちゃったの」


「まあ、そうだけど」


「ごめん。今日は私がおごるから。ちょっと寄ってこう」


「それはいいけど」


「サービスもするからさ」


「サービス?」


「陽太が好きなやつ。あとでやってあげるから」


 猫のやつか。まあ、好きだけど。


「あ、ちょっとにやけた」


「にやけてねえよ」


「ほんと、あれ好きなんだねえ」


 日奈子はニヤニヤして言った。


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