第16話 月曜
月曜日。森本由美が心配だった俺は朝少し早めに行く。日奈子のメッセージでは森本に秘密にするように何回も釘を刺したらしいから大丈夫だとは思うが、もしバラされたらまずいことになる。
しばらく経つと、日奈子のグループメンバーが揃いだした。わいわい騒ぎ出す。今のところ、森本は何も言っていない。大丈夫そうだ。そう思ったときだった。
「……そういえば私、見ちゃったんだよねえ」
森本が言い出す。
「ゆ、由美。何言い出すのよ」
日奈子が焦っている。まずい。
「日奈子がデートしてるところ!」
「「え!?」」
あいつ、言いやがった。思わずそちらを振り向こうとしたが何とかとどまって耳だけを集中する。
「由美、言わないでって言ったでしょ」
「誰とかは言わないから。いいでしょ」
「石川、本当なのか?」
井川が聞いている。
「う、うん……」
「うわー、そうなんだ。日奈子、彼氏居たんだ」
上水一華の言葉に教室中が注目しだしたようだ。
「ち、違うから。彼氏じゃ無いし」
日奈子が言う。
「あー、付き合ってないんだ」
「う、うん。そういうのじゃない」
「なんだ」
井川が安心したような声を出した。
「でも、彼氏みたいなもんなんでしょ。腕組んでたし。すごく仲よさそうだったよ」
「えー! そうなんだ」
森本の言葉に上水が興奮しだした。
「石川、そうなのか?」
井川が不満そうに聞いている。
「う、うん。そうかな」
日奈子が肯定したことでさらにグループは盛り上がりだした。
おいおい、俺は彼氏みたいなもん、という認識だったのかよ。
「石川、そいつのこと好きなのか?」
井川がしつこく聞く。これは何と答えるんだろう。
「い、言わせないでよ!」
日奈子は照れて言った。
「キャー、恋する乙女ね。日奈子可愛い」
上水と森本が盛り上がっている。しかし、井川は不機嫌になったようだ。
あいつを不機嫌にするためなら多少の嘘はいいか。
ホームルームが始まり、教室が落ち着きだした。それが終わるとすぐに俺のスマホにメッセージが来る。
日奈子『聞いてた?』
陽太『うん』
日奈子『ごめん、いろいろ流れで言っちゃった』
陽太『俺は名前が出てないからいいけど』
日奈子『いいけど?』
陽太『日奈子はいいのか。俺は彼氏みたいなもんじゃないだろ』
俺がこのメッセージを返すと次の返信までしばらく時間がかかった。
日奈子『そうね。ごめん』
陽太『俺はいいんだって。日奈子にそういう人が居るって思われるぞ』
日奈子『いいのよ、それで。そのためにも言ってるんだから』
なるほど。男よけか。
陽太『日奈子がいいなら俺は問題ない。名前さえ出なければな』
日奈子『わかった。ありがと』
「ひーなーこ。彼氏とやりとりしてるの?」
上水が日奈子に絡んできた。
「ち、違うから。彼氏じゃ無いって言ってるでしょ」
「でも、似たようなもんなんでしょ」
「そ、そうだけど」
「あーあ。クラスのアイドルに彼氏居るってなったらがっかりする男子多そうだなあ」
そう言って上水は周りを見回す。
「ね、井川」
「なんだよ」
上水に声を掛けられた井川は不機嫌そうだ。
「まあ、井川の周りには他にもいい子がいるから元気出しなって」
「うるせーな、お前」
井川はそう言って教室を出て行った。
ふん、ざまあみろ。日奈子はお前になんてなびかないからな。
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