第13話 ゲームセンター

「これからどうするんだ?」


 食事の後、俺は日奈子に聞いてみた。デートの経験とか無いから、全て日奈子任せだ。


「そうね。駅ビルあんまり知らないから、ぶらぶら見てみたいけど」


「そうだな」


「あ、ゲーセンあった」


 日奈子は同じ階にあったゲーセンに入っていく。そこはクレーンゲームが大量に並んでいた。


「いろいろあるねえ」


 日奈子はクレーンゲームを見て歩く。


「あ、これかわいい!」


 それは猫のぬいぐるみだった。


「普段猫かぶっているお前にはぴったりだな」


「何よ、もう。『にゃあ』ってやってあげないからね」


「な、なんだよ。別にしなくていいから」


「気に入ってたくせに」


 確かにあれは可愛かった。


「じゃあ、コレ取れたらやってあげる。お金は私が払うからやってみてよ」


 日奈子はお金を入れだした。俺が取るのか。

 実を言うとクレーンゲームは苦手では無い。一時期ハマってひたすらやった時期があった。いつも一人の俺にとっては一人で遊べる貴重なゲームだ。


 俺は2回で猫のぬいぐるみを取った。


「わー、すごい! 取れた!」


 日奈子は無邪気に喜んでいる。


「ほれ」


 俺は取ったぬいぐるみを渡した。


「ありがと! 大事にする!」


 日奈子はもらった猫のぬいぐるみを抱きしめていた。


「じゃあ、約束通りやってあげるね」


 日奈子が俺を見る。なんか、ちゃんとやってもらうとなると恥ずかしいな。


「にゃあ」


 日奈子がそう言ってポーズを取った。俺は恥ずかしくなり、顔をそらした。


「ハハハ、顔真っ赤だよ」


 日奈子が笑った。言われると顔が熱くなっていることに気がつく。


「いいだろ。まったく」


「ほんと、陽太はコレが好きなんだね」


「男はみんな好きだと思うぞ」


「へぇー、そうなんだ。で、陽太も好きだと」


「まあ否定はしないな」


「ふーん。いつでもやってあげるから、見たいときは言ってね」


「いいよ」


「なんでよ。話聞いてもらってるお礼だから。私、陽太に頼りっぱなしだし、これぐらいなんでもないよ」


「そ、そうか」


 そんな風に思っているとは思わなかった。


「あ、他にも私になにかやって欲しいことがあったら言ってよね」


「う、うん」


 そう言われると意識してしまう。


「あー、今何かよからぬこと考えたでしょ」


「考えてねーよ」


「ふふ。まあ、今できるのはコレぐらいかな」


 そう言って日奈子は俺の腕に抱きついた。


「お、おい」


 何か柔らかいものもあたっているような。


「嫌だった?」


「嫌、じゃないけど。お前、クラスのアイドルだろ。こんなことしていいのか?」


「陽太にはいいのよ」


「見られたらやばいぞ」


「あー、そっか」


 急に日奈子はきょろきょろと周りを見始めた。周りには同年代のやつらが多いが、さすがに知っているやつは居ない。と思ったのだが……


「ゆ、由美!?」


「日奈子……」


 そこに居たのは知っている顔だった


「見ーちゃった」


 森本由美はそう言いながら近づいてきた。

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