第10話 森本の相談

 それから、俺と日奈子は毎日一緒に帰るようになった。だが、もちろん、教室では話すことは無い。ときどき、昼休みに屋上で話すぐらいだ。だが、メッセージでは時々やりとりをしていた。俺と日奈子の関係は誰にもバレていない。秘密の関係だ。そういう日々が過ぎていき、俺と日奈子は次第に仲良くなっていった。


 ある金曜日の午前中。日奈子のグループの会話が聞こえてきた。


「今日、放課後暇かな」


 森本由美が女子2人に尋ねている。


「え、暇だよ。日奈子は?」


 上水一華は軽く答えた。


「あ、どうだろう。何するの?」


 石川日奈子は慎重な答えだ。


「2人に相談があって。どうかな?」


「うん、いいよ。カフェとか行く?」


 上水が言う。


「うん。そのほうがいいかも」


「そっか、私は……」


 日奈子が断ろうとしたときだった。


「どうしても、日奈子にも聞いて欲しいの。ダメかな?」


 森本が言う。森本はこれまで日奈子に無理なことは言ったことが無かった。その森本が言うのだから相当なことなんだろう。


「……うん、わかった。じゃあ、カフェ行こうか」


「うん! ありがとう」


 日奈子も一緒にカフェに行くことにしたようだ。ということは……。


 しばらくして、メッセージが届いた。


日奈子『ごめん、今日一緒に帰れない』


陽太『別にいいよ』


日奈子『断り切れなかった』


陽太『いいから。相談に乗ってあげな』


 しばらく時間が経ってから、日奈子からメッセージが来た。


日奈子『お昼休み、屋上行ってて』


陽太『分かった』


 何か話したいことがあるのだろう。

 昼休み、俺は屋上に行って日奈子を待った。ほどなくして日奈子がやってきた。


「ごめんね」


「俺はいいって。お前のストレス解消に付き合っているだけだから」


「うん。でも……陽太と話す時間削られるのは嫌だなって思って」


「そうか」


「うん。だからさ……埋め合わせで明日会えないかな」


「明日?」


 明日は土曜日。学校は休みだ。休みの日に会うのか。


「うん。熊本駅で待ち合わせして」


「それって……もはやデートじゃないか」


「い、言わないでよ。意識しないようにしてたんだから」


 日奈子の顔が赤くなった。


「そういうのは好きな人とした方がいいんじゃないか?」


「す、好きな人って。そんなのいないから」


「いないのか」


「うん。だから陽太しかこういうの頼める人いないし。で、どうなの? 来れる?」


 日奈子が言う。


「俺は何の用事も無いし、問題ないぞ」


「そっか。ありがと。じゃあ、明日いっぱい話そ!」


 そう言って、日奈子は屋上から出ていった。


 それにしても、明日、日奈子とデートか。大変なことになったな。

 もちろん、俺にはそんな経験は無い。どうしていいか分からないが、とにかく行ってみよう。


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