前日譚 ♯0.5
俺は知りすぎた
井伏の最期の言葉、だと俺はひっそりと感じている。
監視係の森にバレたのだろうか……。それとも監視カメラに日々の調査がバレてしまったのか……。
どちらにせよ、井伏を救うことは今の俺に出来るわけが無く、ただあいつの二の舞いにならない様にコッソリと過ごすしかないのだ。
2週間が経ち、学園祭の前日に迫った。
教室はいい感じに薄気味悪くなっており、電気を消したら本物のお化け屋敷と引けを取らないクオリティまでに近づいた。
「はいこれ、」
明日の学園祭に対し、ワクワク感が抑えられないクラスの様子を俯瞰して見ていると、鏡花があるものをくれた。
「なにこれ?」
冊子をくれたが、これは学園祭のしおりのようなものだった。
「学園祭のパンフレットだよ、明日これを持って学園内を回るの」
鏡花によれば、このパンフレットには学園の地図が載っており、どこで何をやっているのかが分かるらしい。それに最後のページには割引券などが付いていた。
「このイラスト……」
パンフレットの表紙に少年少女がお祭り事を楽しんでいる絵が描いてあった。絵の下には名前があり、鏡花の名前が……。
「そう、これ私が描いたの」
得意気に自慢してくる。まぁ、下手な部類ではないが……。
「何、なんか文句ある?」
絵を見て、なにか思う所がありそうな顔を俺がしていると判断した鏡花は問い詰めた。
「いや、意外と上手いなと思って」
「そうでしょ!」
上手いと思う。しかし、目が大きすぎる。like a シュメール人だよ、全く。
その後、作業は完全に終わり明日に備えて下校しようとなったが、皆帰りたくなさそうにしている。確かにみんなで一緒に何かを作り上げるのはすごく楽しい、それで残っているのだろうと最初は思ったが、実際は阿川のような声がでかい奴が“まだやれる事がある筈だ”とここで帰ったらダメな雰囲気を作ってしまいみんな帰れないでいるのが正解だ。
現に俺も帰りたいが、帰りづらい。
ここで帰ったら薄情者と思われてしまう。というか、この監視された偽物青春に従っている俺って……。
この前の井伏の事もあるからか俺は自分が今何をすべきか、悩んでいた。
「そういえば、一般参加者も来るらしいから怖がらせるのは生徒だけじゃないぜ、大人も怖がらせなきゃな!」
阿川グループの誰かがみんなに忠告した。
一般参加者も良いのか……。俺たちを監視するのが目的なハズなのに、外部から人を呼んでもいいのか? 少々国家のやる事は分からない。俺たち犯罪者の監視プロジェクトがこんなにもザルなのか……。
それとも井伏の最大のドッキリだったのか?
いや、それは無い。現に俺の以前の記憶が混在しているからドッキリでは無いだろう。
「老若男女怖がらせるぞッ!」
「オー」
阿川グループの鼓舞にクラス一丸となった。
どこかで静かに憎らしく いらの庵 @tureturegisa2
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