第2話
この世界に来てから何時間経ったのだろうか
異世界らしく不思議な植物が生えているわけでもないし、動物に会うことも無く、同じような景色の中をただ歩き続けるのも少し疲れてきた
「なんだ、あれ」
少し先に周りの木より少し高い塔のような建物が建っている
もしかしたら誰か住んでるのかもと思ったら足が少し軽くなった気がして、小走りで向かった
目の前に来てみるとやはり塔だった
普通ならこれほど古くなっている建物には近づこうとすら考えないが、ここは異世界、魔女のような人がまだ住んでいるかもしれない、そう考えた
扉を叩き、大きな声で尋ねてみる
「誰かいませんか」と
誰も返事をしない、考えてみれば魔女なら古い塔に住んでいるなんて馬鹿でしかないのかもしれない、このまま無かった事にすれば良かったのだが一応中は確認してみる事にした
「入りますよー」
一応、声を掛けつつ入ってみる
すると
開いたままの本、燃えている暖炉、洗われていない食器など、今も誰かが生活していると確信できる状態で残っていた
天井を見上げてみる、外から見た時より低く二階があるのかもしれない、だが、階段もはしごも無い
「誰かいませんかー」
誰からの返事は無いのだが、天井からコツコツと靴で歩く足音が聞こえた
すると壁に並んでいる本棚が動き始めた、天井裏にいる誰かが動かしているのだろうか?
「誰が家に入っていいって許可した?」
という女性の声が聞こえてきた
「道に迷ってて、扉を叩いても誰も反応しないので、勝手に入らせてもらいました」
そう言うと
「ならいいけど」
と返された
数分後
「んであんた何者?」
本棚の奥から現れた誰かは自分よりも背が低い少女だった
「えっと、森で迷ったただの旅人です」
「嘘ついてるだろ?」
「えっ、なんでですか?」
「じゃあ、あんたの持ってる本がなにか説明できる?」
「出来ないですけど...」
「だろ?だってその本、数百年前の物だし」
あの時、神様はこの本を読めばこっちの世界の事が全て分かると言っていたのに...
「と言うか、なんでこの本がそんな昔の物だって分かったんですか?」
「そりゃあ、私が昔の事を研究してるからに決まってんだろ?」
「そうですか...」
この人と会話が出来ている事から神様との契約は出来ているはずだが、この本が読めないという事は本に書いてある文字は言語として使われていないのだろう
「んで、その本を持っている事からして、ほんとはこの世界の住人じゃないんだろ?」
なぜ分かる?本当になんなんだこの人は
「そうですけど、なんで分かったんですか?」
「なんでって、この森で迷う奴なんて普通はいねぇし、もし迷うとしたら私の親父みたいな転生者ぐらいしかいないからな」
親父?
「まぁいいや、腹減ってるだろ?」
「はい」
「よし、なら今から狩りに出かけるぞ」
「ありがとうございます」
「礼なんていいから、ほら行くぞ」
「そういえば私の名前言ってなかったな、私はアイザネだ、よろしくな」
異世界を謳歌する旅、フェアラートは誰だ? @UTVO
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