異世界を謳歌する旅、フェアラートは誰だ?

@UTVO

第1話

俺の人生は辛く厳しいものだった、どれだけ努力したって才能を持っている人にはいつまで経っても追いつけず、そんな惨めな俺を気にかけてくれる人は誰一人いなかった。

そんな俺の人生も終わってしまったらしい、なぜ分かるかって?そりゃあ目の前に立っている誰かがずっと言い続けてるからだ

「君は才能にも恵まれず、これといった友人も出来ないまま死んでしまいましたね?本当に可哀想です..あの聞いてます?」

「はい、一応聞いてますけどそれって本当ですか?」

「もちろん。だって私、神様ですよ?」

それは答えになっているのだろうか?

「神様に会えるって事は死んだ後、それしかないでしょう?」

「いや、別にそんな事は無いと思いますけど」

「ほんと?」

「はい」

「そっかぁ少し残念だな...」

いやどういう感想?

「まぁいいですよ別に?君が信じなくても、私が本当に神様って事に変わりないんですから」

なんか胡散臭いな

「それじゃあ改めまして、私は君のような無意味な人生を歩んだ者に人生を謳歌するチャンスを与える為の神様です」

なんだそりゃ

「という事で、君には異世界に行ってもらいます」

「...は?」

言っている意味は全く分からないが、一応話を合わせてみよう

「異世界ってどんな世界なんですか?」

「んーとね、私もよく知らないからちょっと待ってね」

そう言うと自称神様は空中から大きな本を引き出した

「えっ!?」

「どう?ビックリした?でも、この力自体は別に大したものじゃないし、あんまり気にしないで?それにこの本を読んでみたら分かるはず」

本人は大したものじゃないって言っているが、どことなく誇らしげで、教える気は無さそうだ

というか

「読んだら分かるって言われても、この本にかんて書いてあるか分からないんですけど」

「あれ?おかしいなぁここに来る時に契約されてるはずなんだけどなぁ」

契約?なんだそれ

「そんな事した覚え無いですけど」

「あれー?それじゃあ、ここに来てから変な声が聞こえたり、身体に違和感とかない?」

「特に無いですけど、なにか問題でも?」

「いや別に問題じゃ無いんだけど、一応私と契約しておく?」

なぜそうなる

「するか、しないかって聞かれても、俺は契約っていうものがなんなのか知らないんですよ」

「あっ、それもそっか、えっとね契約っていうものにも色んな種類があるんだけど、今回結ぶのは遠くにいても話せるようになる契約だね」

説明するのが下手なのか、それとも本当にそれだけなのか

「話し合い以外のメリットとかは?」

「無い!!」

うん、微妙

「あと君がこの後行く世界の全ての言語を理解出来るようになるよ」

うん、凄い大切じゃん

「なら、お願いします」

「おっけーじゃあ分かりやすい傷が残ってもいい場所教えて?」

「いや、なんでですか?」

「そりゃあ、契約の証の為に」

それも意味不明なのだが、向こうに行って勉強するよりかはマシだろう

「それじゃあ...右の太ももで」

「傷は大きめ?小さめ?」

「別になんでもいいですよ」

「おっけー」

「それじゃあ、少しチクッとするから我慢しててねー」

「よいしょ」

「痛っ」

痛みはほんの一瞬だったのだが、傷を確認してみると刺された場所とは全く関係の無い場所にも傷ができていた

「えっ?ちょっとデカすぎません?」

「いやいや、どっちでもいいって言った君が悪いよ?私も調子乗ってたかもしれないけど...」

そういう問題じゃないんだが

「と言うか、神様は体に傷残さないでいいんですか?」

「いや?ただ単に怖いから躊躇ってるだけ」

俺も怖かったんだけど

「しなくてもいいなら別にいいですけど」

「いやいや、君が行ったら自分でやるし、それじゃあこの話はまた契約後に」

本当に大丈夫なのだろうか

「じゃあ少し調子に乗りすぎたお詫びのとして、君に特別なスキルをあげよう」

ん?スキル?

「今から七つの箱を出すから見ててね」

またか、突然物を取り出す謎の力

「じゃあどれがいい?」

ふらふらと箱が飛んでいる、不思議だ

「ええっとじゃあこれで」

俺から一番離れていた箱を選んでみた

「おぉ、やっぱりいいセンスしてるねぇ君は」

「箱の中身は基本的になんでも斬れるスキル、だね」

なんか強そう

「基本的にって、どういう意味なんですか?」

「自分に敵意を向けてる相手なら問答無用で斬れるスキルらしいけど、私もよくわかんないし本に載ってると思うよ」

「それじゃあスキルと本を渡したし、そろそろ異世界に行こうか」

ここに来てから何分ぐらい経ったのだろうか

「ほら、後ろの椅子に座って?」

次は振り返ると椅子が突然現れるのか...ホラーだな

「その椅子に座ったら30秒後に向こうに行けるから座って?」

俺が座ると

「最後に質問いい?」

「どうぞ」

「異世界は楽しみ?」

想像が出来ないような所に行けるっていう事は楽しみなのだが、正直に言うと

「怖いです」

「怖いかぁまぁ大丈夫でしょ、多分仲間も出来るし」

「楽しんできてね」

「それじゃあばいばーい」

突然、全身が痺れ始め目を閉じると体が少し浮いた感覚がした、そして目を開けると周りは森になっていた

「これは異世界に着いたって事だよな?」

座っている椅子もさっきの物と同じで、貰った本も相変わらず、何が書いてあるかは分からなかった。


一方その頃

「お前今、誰かを飛ばしたか?」

「黒箱くんか、いつから居たの?」

「今来た所だが、その呼び方はやめてくれ」

「一応は考えとくね」

「今日ってまだ送ってないよな?」

「そりゃあ黒箱くんが誰を送るのか選んでくる係なんだから、知ってるでしょ?私に聞く必要ある?」

「だよな、だったらなんで転移用の椅子が無くなってるんだ?」

「....」

「もしかして、お前が前話してた可哀想な奴を送ったのか?」

「そうだったら、なんか悪い?」

「なんか悪いってお前...当たり前だろ?あいつの人生はこれからだから安心しろって言ったはずだよな?」

「そうだね」

「じゃあなんでそんな事したんだよ」

「....」

「黙ってたら分かんないだろ?」

「はぁ、まぁいいや、お前そいつになんか渡したか?」

「スキルと例の異本」

「は?」

「別にいいじゃん」

「なんか文句ある?」

「いや、俺にはなんも関係ないんだが、お前は自分がどうなるか分かってるよな?」

「分かってるけど、立ち話する暇あるなら早く仕事したら?」

「お前がそう言うなら別にいいんだが、他になんか隠してたりしないよな?」

「別に?」

「それだけならまだ庇えるし、いいんだが」

「まぁまた後で」

そう言って黒箱が立ち去った後、自称神様は左耳の一部を切り落とした

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