3. 赤い週末
長いようで短かった平日を終えついに約束の日が訪れた。
連休ということもあり街は人で賑わっていた。私もそのムードに浮かれて30分も前に到着していた。
アイリはまだ来ていない。さすがに早く着きすぎたな。そう思っていると向かいのコンビニに見慣れた姿があった。アイリは私よりも先に着いて時間を潰していたようだ。
かわいいところもあるじゃないか。
到着を知らせにアイリの元へ向かう。
「おまたせー!それにしても早いね!」
「うん。いてもたってもいられなくて」
そう言ってアイリは少し恥ずかしそうに笑う。今日は久しぶりに2人で出かける日だ。心の底から楽しもう。
それから私たちは服を買いに行ったり、他にも気になるお店を見かけたらとりあえず入ってみたりして、楽しい時間を過ごした。
休憩も兼ねて気になっていたスイーツ店に入り、小腹を満たすことに。私はショートケーキといちごのタルト、アイリはチョコケーキを注文した。
「2つも頼むなんて欲張りなんだから」
「えへへ、せっかくだしたまにはいいかなって」
少し痩せようと思い甘いものを我慢していた反動でついつい2つも注文してしまった。でも後悔はしていない。甘いものに罪は無いしね。
美味しいスイーツを完食し幸せな気分になったところでお店を出る準備をしようとしたところで、アイリに呼び止められた。
「あ、待って」
「ん?どうしたの?」
「その、もう少し休んでいかない?ほら人通りも多いし」
「うーん。でも席も埋まってるし早めに出た方がいいんじゃ…」
たくさん歩いたから疲れているのだろうか。でも今までそんな素振りも見せなかったから大丈夫なのかと思っていた。それにお店に入る時なぜだか安心したようにも見えた。
会ったら気まずい人でも見かけたのだろうか。
そういえば店内に入ってから窓の外をチラチラと見ていた。
「じゃああと5分くらいで出ようか」
「ダメ!」
店内にアイリの声が響く。
驚いて固まっているところに店員さんが声をかけてきた。
「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ、えっと」
「すみません!ちょっと盛り上がっちゃって、ね?」
「あ…はい。もう出るので、すみません」
予想外の出来事に私も驚きを隠せなかった。
お店を出て少し話を聞くことにした。
「どうしたの?会いたくない人とかいた?」
「ごめん。そういうのじゃなくて」
何かを隠してるような、焦ってるようにも見える。周りを見るような目の動きは変わらないまま。
今日はひとまず帰るとしよう。家でゆっくりしていればそのうち落ち着くはずだ。そう思い家に帰る提案をした。アイリはこくんと頷き気持ち足早に駅に向かっていた。
その時だった。
「キャーーー!!!」
賑わいの中に悲鳴が響く。その悲鳴は私たちのすぐ後ろだった。
気づいた時にはもう遅くて、目の前には刃物を持った人間が走ってきていた。
足が動かない。
怖い。刺される?なんで?
嫌だ。どうしよう。
ドン!
体に衝撃が走る。散乱する荷物。倒れていく私の視界に映ったのは私を突き飛ばしたアイリとその体に突き立てられた刃物だった。
―――――――――――――――
結局こうなってしまった。でもこれが正しいはずだ。私は刺されてしまった。でもリクは無事だった。
あぁ、私の名前を呼んでる。ごめんね。今日1日変だったよね、私。でもリクがこうなるよりはずっといいと思って。焦っちゃったんだ。
薄れゆく視界の中でリクは泣いていた。
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