2. 約束
アイリの言っていた都市伝説は過去の自分からメッセージが届くというもの。私は過去にそんな都市伝説をやってみようなんて思ったことは無いし、アイリから聞かされるまで知りもしなかった。
心当たりもない留守番電話だがその話を思い出した私の指は震えている。
このまま再生しないのも手だ。でも大事なものだったら?震える指を画面に近づけていく。そして、震えた拍子に指が触れてしまった。あっと声が漏れると同時に心臓が跳ねる。
身構えていると再生されたのは聞き馴染みのある声だった。
「リク、今日はずいぶんと早く寝るんだね。返事がないからびっくりした」
アイリだ。
今日私に都市伝説の話したから驚かそうとして留守番電話をかけたのだろう。
アプリがあるからと電話帳に登録していなかったから送り主が分からなかったのだ。
アイリは言葉を続けた。
「ついでだから聞いておくね。この前買い物に行こうって言ってたけどいつにする?また学校で聞かせてほしい。よろしくね。それじゃあ、おやすみ」
そう言い残すとメッセージは終わった。
私はため息をついた。安堵とほんのちょっとの落胆。好奇心旺盛な年頃だからしょうがない。
買い物、そういえばそんな話をしていたんだった。お互いアルバイトもしていないからいつでも予定を合わせられる、せっかくだから連休の日にしてついでにお泊まりでもして気持ちを落ち着けようと思った。
このまま友達でいられるように無駄な詮索はしないように決めた。
たとえ変わってしまっても大事な友達ということには変わらないんだから。
次の日、教室に着くとアイリがいるか確認する。
やはりいつも通り私よりも早く着いて本を読んでいた。
「アイリ、おはよう」
「おはよう」
「昨日は寝ちゃってごめんね。」
「ううん、大丈夫だよ。」
いつも通りのたわいのない会話を繰り広げたところで本題に入る。
「買い物なんだけどさ、人多いかもだけど週末の連休でどうかな。ついでにお泊まりとかしてさ」
そう伝えるとアイリの表情が変わった。微笑んでいたはずのアイリの顔からは笑みが消え、少し怯えているようにも見えた。
「大丈夫?なんか用事とかあった?」
「そ、そんなことない。大丈夫だよ」
すぐにいつもの表情に戻ったアイリは約束を了承してくれた。
あの表情はなんだったのだろう。なにか聞いてはいけない気がする。そう思った私は話題を変えようと思い、昨晩の留守番電話について聞いた。
「そういえば留守番電話びっくりしたよ」
「驚かせてごめんね。せっかく話したから使ってあげようと思って」
冗談にしてはなかなかレベルが高いと思ったが、それもアイリの味である。
それにしても週末に楽しみが控えていると思うと今週もまた乗り切れそうという気になってくる。
半分にまで差し掛かった残りの女子高生生活を満喫しなければ、将来の不安も消せないというものだ。そんな思いを馳せるのであった。
―――――――――――――――
どうしても約束の日は避けられないらしい。
別日にしようと言ってしまえばよかったのだろうか。でもあんなに楽しみにしているあの子の顔を見るとそんなことも言い出せなかった。
私は目的を果たさないといけない。絶対にだ。じゃないと私にも顔をが合わせられない。
どうか何も起こりませんように。またあの子の身になにかあれば、私はもう耐えられないだろう。
「リク…」
どうか何も起こりませんように。
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