割れたインターネット

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割れたインターネット

 皆がインターネットを使っている。わからないことがあれば、検索する。インターネットを通じて友達とチャットする。電話もする。こんな世界になってからもう数十年がたった。


 どんな国も、情報工学に力を入れ、研究を進めている。インターネットは、人類の偉大な子供なのだ。誕生してから、丁寧に育てている。


 多くの人間が、様々な言語で、インターネットに情報を書き込んでいる。


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 どんな情報だってあるのだ。そして、インターネットの情報は雪だるまのように増えていく。でも、どれくらい大きくなっても、インターネット自体は見えないし、触ることもできない。学者たちは、そこに魅力を感じ、研究に熱中するのだろうか。


 X博士は、インターネットを専門とする研究者である。幼いころから、その世界に魅せられていた。いつしか、その領域の世界的権威と言われるほどにまでなった。四六時中、パソコンの前に座り、研究に没頭している。最先端の研究をしていることが何よりも誇りであった。


 ある日、インターネットが割れた。意味が分からないだろう。でも、インターネットは確実に割れたのだ。音がしたわけでもない、誰かが落としたわけでも、殴ったわけでもない。割れたのだ。どんな検索エンジンにも、こんなメッセージが表示されている。


「【警告】インターネットが割れました。修復が必要です。」


 このメッセージは、検索エンジンに限らずインターネットを利用しているすべてのものに表示される。


 X博士は、こんなのはでたらめだと思った。どこかの誰かがいたずらでハッキングをし、このメッセージを表示させたのだと思った。あまりそのことは気にせず、自分の研究に取り組んでいた。


 しかし、この現象は数日経っても元には戻らなかった。世界中から、X博士に修復依頼が殺到した。X博士は、これが流石にいたずらではないことを理解した。そして、自分の研究そっちのけで、問題に取り掛かり始めた。


 その問題の解決は、あまりにも難しいものであった。そもそも、「インターネットが割れる」という表現すら意味が分からず、X博士は混乱していた。何かがあってはいけないから、とりあえず、インターネット上の重要な情報のコピーをとることを世界中に命じた。


 コピー作業は進む。しかし、その作業は、思っていたよりだいぶ早く終わってしまった。ちょうどその頃、X博士はインターネット上の情報が一部なくなっていることに気が付いた。あるところにあったはずの情報がきれいさっぱり無くなっていたのだ。そして、時間が経つと共に、情報が失われたところが増えていく。


 本当にインターネットは割れたのだ。そして、割れ目から情報が漏れていったのだ。X博士を含めて学者たちは、漏れ出た情報を探そうとした。でも、探せるわけがなかった。


 割れたインターネットは、未だに表示を出していている。


「【警告】インターネットが割れました。修復が必要です。」


 漏れ出た情報は見当たらない。インターネットは空っぽになってしまった。

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