第1話 開戦 その③

俺は道場の中で、素振りを一回、一回、丁寧に振った。

木刀は、風を切りビュン!ビュン!と、音を立てる。

「私的には、今でも大分早いと思うけどね…」

ここの道場には、今のところ、俺と真理しか入っていない、寂しい道場だ。

「あれ?これ零の?」

俺はその言葉の方向。真理の方向を向いた。

真理は青く輝く、宝石のようなものをぶら下げている。

「これってさぁ…零の…」

「あ!!」

俺は慌てて声をあげ、木刀をその場に置いて、すぐに真理の方向へ駆け出した。

「え?うぉぉ」

「こ、これ!!探してたの!!どこにあったの!?」

「え、えっと…そこにあった…」

そう言って、真理は先ほど俺がいた場所を指さした。

「え…うわ…あったんだー…」

俺が顔を手で押さえて倒れ込むと、真理は心配そうに俺を覗き込んだ。

「え、えっと…大分前から気になってたんだけど、それって何なの?いきなり小5くらいからつけ始めたけどさ…そんなに大切なの?」

俺は寝そべりながら、手で、真理の青い宝石をつまみ、天井に掲げながら見る。

「これ、俺の母の片身なんだ。」

「零のお母さんの?」

「そう。死に際にくれたんだよ…」

あの時に…

あの時、もしかしたら、助かったかもしれないのに…


すると、唐突に、ズドン!!!!!!という音がした。

その音は地震のような揺れとともに響く。

「え!?なにこれ地震!?」

真理が慌てているのに反応し、俺はすぐに起き上がる。

ズドン!!!ズドン!!!!

「何か嫌な予感がするな…」

「や、やめてよ怖い!」

「その時は俺が守るから…」

「え…」

俺はそう言いながら、いつも使っている竹刀を手に取った。

俺はその大きな揺れが止むまで、道場の端で座り込んでいた。

ズドン!!!!!ズドン!!!!!ズドン!ズドン…ズドン…

しばらくすると、地響きが小さくなりやがて、消えていった。

「ふう…大丈夫だった?」

俺は自分の胸の中に抱いていた真理の顔を見ると、真理はとても顔が赤くなっていて、それどころじゃないように見えた。

「大丈夫?」

「な、何でもない…」

そういうと、耳を真っ赤にした真理はすぐにそっぽを向いた。

俺は、何だろう?と思いつつ、木刀を持って立ち上がった。

バアン!!!!!!!

そして、その瞬間、耳がはち切れそうなほどの轟音が、した後、道場の入り口の古い木製の扉が破壊された。

俺はすぐに、木刀を自分の前に構え、そして真理を守る体制へと入った。

それは反射的に体が動いたことなので、すぐに、状況を理解できなかったが、道場の扉が壊された。

よりももっと驚くべきことが、目の前に現れた。

それは…

「あ、あれって…」

真理がそういうと、俺は道場の外が筒抜けになった壁の向こうに佇む、巨大な人型の機械…

W《ウェポン》A《アーム》に視線がつられた。

その機体は、右手には銃らしき物を持っていて、左手には、光る剣のようなものを握っており、頭にはハンターのような赤い目をつけている。

そして、その機体は、いくつもの戦争を切り抜けたかのように、ボディの装甲が薄く汚れていた。

「あ、ああああああ…!!!」

真理は体が震え、どうやら腰を抜かしたらしい。

「まずいな…」

と俺がそう呟いた瞬間、目の前にあるウェポンアームは右手に握りしめている銃の銃口をこちらへ向けてきた。

「し、死ぬ!!!!」

「ここで!!!死ぬのか!!!」

そして、銃口の中が明るくなると、すぐにレーザーが撃たれ…

ドオオオオン!!!!!

レーザーが撃たれようとしたその時、機体から大きな音が響いた。

それは、別のレーザーの着弾音だ。

そして、あっという間に、道場の壁の向こうにあった機体は爆発し、部品を辺りに散らしていた。

息が…

俺は久しぶりに息を吸った。

「い、生き残った…のか?」

生き残る…生き残る…真理を連れて!!!!

「真理!!!!」

俺は木刀を片手に真理の方向を向いた。

すると、真理はその場に横になっていた。

「き、気絶!?」

俺は少し頭を爪で引っ掻くと、真理を抱き抱えて、道場の外に出た。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る