第一六話 新たなヒロインは、のじゃロリ女神
原作の二巻目において、カイルはヴィクターやコーネリアを打倒し、サーシャを仲間に加えたわけだが……
その課程は決して、楽勝と言えるものではなかった。
一巻目の段階でカイルは自らのスキルがチートであることを認識し、本領を発揮し始める。
しかし二巻目にて、スキルのコントロール力が不足していることを自覚。
結果、誰かに稽古を付けてもらおうと考えた。
その後、紆余曲折あって、女神が棲まうとされる霊山の噂を耳にする。
なんでもその女神は面倒見がよく、遭難者の救助はもちろんのこと、武芸者に稽古を付けて奥義を開眼させたといった逸話もあるとか。
これ幸いと、カイルはヒロイン達を引き連れて、霊山へと向かう……
というのが原作の流れだ。
俺としては第三巻目のヒロインを救うついでに、カイルと同様、ここいらでパワーアップしておきたいと考えている。
それゆえに。
「で、弟子、じゃとぉおおおおおおおおお……!?」
「あぁ、頼むよ。俺達には君が必要なんだ」
「う、ぐ、ぐぅううううううううううう……!」
俺はキャラクターの性格を知り尽くしている。
彼女はこういう言い方をされると、断ることが出来ないのだ。
そう。
たとえ、誰とも関わり合いになってはならぬと、心に決めていたとしても。
いや、そうだからこそ。
彼女は。
アリア・サースヴェルは。
「ぐぬぬぬぬぬ……! ぬぅおりゃあああああああああああああッ!」
思い切り拳を繰り出してくるが、しかし、俺は知っている。
カイルを相手にしたときも、そうだった。
彼女は直撃する寸前に、打撃をピタリと止めて。
「ぬぅああああああああああっ! もうっ! なんなんじゃ、おぬしはぁああああああああああああああっ!」
ぼかんと音を立てて、煙が立ちこめ……
闇色の巨人が、愛らしい幼女へと変貌する。
うっすらと緑がかった白髪。
愛嬌を感じる麻呂眉。
小柄な体躯と、それに不似合いな、豊かすぎる乳房。
身に纏う装束は実に荘厳で、女神を名乗るに相応しい。
そして。
背面からは、煌めく光の翼が展開している。
そんな彼女、アリアはこちらをキッと睨め付けながら、
「ワシは弟子なんぞ取らんっ! さっさと帰れっ!」
「それは困るな。いや、本当に困る。せっかくここまで来たっていうのに」
「ぬぐぅっ……!?」
困る。せっかく。
これらのワードも、彼女の心を適格に抉るものだった。
「くうッ……! ワ、ワシの指導を受けて! 生きて帰れた者など、ほとんどゼロじゃぞっ! それでもいいのかっ!?」
「俺は問題ないけど……二人はどうだ?」
「ん。だいじょう、ぶ」
「右に同じク。……もっとも、オートマータのワタシに修行とやらが効果的であるかどうかについては、議論の余地がありそうデスが」
俺達の反応を受けて、アリアは歯噛みしつつ、
「くぅうううううううっ……! ど、どうしても、帰らぬつもりか……!」
「あぁ。俺達にも都合があるんでな。…………君と、同じように」
「っ……!?」
意味深な言葉に、何かを感じ取ってくれたか。
アリアの眼差しに少しばかりの興味が宿る。
「……おぬし、名は?」
「アルベルト・キリングヴェイツ。ついでに言うと、こっちがエクレールで、こっちのはサーシャだ」
「……ふむ」
さっきまでとは打って変わって、落ち着いた様子を見せながら。
アリアは次の言葉を口にした。
「……おぬし、魂の性質が他者と異なっておるな?」
さすがは女神ってところか。
原作においても、桁外れに鋭いんだよな、この子は。
誰も気付けないようなことを、いち早く察知して、理解する。
そんなアリアは、カイルのパーティーにおける、頭脳役を務めていた。
そういった面も相まって……
アリアのことは絶対に、救い出さなければならない。
「……どこまで、知っておるのじゃ?」
「全部だよ、全部」
「…………」
「少なくとも、俺に対する配慮は不要だぜ? 何もかも覚悟のうえで、ここに居るんだから、な」
なぜアリアが、ここに来る者を遠ざけようとしているのか。
その理由については、あえて触れることなく。
「もう一度、改めて頼むよ。……俺達を、弟子にしてくれ」
頭を下げるこちらへ、アリアは、
「……えぇじゃろ。逃げ出すのがオチ、じゃろうけどな」
憎まれ口を叩く、が。
こちらからすると、ヘイトなど一切感じない。
冷たい態度が全て、芝居だということを、知っているのだから。
「では……ついてこい、馬鹿弟子共! 修行はもう始っとるぞ!」
「おう!」
「うん」
「了解」
駆け出すアリアの背中を追いすがる。
かくして。
女神を救うための修行編が、始まりを迎えたのだった――
~~~~あとがき~~~~
ここまでお読みくださり、まことにありがとうございます!
拙作を少しでも気に入っていただけましたら、☆とフォローを
なにとぞよろしくお願い致します!
今後の執筆・連載の大きな原動力となりますので、是非!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます