第24話 妹の気持ち
「ちょっとは落ち着いた?」
風呂から上がって、泉が自室の方に行くと、葵は待っていたように、勉強机に座っていたのを立ち上がって、彼女の傍にいった。
「うん」と、泉は答えたが、声のトーンが曖昧だった。
「あ、まだ心残りがある感じね。あたしもお父さんに何度も怒られてるから」葵は肩をすくめて笑った。
しばらく、二人の間に沈黙があり、泉は白いバスタオルで髪を乾かしながら開いていたドアを閉めて、葵に背を向けて言った。
「お姉ちゃんは、鳴尾さんのことどう思ってるの?」
不意に聞かれて、葵は困惑した。「どう思ってるって……。あいつがド変態だから、ここに連れて来ただけだよ。お父さんに喝を入れたらちょっとは直るかなって……。でも、最近は変なことされてないから、効果てきめんだけど……。もしかして、変なことされた?」
「そんなことないよ。あたしが聞きたいことは、お姉ちゃんは鳴尾さんを男として見てるのかってこと」
男……。この言葉を聞いた時、葵は衝撃を受けた。何故なら泉は今まで男子の話をしたことが無かったのだ。確かに彼女のスタイル上、それなりにモテていたのかもしれない。それは姉として何となく分かっていた。しかし、そんな男子に興味が無かった彼女が口にしたのはまさかの恭一に対しての男として見ているかなのだ。
「……べ、別に、あたしは……」葵は横目になり躊躇しながら言った。どうしてもそんな目で見ているなんて妹に対して言えなかった。
「そうなの。良かった……」彼女は胸を撫でおろした。
「それって、どういう事なの? 泉」
「ううん。お姉ちゃんが何も思ってないんだったらいいよ。関係ないから」
「まさか、泉。鳴尾のこと……」
「お姉ちゃんには関係ないから」
それだけ言って、泉は口を閉ざした。葵はそれ以上言えなかった。何故なら、彼女はそれから上機嫌だったからである。元々、純粋で顔に出やすい泉は、分かりやすい性格である。ということは、泉は鳴尾恭一に恋をしているということは葵でもわかっていた。
あの男のどこが良いのだろうか……。と分析する。
泉が好きな男性のタイプを依然聞いたことがある。優しくて頼もしい男性。彼女のことだから年上の男性が好きなのだろう。実際に芸能人でもそういう男性を上げていた。
恭一はそれに該当するのか。確かに小学生の時の優しくてリーダーシップがある彼だと泉が好きになる可能性は十分ある。そこに、ギターを教えてもらった時に不意にその部分を垣間見たのだろうか。
そういえば、泉は最初から恭一に対して興味津々だった。最初は確か自分が好きだった男子がいるという話をした時だ。でも、そんなこと随分と年月が経っている。彼女は自分が昔好きだった男子をその時から興味があったのだろうか。
どちらにしても、妹はあのセクハラまがいの要注意男子の恭一が好きなのは確かだ。葵はどうしてこの家に彼を呼んでしまったのだろうか、今になって後悔していた。
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