第8話 年齢詐欺師とモルフォンス

 頬を膨らませながら「何で私が……」と言う、不服気なアミュアちゃんに対し「嫌なら『ホテル』の宿泊費を全額払ってね」と脅すエリオラさん。脅された彼女は青い顔をしながら『がま口財布』を可愛らしい鞄から取り出し、約七百ルーレンという、まあまあの額の金銭を支払う。「高すぎるわ……」と呻き、落ち込んでしまったアミュアちゃんを見て、僕が罪悪感に苛まれていると、会計の内訳をエリオラさんが見せてくれた。朝食にしては高いなーっと思っていたら、なんのなんの。会計額の『半分以上』がアミュアちゃんの食べたものであり、それを確認した僕は「ははは」と失笑してしまった。


「アミュアさん、ご馳走様っス」

「アミュアちゃん、ご馳走様」

「お、お前ら……!」


 朝食を"アミュアちゃんの奢り"で摂り終えた僕達は喫茶店を出て、路肩に停まっていた私営の馬車に乗った。リップさんが御者に運賃を払い、西役場へと直行する。

   

「すみません、リップさん。払わせてしまって……」 

「全然いいスッよ! ウチ、そんなお金使わないんで」

「そ、そうですか……」

「気にしないでください! 本当に使わないんスから」

「は、はあ」


 んん? 何か変だな。理由は不明だが、ホテルを出た時から彼女の表情や声の調子が明るくなっている気がする。声に張りがあるというか、ハキハキしているというか。元気になった——っていう言い方は違う気がするけど、まるで『初めて会った時』の彼女のようで、昨晩の『人見知り』のような彼女とは似ても似つかない様子だ。まさか、見ていない隙に『入れ替わった』のだろうか?

 

「あの」

「ん? 何スか?」

「リップさんって、姉妹の方がいるんですか?」 

「ウチは兄貴が二人いまスけど、姉妹はいないっスね」

「へー」

「——? それが、どうかしたんスか?」


 不思議そうに首を傾げるリップさんを僕がまじまじと見つめていると、彼女は恥ずかしそうに頬を染め、大きなバックで顔を隠してしまった。んー、この恥ずかしがりな感じは、昨日の夜と同じなんだよなぁ。 顔を隠しながら足をモジモジさせているリップさんを僕が凝視していると、アミュアちゃんが「キッショ」と汚物を見る目で言ってきた。そんな、僕と一線を引くアミュアちゃんに、僕は疑問を投げかける。


「ねえ、アミュアちゃん」

「は? 何の用?」

「リップさんさ、昨日の夜と違くない?」

「あぁー。リップには『家モード』と『外モード』があるのよ。で、今が外モード。家モードが素ね」

「へぇー。なるほどね」


 つまり、家モードが『無口』『人見知り』『恥ずかしがり屋』と言うわけか。

 なるほど、だから昼の時と夜の時で『別人』のような感じだったのか。


「気を抜くって、大事なことだと思います」

「ああ、その通り」

「ね」

 

 エリオラさんが僕の言うことに頷き、それに同調するように、アミュアちゃんも頷いた。


「は、恥ずいっス……」


 僕は、また顔を隠してしまったリップさんから視線を外し、馬車の内装を見る。

 乗り込んだ『私営馬車』の内装はかなり豪奢だった。フカフカの座面に身体を優しく沈めてくれる背もたれ。分厚いガラス窓や、昨晩泊まったホテルを彷彿とさせる扉が付いていて、まるで『移動する部屋』のようであった。公共馬車も内装は綺麗だったけど、座面は硬くて沈まなかったし、馬車に乗り降りする場所を塞いでいたのは、こういう扉じゃなくて鉄のチェーンだった。私営馬車は気を付けないと『ボッタくられる』って、公共馬車に相乗りした物知りおじさんは言っていたけど、この馬車の運賃は五百ルーレン。僕がフリューに来るために乗ってきた荷馬車の運賃は片道、八十〜百ルーレンだったから、この馬車の運賃はまあまあ高いけど、ボッタくられているという感じではないと思う。

 

 僕は目を瞑り、馬車に揺られた。そして一時間ほどが経ち、目的地に着いたのか、馬車が路肩に停車した。


「西役場前に着いたぜ」

「ありがとうございました!」


 僕は御者に礼を言い、馬車から降りる。馬車を降りるアミュアちゃんに手を貸すと、彼女は「はーはっはっは!」と高笑いし、姫様気分で嬉しそうだった。

 

 フリュー西区にある『西役場』。木造建築、五階建ての大きな建物。役場の敷地は『公園』になっており、色取り取りの花が煉瓦の花壇に植えられている。生えている木にはブランコが掛けられており、それで遊んでいた子供達に『靴飛ばし』勝負を申し込まれた。子供四人対僕とアミュアちゃんで靴飛ばし勝負を行い、僕は残念ながら最下位である『六位』だった。 惨敗だった僕が履いていたのは『ブーツ』のような靴だったので、そもそも靴飛ばし勝負には向いていなかったと言い訳しておく。一番は意外にもアミュアちゃんで、彼女は他と隔絶した記録を叩き出し『靴飛ばしの女王』という称号を得た。平気で裸足で草むらを歩くアミュアちゃんを見て、意外と慣れてるなぁ——と思った。もしかしてだけど、彼女も『田舎生まれ』 なのではないだろうか?

  

「アミュアちゃんって、田舎生まれなの?」

「はあっ? ちげーし!」 


 僕の質問に『ムッ』とした彼女は、僕の脛を強蹴する。相変わらず蹴った本人が一番痛そうなリアクションをし、僕達は子供達に手を振って別れ、西役場の方へ向かった。ここに爺ちゃんの友達がいるんだよな。モルフォンスさんって、一体どんな人なんだろう?


 僕は「早く行け」とアミュアちゃんに急かされて、役場の内見はせず、直でモルフォンスさんに会うことになった。役場の中に入り、入口の正面にある受付に行く。そこで受付嬢に、爺ちゃんからの手紙を見せた。すると「確認を取るので少々お待ちください」と言われ、その間に役場の中を見ることにする。西役場は事務所と言うより『書庫』のようであった。壁一面が本棚になっており、その棚には一切の隙間無く本が並べられている。僕が読んでいた『子供向け』の本ではなく、少し難しそうな本ばかりだった。リップさんは棚から本を取って楽しげに読んでいたが、アミュアちゃんは僕と同じで難しい本は全く読まないらしく「目がチカチカする」と、僕と同じ感想を語っていた。役場は職員の方や、役場に用があって来た人が多くおり、働いている職員らしき人達は、彼方此方と忙しなく往来を繰り返していた。職員のお姉さん達は手を動かすのを止めて、エリオラさんを見ながら「キャーっ!」と黄色い声を上げている。男性職員の人達も、書類の束を持って通路を往来しながら、エリオラさんをチラチラと見ている。彼等彼女等の視線を集中させている、当の彼女は気にした素振りも無く、涼しげな面持ちで本を読んでいた。

 

「アミュアちゃん」

「は? なによ」

「エリオラさんって、人気者なの?」

「私の方が『人気者』だけどね」


 ダメだこりゃ。聞く人を間違えたな。僕は「は? 何なの!?」と、プリプリ怒り出した彼女から離れ、無言で本を読み続けていたリップさんの肩を突いた。 


「リップさん」

「ん? どうしました?」

「何か、色んな人達がエリオラさんを見て「キャー」とか言ってるんですけど、何でですかね?」

「自分はよく分かんないんスけど、こういうのはよくありますね。多分っスけど『王子様』みたいな? エリオラ姐さん『美人』っスから、モテるんだと思います。目で追っちゃうんじゃないっスかね? 結構、目立ちますしね」


 なるほどなぁ。 確かに、エリオラさんは超目立つ。凛とした貴公子のような彼女は、異性どころか同性からも気を引かれるようだ。女性から見れば『イケメン』の貴公子であり、男性から見れば『美人』の貴女なのだろう。女性職員の人達に手を振られるエリオラさんは、ニコッと柔和な笑みを浮かべて手を振り返している。僕自身、エリオラさんを『貴公子』みたいだなと思っていたけど『王子様』か。女性のエリオラさんには失礼かもしれないんだけど、納得してしまうんだよな。僕が、じーっとエリオラさんを凝視していると、汚物を見るような目をしたアミュアちゃんが近づいてきた。  


「何考えてんの? キッショキショキショ、キショっ!」


 いきなり来て何を言うかと思えば、誹謗とは。なるほどなるほど、構って欲しいんだな?

 

「キショキショキショって、鳥の鳴き声かな?」

「殺すぞ、クソガキ!」

「ははは」

「ぐっ、グゥゥゥゥ……」


 アミュアちゃんは昨日の『丸見え失敗』もあってか、スカートを押さえたまま飛び掛かってはこなかった。構ってもらい方は危なげがあるのだが、ちゃんと学習はしているようだ。 子供が大人になるのは早いんだなぁ——と、感心する僕を見て、アミュアちゃんは『ムッ』と怒った顔をした。彼女は学習したのか脛蹴りをやめて、僕の腹部を拳で突いてくる。その『可愛いくらい弱い』攻撃を受けながら「ははは」と笑いながら軽く遇らう僕を見て、リップさんは呟いた。

 

「ウチより馴染んでね……?」

  

        * * *


 軽くアミュアちゃんを遇らっていた僕のもとへ、一人の女性職員が「確認が取れました。どうぞこちらへ」と言ったきた。僕は職員に案内されながら、一人で区長室へ向かう。エリオラさん達は「私たちに用はないからね」と言って、受付前で待っていてくれている。あの人達を長らく待たせる訳にはいかないし、なるべく早く戻らないといけないな。そう思いながら、僕は女性職員の後ろに続く。何度も階段を登り、建物の階を上がっていった。そして役場の『五階』に到着し、階段から移動して通路を進んだ。 


「ここです」

 

 通路の行き当たりまで進んだ僕の目の前には分厚い大扉があり、その大扉を女性職員が『コンコン』とノックする。ふと大扉の横を見ると、そこには『区長室』と書かれた、大きな木札が掛けられていた。 僕が緊張から身じろぎしていると、ノックから数瞬の間を置いて、扉の向こう側から男性の「どうぞ」という声が聞こえてきた。


「失礼します、モルフォンス区長」


 女性職員が大扉を開けて、僕は区長室に入る。区長室の中央奥には大きな黒の執務机があり、その執務机の奥にある壁には『人』が描かれた絵が飾ってある。執務机に向かうように置かれた黒の革張り椅子には、スーツを着た『ずんぐりむっくり』の男性が腰掛けていた。もしかしなくとも、この人が——


「どうも初めまして『フリュー西区長』のモルフォンスです。よろしくね、ソラ君」

「は、初めまして、モルフォンスさん」

「ふふふ。遠慮しないで、そこの椅子に座って」

「は、はい……!」


 モルフォンスさんに手で誘導され、僕は区長室の隅に置かれた『応接椅子』に腰掛ける。そして、執務椅子から立ち上がったモルフォンスさんも、僕の対面の椅子に腰掛けた。「ふぅー」と腰掛けたモルフォンスさんは、僕をじーっと見ていたかと思えば、急に目を合わせてニコッと笑った。そして、ゆっくりとした口調で僕に話を振る。


「君が、フーシャちゃんの『息子』なんだね」

「は、はい!」

「…………そうか」


 僕の威勢の良い「はい!」という返事を聞き、モルフォンスさんは眉尻を下げた。そして哀愁漂う『悲しげな表情』を浮かべたかと思えば、無言のまま視線を下げて目を瞑ってしまった。謎に意味有り気な反応をするモルフォンスさんに、僕は訳が分からないまま首を傾げる。「どうしたんですか?」と聞こうとしたものの、彼は思考に耽っているのか、椅子に座った格好で微動だにしない。完全に動きを止めてしまった彼を見て、僕はどうすれば良いのかが分からず、一緒に固まってしまう。シーンとした静寂が部屋を満たし、ただただ時間だけが過ぎていく。僕は意を決し、口を開こうとした——が。先に動いたのは、思考を終えたモルフォンスさんだった。


「……うん。ソラ君は、フーシャちゃんを探しているんだよね?」  

「そ、そうです! 母さんを探すために『旅』に出たんです!」


 僕の返事を聞き、モルフォンスさんは『うんうん』と首を縦に振る。


「君には申し訳ないけど、私は力になれそうにない。いや、できるだけ力を貸してあげるつもりさ、私もフーシャちゃんの居場所は知らないし、とても心配している。フーシャちゃんの『祖父』としてね」

「——!? ……そ、祖父?」


 どういうことだ? この人が母さんの『祖父』? え、じゃあ、この人は僕の『曽祖父』ってこと!? モルフォンスさんが『曽祖父』!? いやいや! 見た目は爺ちゃんと同じくらいでしょ。この感じで爺ちゃんより『十歳以上』も歳が離れてるのか? わ、訳が分からない。人族じゃない多種族にも見えないし……ええ!? 頭が『こんがらがって』思考が止まるどころか、咄嗟に言葉も出てこなくなってしまった。これ「どういうことですか?」って聞いて良いのか? いや、これは『聞くべき』だろう。


「ど、どういうことですか? 母さんの『祖父』って」

「まあ良いじゃないか、そんな細かいことなんて。ふふふ、ちょっと『お爺ちゃん』って呼んでくれないかな?」 

「お、お爺ちゃん……?」

「ふふふ。いいね」


 何なんだよ、マジで……。


         * * *

 

「あ、ありがとうございました……」  

「またね、ソラ君。今度、お爺ちゃんが美味しいもの食べさせてあげるからね」

「は、はい……」


 僕は額から汗を流しながら、区長室を出て階段を降りる。モルフォンスさんは北にある『ハザマの国』に行くための『信書』を書いてくれるそうだ。その信書があれば『入国料』などを支払わずに、ハザマの国との『国境』を越えられるらしい。それは凄く有り難いのだが、僕はそんなことよりも『引っ掛かること』がある。僕の胸に残る違和感の正体は、モルフォンスさんの言った『祖父』という言葉だ。僕が「どういうこと?」かと聞こうとしても、彼は『さらり』と、子供を遇らうように流してしまう。僕が弁舌で『フリュー西区長』まで上り詰めた大人に勝てるわけもなく。いいように流されたまま、部屋を出てきてしまったという訳だ。少しだけ悔しさを感じるものの、切り替えた僕は『違和感』を探るように思考に耽る。何か僕の知らないことを彼は隠している——そんな気がしてならない。うーん…………。


「おいっ!」

「うわあああああああああああああああああああああ!?」


 まるで『世界が爆発した』かのような衝撃に見舞われて、僕は盛大に腰を抜かした。「ななな、何事!?」と口を縺れさせながら、状況を確認するために勢いよく首を動かし、辺りを見回す。そして混乱する僕の視界に入って来たのは、混乱する僕を見て「ゲラゲラ」と笑うアミュアちゃんと、面白おかしそうに肩を震わせているリップさんとエリオラさん……。あれ、ここ一階か!? どうやら思考に耽っていたせいで、周りが見えてなかったようだ。僕が尻餅をついている場所は、出入り口近くの受付前。気付かぬうちに、外に出る『一歩手前』だったみたいだ。

 

「す、すいません。ボーッとしてたみたいで、気づかなくて……!」

「どんくっさぁ。マジ、ウケるんですけど」

 

 く、くっ……! 最悪だぁ。エリオラさんもリップさんも、役場の人達にも『痴態』を見られて笑われてしまった。他の人達は良いとして、アミュアちゃんに『馬鹿にされる』なんて不覚も良いところだ。悔しそうな顔で立ち上がる僕は『切り替え』だとばかりに、両頬をパンっと叩いた。

 

 そして閃く。この状況を打開するための『秘策』を——


「——え? な、なんスカ……?」

「ウチのマネ!?」

「わ! 似てるじゃん!」

「そ、そうかな……!」


 僕のモノマネを見たアミュアちゃんから、予想だにしていなかった『褒め言葉』を頂く。この子に初めて褒められたような気がする。子供に褒められるのは素直に嬉しいな。気を遣った感じの言葉じゃなくて、素直に褒めてくれているような感じがして。


「お前、今失礼なこと考えたろ」

「ええ? な、なんスカ……?」

「痛たぁっ!」


 アミュアちゃんは『ムッ』とした顔で僕の脛に蹴りを食らわせた。そして相変わらず蹴った本人が一番痛そうなリアクションをする。その蹴りが『不幸中の幸い』だったと言うべきか、彼女のリアクションのおかげで場の笑いが、僕からアミュアちゃんの方に移っていく。場の笑いが『完全』に移ったことを確認した僕は、リアクションを笑われている彼女に(ありがとう)と、アイコンタクトを送った。足を蹴られてしまったが加減してくれているのか全然痛くなかったし、笑われなったし、良いこと尽くめだな。僕の失態を横から掻っ攫って行ってくれた彼女は、やっぱり優しい子なんだと思う。すぐ人を馬鹿にするけど、素は良い子なのだろう。僕は心からの感謝を込めて、羞恥で顔を真っ赤にしているアミュアちゃんの頭を撫でた。

 

「は!? キモっ! キモキモ! やめろクソガキ!」

「ふふ。それじゃあ、そろそろ行こうか」 

 

 僕の手を振り払って「ウゥゥ……!」と獣のように警戒している彼女を無視したエリオラさんが、僕達にそう言った。来たか——魔獣捜索! 僕は両頬をパンっと叩き、心に巣食う恐怖に『負けるな』と喝を入れる。この人達にはお世話になりっぱなしだ。だからできる限り、彼女達に恩を返していかなくてはならない。


「頑張ります……!」

「あんま気張らなくて良いっスよ〜。そうそう見つからないんで、この国じゃ」

「ふふっ、ソラ君には頑張ってもらわなきゃ。見つけただけで『三万』討伐したら『報酬十万ルーレン』だ」

 

 冒険者の『報酬』って、そんなに高額なのか。どうりで、あんな一泊『六千ルーレン』もするホテルに泊まれるわけだ。冒険者が危険な仕事を進んでこなすのは、こういう高額な報酬が得られるからなのだろうか? もちろん、命を張っての金額なのだろうけど『十万ルーレン』って、すごい大金だ。ルーレン金貨十枚か——持ったことない金額だな。


「十万か〜何に使おうかしら?」

「ん? 嬉しそうだね」

「アミュアさんは守銭奴っスからね」

「へー。お金好きなんだね」

「いや、別にそういう訳じゃないけど……」

「そうっスか? 子供のフリしてお菓子もらったりしてるのに?」

「黙れッ!?」


 アミュアちゃんって、結構強かなんだな。そういえば、アミュアちゃんって今幾つなんだ? 見た目通り『年相応』な感じはするけど……十一から二歳くらいか? 

 いやでもリップさんは『子供のフリ』って言ってるから、それより年上なのだろうか? もしかして成人してるのか? そうは全く思えないんだけど……。


「アミュアちゃんって幾つなの?」

「レディに歳を聞くな! 殴るぞクソガキ!」

「今年で『二十五』っスネ〜」

「ええっ!? アミュア——さん」

「様と呼べ」 

「ははは……」

「痛たぁっ!」


 僕より、九つも年上なのか——これでねぇ……。さすが『不老種族』と言われるだけはあるな。エルフって、すごい。僕はそう再認識した。

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