白夜 23話 戦いと友


 三つのオメガデウスが空へ昇る。

 白夜のような白と黒のクロのオメガデウス・ヴァルヤ

 赤金に輝くオメガデウスのスクナ

 白銀に煌めくオメガデウスのミカボシ


 三つのオメガデウスが宇宙へ昇る。


 クロとミカボシ、スクナの三人が乗るオメガデウスが宇宙へ来ると…

「はははは、あははははは!」

「ははははははは!」

「あ、はははははは!」

と、三人は地獄で嘲笑う悪鬼の如く声を放つ。


 三人の天元突破した超越存在にとって、現時空である宇宙で戦うと、時空排他作用で強制的に宇宙から追い出されてしまう。


 だが、超越存在の…高次元の力を宇宙である現時空に作用させるシステムがある。

 それがオメガデウスだ。

 オメガデウス…高次元兵器、高次元存在内包システム、創世機構

 色んな呼び名があるが…その機能は、高次元の存在を内包して、その力を現時空に作用させる万能機なのだ。


 三人の天元突破した超越存在の持つ力がオメガデウスを通して、顕在化する。


 スクナが深紅のオメガデウスを中心に

「曼荼羅次元階」

と、無限に増殖して、無限に区切られた領域を構築する無限牢獄を放つ。


 ミカボシが白銀のオメガデウスから

「ライディオン」

 稲妻で構築された竜巻達を放つ。


 無限に広がる無限牢獄と、無限に現れる稲妻の竜巻達を前に、クロは

「はははは!」

と、突貫していく。


 稲妻の竜巻と牢獄の世界が、一点の黒に突貫されて歪む。


 クロの力は…全てを無限に圧縮する力、一点の黒天へ集約する。


 アクジズ星系の主星の空を染め上げる稲妻の竜巻達と、無限の牢獄。


 それを突き抜けて吸い込んで壊す一点の黒天。


 三人の天元突破した超越存在が持つ権能をオメガデウス達が具現化していく。


 それをナイツの六人はメガデウスから見上げる。


 空が絵画のようになった場景に、六人は唖然としていた。


 世界を生み出してぶつけて潰し合う戦い。

 明らかにレベルが違い過ぎる戦い。


 ナイツのクリニアが

「これが…超越存在の戦い…」


 ナイツのアヴァロが

「我らの主、アークシア様も同じ事ができるはずだ!」


 ナイツのナルファが

「ええ…アークシア様も同じ」


「残念ですが…わたくしには…ムリです」

と、アークシアが通信でナイツの六人とロゼストに伝える。


 アークアがアークシアの通信に

「そんな事はありません。アークシア様だってきっと」


 アークシアが城のテラスから絵画になった空を見上げて

「わたくしの力は…精々…このアクジズ星系を維持する程度。あそこまで世界を、宇宙を改変して、己が世界の力を作り出す能力はありません」


 ジェイスが

「それじゃあ、あの男の方が…アークシア様より上って事ですか!」

 

 アークシアが

「はい」

と、素直に告げる。


 ナイツの六人が不安になる。

 ナイツ達六人は、アークシアの超越存在の力によってエヴァルダーという力に目覚めている。

 つまり、アークシアを頂点として仕える騎士達だ。

 その頂点が勝てないという事にショックを受けているが、ロゼストが

「だが、いずれは…我々が上になる。今は…力は足りないが、必ず将来は…我々が強くなっている」


 ガルダスが不安げに

「本当…なんですか?」


 ロゼストは目元の仮面を外して、金眼の顔を見せて

「ああ…我らは、まだまだ、成長途中だ。故に、この恐れは…いずれ次の成長へ繋がる。故に、この戦いを見て置け、我らがあそこに立った時の参考になる」


 それを聞いて、ナイツの五人は気持ちを奮い立たせて、クロ達が戦う絵画の空を見上げた。

 だが、クリニアだけは…違った。

 本当に、あそこまで行けるのだろうか?

 その疑問が消えない。

 なぜなら、そこまで達する者は…極少数、いや、那由他の果てのような確率が必要だ。

 戦っているクロ達は、その那由他の果てのような確率から来た存在なのを無意識に…。


 ◇◇◇◇◇


 全てを押し潰す一点の黒天のクロのオメガデウス・ヴァルヤ。


 全てを稲妻の嵐と化す稲妻の世界を作るミカボシのオメガデウス。


 その稲妻の嵐の世界と、全てを押し潰す一点を無限に内包し続ける曼荼羅を構築するスクナのオメガデウス。


 クロは、久々の楽しめる戦いに歓喜していた。

 ナイツ達やロゼストの戦いは、作業であり淡々と熟していた。

 もし、本気になれば…レナがいる惑星を瞬時に破壊してしまうからだ。

 だが、目の前の二人は、本気でぶつかってもその力を相殺してくれる。

 絶対に自分に追いついてくれるという信頼と安心がある。


 ミカボシもスクナも、久しぶりのクロ、コクテンとの戦いを楽しむ。

 レナによって固着されたので、力が限定されているのでは?

 その疑問を払拭してくれた。

 コクテンは、コクテンのままだ。


 「あははははは!」

と、三人は戦いをトコトンに楽しむ。


 そして…決着は…唐突に訪れる。


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