白夜 20話 過去の呪物
クロは捕縛されたまま、ルカの天使機体の席の後ろに乗って
「どこへ向かっているんだ?」
ルカが渋い顔で
「いいから…見ていて」
と、告げた後、ルカが通信を開くと
「ルカ! 助けてくれ! 連中が! アクジズの女王軍が来て!」
ルカがスロットを全開にして
「今、行く!」
ルカが自分の天使機体を走らせる。
到着した先、全長が十キロの機能都市、それはアルテイル共和時空国では馴染みの事だが…そこにメガデウスの部隊、ナイツの六人とアークシアの軍団が来ていた。
機能都市では戦闘が起こっていた。
ルカ達、レジスタンスと、アークシア軍との衝突。
ルカ達は天使機体が二十機、アークシア軍はメガデウスが六機と人型機体が五十機
数量としてもルカ達が劣勢だ。
ルカ達の天使機体達が鋭い軌道で、メガデウスへ迫るが…圧倒的にメガデウスの方が上だ。
天使機体の腕と足、推進力の翼を切断されて、地面に墜落する。
ルカ達の天使機体は、メガデウス六機に瞬殺される。
「ヤロウ!」
と、ルカが音速に近い速度の軌道でメガデウスへ迫るも、迫るルカの天使機体に
「無意味な特攻だ」
と、メガデウスを動かすクリニアが動く。
ルカの天使機体へ光の速度で迫り、腹部に蹴りを放つ。
「うう…」とルカは強烈な一撃の衝撃が伝わり酩酊する。
ルカの天使機体は、その場に崩れて地面に落ちた。
ルカを倒したクリニアのメガデウスに、アークアのメガデウスが来て
「まったく、
クリニアがアークアに
「犠牲者は?」
アークアが笑み
「命令通り、ゼロよ。圧倒的に機体性能が違い過ぎるから」
レジスタンスのエンジェリオンの機体は、操縦者を生存させて倒された。
その後、機能都市に入ったアークシア軍は、住民を整列させる。
その整列された住民は、男性だ。年齢は四十代以上。
一隻の宇宙戦艦が機能都市の出入口に着地して、整列された男性の住人は、それに乗り込む。
その進む列をアークシア軍の人型機体が囲んで守っている。
その行軍へ駆けつける家族がいた。
だが、それをアークシア軍の人型ドローンが押さえて離す。
「パパーーーー」
と、叫ぶ娘の声。
他の住民も出てきて、アークシア軍のメガデウスに駆けつけて話し掛ける。
「お願いです。どうか…待っていただけないでしょうか! これ以上、彼らを持って行かれれば…この都市の人口バランスが…」
住民が駆けつけているメガデウスは、クリニアのメガデウスだ。
クリニアはメガデウスを跪かせて下りて
「今後、この都市には、不足した住人分のエネルギーと資源が分配されます。ですから」
クリニアに住人が集まる。
そのほとんどが女性だ。
住人達が
「今でさえ、男女の比率が、相当に歪に傾いているんです。これじゃあ、都市を維持するなんて…ムリです」
クリニアが淡々と
「その不足分の資源とエネルギーを分配するのです。ですから…」
住人が
「そういう事じゃないんです。いくら、エネルギーや資源を配られても、人が…人口がないと、色んな事が大変になるんです。それに…家族を引き離して…」
クリニアが淡々と
「では、生活はどうするんですか? 人の生活を維持するには、エネルギーと資源が必要だ。我々だってギリギリでやっています。戻るのですか? 過去に…あの大変だった時代に…」
住人が
「他に方法があるはずです」
クリニアが少しイラっとするも冷静に
「どういう方法があるんですか? それがあるなら我々は、そちらに準じます」
そこへ別のメガデウスが来た。
ジェイスのメガデウスで
「クリニア、もう説得は良いだろう」
そこへ、両手を光の糸で捕縛されて力を抑制されているクロが来て
「これは…どういう事だ?」
クリニアがクロを見て呆れ気味に
「全く、レジスタンスに誘拐されるとか…アナタは、なんなんです? 強いはずですよね?」
クロが渋い顔の後に
「その話は後にして、これは…どういう事だ?」
クリニアがクロを見つめて
「アークシア様から、色々と命令を受け取っています。この後、どうなるか? 見ますか…?」
クロが頷くと、ルカが来て
「悪いね。コイツの捕縛は特殊で、アタシ達しか解けない」
クリニアが
「知ってます。色々とこちらで教えた後、そちらへお返しをしますので…」
クリニアのメガデウスへクロが乗り込み、男性の住人が運ばれる宇宙戦艦の後へ続く。
◇◇◇◇◇
クロはクリニアの操縦席の隣に座って、向かって行く存在に驚愕する。
「そんなバカな…エルドリッジだと…」
クロが向かっている先、そこにはナスカの地上絵にある鳥の形をした全長100キロの存在が、空に浮かんでいる。
クロがエルドリッジと呼ぶ存在だ。
クロを隣に座らせるクリニアが
「あれは、我々が復刻させたエルドリッジです」
クロを乗せたクリニアのメガデウスがエルドリッジへ入る。
そこは、人が活動するように設計されていない。
メガデウスのような巨大な人型機体が活動するように、巨大に出来ている。
エルドリッジの内部に入ったクロは驚愕と絶望を見る。
エルドリッジの内部、その天井には…膨大な数の人型の結晶棺が浮かんで結晶の線で繋がっている。
クロが驚きと絶望で
「そんなバカな…オレ達が、データも、作り方も、何もかも…破壊したはずだ」
クロの隣で操縦するクリニアが
「ええ…そうですよ。クロード様が潰したアヌンナキ・プロジェクト、神人、ホモデウスを作るシステムを元にして作った、高次元エネルギー固着機関、エルギアスです」
クロは、天井を覆い尽くす結晶棺を凝視する。
そこには、腕を組み眠るように目を閉じている浮かぶ人が、男性がいた。
膨大な数の結晶棺達。その数は十億を越えているだろう。
高次元から安定的に膨大なエネルギーを取り出す為に、膨大な数の人間が生け贄の楔になっているのだ。
クロが絶望した顔で
「そんな、バカな…。アークシアが超越存在なら…無限にハイパーグレートの領域から、あらゆる力に変わるエネルギーを取り出せるはずだ。こんな最悪な方法で…高次元からエネルギーを取り出す装置なんて必要ないはずだ…」
クリニアが呆れた笑みで
「それ、本気で言ってます? いいですか…超越存在でも人だ。限界があるんですよ。召喚できるエネルギーの量に…」
クロがクリニアを見つめて
「だとしても…これほどのエネルギーをアクジズ星系だけを維持するには、必要ない」
クリニアが嘲笑をクロに向けて
「察しが悪いですね。我々が独立を獲得して、それをアルテイル共和時空国が放置しているのですよ。その理由…考えた事もないんですか?」
クロが愕然として全身の力を落として
「他の星系や銀河達も…分配しているのか?」
クリニアが
「アナタの時代は、宇宙資源が世の中を維持する原動力だったでしょうが。今は、人が…資源になる時代になったんですよ」
クロは頭を抱える。
ガージェスト達がやってしまった呪い…それが…
クリニアが皮肉を告げる。
「これが、アナタが守った未来の結末ですよ」
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