白夜 19話 選ぶ事
クロはレナと共に、VIPの部屋にいた。
ソファーに寝そべるクロに、レナが来て空いている頭の上の場所に座って
「ねぇ…クロ、どうするの?」
その問いかけにクロは渋い顔で横になっている頭の上にいるレナに
「そうだなぁ…どうするかなぁ…」
数分前、クロはアークシアと話をした。
内容は、自分達に協力して欲しい…という事だ。
アークシア達は、自分達を守る為に…独立を…
それを維持する為にクロの協力が必要だ…と。
ブルーイスの協力、アークシアの協力
両方の提案を前にクロは、考えていた。
クロはレナに
「レナ、お前は…どう思う?」
レナはクロに
「クロが決めて、わたしはそれに従う」
クロが体を起こして、レナを左に見つめて
「レナは、ミカガミから生まれた同じデザイナーズ達の為に…報酬を使っているんだろう。ここの星系がある銀河を統治するブルーイスに従えば、それの足しにはなるぞ」
レナがクロを見つめて
「クロ、それはクロの意思じゃあないわ。クロが決めて」
クロがレナに真剣な顔を向けて
「もし、アークシア達に協力したいと…なったら…レナの仲間達を守る為の報酬を失う。だが、オレの系譜に繋がる者達は助けられる」
レナがクロの手を握り
「わたしは、クロの結論に従う。どんな事になっても…」
クロが悲しい顔で
「レナ、その気持ちは…レナのデザイナーズとして設計されたモノから来ているかもしれない。主に従順である事、その呪縛が…レナを」
レナはクロの気持ちを知る。
クロは、レナの事を考えてくれている。
レナが…幸せになる結論を選ぼうとしている。
それがレナにとって嬉しかった。
だから
「クロの言いたい事は分かる。わたしは、わたしの意思で物事を決められない呪縛があるのをクロは知って、クロはわたしの為に選択しようとしてくれている。わたしね、この呪縛もわたしの一部だと思っている。だから…クロが選んで…」
クロは暫し目を閉じて
「そうか…」
と、つぶやき…結論を口にしようとした瞬間。
「な!」
クロが何かの見えない力に束縛された。
クロの体がS字のようになって空中に浮かぶ。
レナが焦り、何かの武器を探した後ろに
「動くな」
と、背中に銃口が当たる。
レナの背中からステルススーツに身を包んだ女が姿を見せる。
「れ、レナ…」
と、くねったクロが空中に浮かぶ隣に、同じステルススーツの女が姿を見せる。
クロを捕縛しているのは極細の白く輝く光の糸だ。
その糸は、クロの隣にいる女の背中にある光輪に繋がっている。
クロを捕縛する女が
「早くして、気付かれるわよ」
レナを押さえる女が
「悪いな」
と、レナを電撃で気絶させた後に背負う。
クロが口を動かないようにされた後、部屋の壁が破壊される。
そこから人型機体が出現し、クロとレナを連れ去る。
クロは内心で、また…かよ…と思うのであった。
クロとレナを誘拐した人型機体は、誘拐した二人も乗せてビルの最上階から下りて、背中にある推進装置から光を放って加速して消えた。
機体の内部にいるクロが、操縦席を見て
似ている…ライアス達が使っていた天使機体の系統と…
誘拐していく天使機体を中央センターから見つめるアークシアと、隣に立つロゼストが
「よろしいのですか?」
と、ロゼストがアークシアに問う。
中央センターの中心である司令席に座るアークシアが
「構いません。むしろ…好機です。この世界の、アルテイル共和時空国がどんな状況かを…知っていただくにはね」
ロゼストが
「クロード様が、例の現場を…」
アークシアが笑み
「それも込みです」
ロゼストが頭を下げ
「畏まりました」
アークシアが笑みながらクロを誘拐する天使機体の画面を見つめて
「父上、迷っている時間は、ありませんよ」
◇◇◇◇◇
クロとレナは、誘拐されて到着した場所
そこは、とある組織の秘密基地だった。
基地というより、巨大な宇宙戦艦で島に擬態している。
そこの司令室で、クロとレナは捕縛されたまま運ばれる。
クロは腕を動かすと、捕縛する力は…
「これは…」
と、訝しい顔をする。
クロを捕縛する光の糸を伸ばす女がステルススーツを取って
「ごめんなさいね。こうしないと…アナタは…抑えられないから」
と、金髪をなびかせる美人が現れた。
レナを捕縛したのは、それより少し背が低い紫髪の女で年齢的にレナと近い感じがする。
その彼女が
「ナーシャさん、スゲーな。本当に超越存在を捕縛できるんだ」
ナーシャが彼女に
「ええ…でも、けっこう大変よ。ルカ」
ルカがレナに
「ごめんな。こんな事をして」
レナがルカに
「どういうつもりなんですか?」
捕まるクロとレナの元へ一人の男性が来て、ルカとナーシャが敬礼をする。
男性が会釈して
「はじめまして、ここでレジスタンス活動をしている暁の司令、ケント・黒田・アージだ」
クロが渋い顔で
「なんで、また…誘拐なんて」
ケントが、捕縛されて座るクロに跪き
「ブルーイス様から、ここの現状を知っておくべきだろう…とね」
クロがハッとして
「まさか…ナノマシン発信器をオレに…」
正解だ。ブルーイスはクロと会談した際に、ナノマシン発信器を付けた。
ケントが
「クロード・リー・ナカタ殿。汝には…ここが、どうなっているのかを知る義務がある」
クロが溜息を漏らして
「過去の遺物であるオレに、どうしろって?」
ケントが
「アヌンナキ・プロジェクトの副産物がどうなったか…知って欲しい」
それを聞いてクロが目を見開き驚愕の顔で青ざめて
「どういう事だ…オレ達が、アル達と一緒にぶっ潰したはずだ!」
ナージャが
「人は…一度、得た力を手放す事はしないのよ」
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