白夜 18話 父上と子供達
オメガデウス・ヴァルヤとバトロイドは、メガデウスの捕縛結界に包まれて惑星に着陸する。
七つのメガデウスの囲まれるオメガデウス・ヴァルヤとバトロイドの前に、護衛を伴った王衣を纏う金髪の少女が現れる。
アークシアがオメガデウス・ヴァルヤへ手を振り
「父上!」
と、愛らしく微笑む。
クロは、オメガデウス・ヴァルヤを跪かせて下りる。
バトロイドを操縦する千華と紫苑は、下りない。
オメガデウス・ヴァルヤが止まったので、メガデウスの結界はバトロイドに集中する。
クロがゆっくりとアークシアに近づくと、その前に六人の騎士達ナイツが並ぶ。
全員がクロを見つめて
「あの時は世話になったなぁ…」
とジェイスが告げると、アヴァロ、ガルダス、アークア、ナルファがクロを睨む。
クロは、彼ら彼女らより高身長なので、見下ろすような視線で首を傾げて
「はあ? お前達の事を知らないんだが…」
ナイツの六人は、まだ十代だ。若く貫禄もない。
ましてや、180越えのクロより身長が下なので、ネコが威嚇しているようにしか見えていない。
クロは内心で、ネコが苛立ちながらじゃれついている感覚を感じている。
クリニアが淡々と
「貴殿が、ここに向かっている時に迎撃したメンバーです」
と、170越えの彼女クリニアが冷静に告げる。
クロが記憶を巡らせて
「え? あの時、迎撃をされたのは一機だったような…」
ナイツの彼ら彼女達は、クリニアを除き苛立ち、恨みのような顔を向ける。
バカにされている!
若い彼ら彼女達には、それが一番に効く。クリニアを除いて。
そこへクロと同じ180越えの男が現れる。
金髪に目元を仮面で隠す音ロゼストが現れて
「ようこそ…我らの星へ」
と、挨拶をする。
クロがロゼストを鋭く見つめて
「あの時、応戦した操縦者か…」
ロゼストが口元に笑みを浮かべ
「分かるのですか? という前に…我らの父上なら…当然か」
クロには、元来から特殊なレーダー能力が備わっている。
その力は、空間を上位次元から観測する能力であり、それによって様々な存在の気配を察知できる。
察知できる範囲と種目が多いので、憶える対象だけを憶えるようにしている。
つまり、ロゼスト以外のナイツの六人の事は、全く憶えていない。
クロが訝しい顔で
「我らの父上か…」
アークシアが来て
「言葉の通りです。わたくしもロゼストも、ナイツの彼ら彼女らも、父上の子なのですよ」
クロが呆れたような溜息を漏らして
「メディーサのヤツ…何て事をしたんだ」
そう、このアクジズ星系を制圧して独立をうたっている者達のトップは、クロード・リー・ナカタをベースとした子供達、デザイナーズなのだ。
アークシアが微笑みながら
「父上、積もる話も多いでしょうから…こちらへ」
と、手を差し向けるとアークシアの後ろに自動運転車が到着する。
クロが冷静に
「レナの安全を確認したい」
アークシアが微笑み
「構いません。あの愛玩奴隷は大切に保管しておりますので」
それにクロが切れそうになるも、抑えて
「レナに合わせてくれるか?」
アークシアが頷き
「はい」
クロがバトロイドの方を向き
「それと…あの機体を安全に帰して欲しい」
その会話はバトロイドの操縦席にいる千華と紫苑にも届いている。
紫苑が
「いいんですか?」
千華が両手を離して後頭部で腕を組み
「しゃあないって」
アークシアがクロを見た次にバトロイドを見て
「彼女達も一緒にお茶会をして話をしたいと思うのですが…」
クロが渋い顔をした遠くの背後で、バトロイドのハッチが開き
「いいねぇ! 美味しいお菓子をたくさん用意してくれるなら、よろこんで参加する」
と、千華が飛び出して
「ちょちょちょ! 千華!」
と、紫苑が千華を引き入れようと飛び出す。
アークシアが微笑み
「はい、ご満足いただけるお菓子や料理をご用意させますので」
紫苑が困惑していると、千華が抱きかかえて
「ここは従って置け、アタシ達の目的は?」
千華に抱えられながら紫苑が
「レナさんの救出です」
千華が紫苑に耳打ちして
「そうだ。争い無く救出できるなら、それに越した事はない」
紫苑は無言で同意の頷きをした。
◇◇◇◇◇
クロは、アークシアが用意した自動運転車に乗り、車内で座るクロの右に千華と紫苑が並んで座り、対面にアークシアとロゼストが並んで座る。
アークシアが笑みで
「父上、歓迎します。どうぞ、ごゆっくりとお過ごしください」
クロがアークシアを見て
「本当にオレの遺伝子を受け継いでいる子供か? 礼儀正しいし良い子すぎてアルみたいだ。むしろ、さっきのガキ共や、そこの仮面のヤツがオレの子だと言われれば納得はする」
ロゼストが笑む。
アークシアが考えながら
「わたくしは、色々と強化を受けていますし。より父上の力を最大限に発揮しつつ全体に波及させる能力に特化していますから。その因子の影響でしょう」
クロがアークシアを見つめて
「つまり、お前もオレと同じ…
アークシアが笑みながら
「父上のような超越存在をベースとした
クロが窓の外を見つめて
「まだ、アヌンナキ・プロジェクトは…生きているのか…」
アークシアが悲しげな感じで
「過去の忌まわしい記録と、データ資料という程度ですが。それによる応用技術は、あります。ですが、気軽に扱えるようなモノではありません」
クロが溜息をした後にアークシアへ
「ここの銀河を担当しているブルーイスから、色々と聞いた。少し複雑な気持ちだ。レナの無事さえ保証してくれるなら、オレは干渉しない」
アークシアが残念そうな顔で
「そうですか…先程、父上がレナ様の事を愛玩奴隷とわたくしが告げた時に、怒りを滲ませた所を見て、わたくし達の現状を知って貰えば…と望みを抱きましたが…」
クロが鼻で笑い
「その煽って試す所、前言撤回だ。お前もオレの子だな」
アークシアが微笑み
「はい、父上の子ですから」
クロは察知で、レナのいる場所へ向かっているのを感じつつ、レナの近くにミカボシとスクナがいるのを…
「一つ、聞きたい。何時からスクナとミカボシの二人と組んだ?」
アークシアが真剣な顔で
「ここの独立を勝ち取った後です。逆にこちらが聞きたい事があります。あの二人とお知り合いだったのですね」
クロが腕を組み背もたれに体を乗せて
「色々とな…」
クロの隣にいる千華と紫苑もクロを横見する。
アークシアが呆れ気味に
「数多の銀河、聖帝ディオスの一派、超越存在の連合が、最大の脅威と認定した方々とお知り合いとは…」
クロが鋭い顔で
「多分、聖帝ディオスの連中にはバレていると思うぞ」
アークシアが溜息を漏らして
「構いません。彼らとは技術的な協定を結んでいるだけなので…」
その含みにクロは気付いている。
「そうか…」
と、告げる頃にはレナがいるビルへ到着した。
アークシアを先頭にクロと千華に紫苑はビルのエレベーターで最上階へ行くと、VIPルームにいるレナを見つける。
「クロ!」
と、ドレスに着飾ったレナがクロへ駆けつける。
クロがレナに近づき
「大丈夫か?」
と、跪いてレナの無事を確認する。
同時に、静かにミカボシとスクナは去って行くが、移動する最中かクロと視線が交差する。
クロはレナの頭を撫でて
「すまん。無事で何よりだ」
アークシアがクロの隣に来て
「レナさん。父上、今後の為に少し、話し合いをしませんか?」
と、提案が。
それにレナはクロを見つめて、クロが
「ああ…そうだな」
と、話し合いに応じる事にした。
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