白夜 12話 再びの出会い
クロとレナは、時空戦艦グルファクシにいた。
宇宙を航行するグルファクシで、クロはオメガデウス・ヴァルヤの整備をしている。
端末にクロをは触れて、オメガデウス・ヴァルヤと繋がり異常を調べ
「よし、問題は、ないな」
と、整備の検査を終えてレナがいるブリッジホールへ来る。
ブリッジホールへ来ると、レナはDIのシュレアと話し合っている。
クロが近づき
「何を話しているんだ?」
レナとシュレアが振り向き、レナが
「もの凄く報酬が良かったから」
シュレアが微笑み
「はい、凄い報酬です」
クロが微妙な顔で
「どのくらいなんだ?」
レナが目を光らせて
「重力子エネルギーが500GWと、反粒子エネルギーが80TW、質量化物質エネルギーが50GW」
クロが微妙な顔で
「イマイチ…どのくらい…凄いのか分からない」
シュレアが
「クロ様の時代でなら…三千億C(日本円で三兆円)ですね」
「はぁぁぁぁ!!!!!!!!」
と、クロは大声で驚きを放ってしまった。
レナが
「これでも相当に格安だと思うよ。だって復活できなかった惑星環境を元に戻したんだから」
クロは、どう反応しようか分からず
「ああ…うん、う、うん?、うん…」
シュレアが
「惑星環境が復活した場合、それによって起こる様々なプラス効果は絶大です。人口の安定化、惑星という安定した土地での開発や研究、食料やバイオテクノロジーの供給安定化、計り知れないですよ」
クロが溜息をして
「そうだな…確かに、使える惑星が一つあるだけで、その星系地域の発展が大きく変わるからなぁ…」
レナが真剣な顔で
「クロの力は凄い、でも安売りはダメ。チャンとした報酬で考えないと…悪い人達が利用しようとして近づくから」
クロがレナを見つめて
「レナって、そこがチャンとできているよなぁ…どうやって、そこを勉強したんだ?」
レナが少しだけ俯き
「その…色々と教えてくれた人達が…いたから」
クロが膝を落としてレナと同じ視線で
「親代わりになってくれた人達か?」
レナがクロと視線を合わせて
「教えてくれた上のお姉さん達がいたから…」
クロはハッとする。
レナは、デザイナーズだ。他の個体達もいるはずだ。
「なあ…レナが報酬に拘る理由って…いや」
と、クロは立ち上がって
「レナが話したくなった時に話してくれ、待っているから」
レナが少し悲しげな感じで
「うん」
クロが微笑みレナの頭を撫でようとしたが、視線を鋭くさせ
「シュレア」
シュレアも鋭い顔で
「ええ…どういう事でしょうか?」
レナがクロへ
「どうしたの?」
クロが鋭い顔で
「空間湾曲ステルスを使って近づく戦艦が…」
シュレアが頷き
「問題ないなら、識別信号とステルスなしで現れる筈ですが。識別信号もなし」
クロが溜息を漏らして
「厄介事か…」
◇◇◇◇◇
クロ達の時空戦艦グルファクシを、空間湾曲ステルスで姿を隠した宇宙戦艦達が挟む。
時空戦艦グルファクシを特別な捕縛エネルギーで包み、逃がさないようにすると…宇宙戦艦から全身を装甲に包んだ兵士達がグルファクシの表面へ渡る。
そして、グルファクシの黒い装甲板の表面をサーチして、入力端末がある開閉部を見つけるとハッキングで解錠した。
クロとレナは通路を歩きながら
「どうするクロ?」
クロが両手にグングルニルの銃剣を掲げ
「捕らえて色々と聞き出す」
レナは頷き
「わたしも手伝う」
と、背中の装甲に収納されたエネルギー剣を握り締める。
クロがレナに振り向き、銃剣のグングルニルを壁に立たせて跪きレナの両肩を持つと、レナの額にキスをした。
「え?」とレナが戸惑っていると、クロが微笑み
「もしもの場合のおまじないだ」
レナは困惑しつつキスされた額を摩る。
クロは両手に再びグングルニルを握り締めて
「さあ、行くぞ…」
侵入者は両手にアサルト型のエネルギーライフルを握って、グルファクシ内を進む。
壁に隠れて向こう側を伺うが、壁に隠れた者達が見えない力で壁から弾き飛ばされて反対の壁にぶつかる。
クロは隠れている部分に向けてグングルニルの銃口を向けていた。
レナが驚きで
「今…隠れていた人達が弾き出てきたんだけど…」
クロが笑み
「コイツには、物理的な壁をすり抜けて対象を攻撃する力もあるんだよ」
と、告げて何度も引き金を引いた。
壁で見えないし、物理的に攻撃できないはずなのに…侵入した者達が弾き飛ばされる。
困惑する侵入者達、その後ろから顔をフルフェイスのヘルメットで隠す人物が現れて
「どけ…」
と、侵入者を下げさせる。
侵入者達は倒されて気絶している仲間を回収しようとするが、フルフェイスの男が指を立てた瞬間、気絶した侵入者の仲間達が見えない力で引き寄せられて、仲間達の元へ来る。
フルフェイスの男が
「さっさと回収しろ」
侵入者は言われるまま気絶した仲間達を回収して下がる。
フルフェイスの男が前に出る。
クロがフルフェイスの男を感知してグルファクシの物理壁を抜ける攻撃を放つが、当たる瞬間に何かのつかみ取られて消える。
それにクロが厳しい顔をして
「ヤロウ…」
レナがクロに
「どうしたの?」
クロがレナを後ろに下げて
「どうやら…面倒なヤツが現れたらしい」
クロとレナがいる通路の先に、フルフェイスの男が現れる。
フルフェイスの男とクロが視線を交差させる。
レナはクロの後ろにいて、その様子を見つめる。
フルフェイスの男が顔を覆っているヘルメットのバイザーを外して
「久しいな…コクテン」
そこにはスクナの顔が
クロが鋭い顔で
「おう、元気だったか?」
スクナが笑み手を前に出して構えて
「ああ…色々とあったけどね」
クロがグングルニルの銃口をスクナに向けて
「ミカボシやハジュン、アテルイのヤツ等は?」
スクナが笑みながら
「今回は、自分とミカボシが担当だから…」
クロがフンと鼻で笑い
「そうか、じゃあ…昔のよしみで下がってくれないかね?」
スクナが首を横に振り
「すまんね。それはムリなんだよ」
レナは何かを感じる。
スクナの背後から何かが伸びる気配があるが、装備している装甲システムの探知には、全く引っかからない。
クロのグングルニルから炎が走って、スクナの背中から伸びた不可視の存在を打ち抜く。
それによってクロとスクナの合間に明滅が幾つも現れる。
その明滅によってレナは形を見た。
手だ。大きな透明な手が幾つもスクナの背中や肩から伸びてクロへ襲いかかっている。
それをクロは撃ち抜いているのだ。
スクナは、物理的なセンサーに捉えられない何かの手を伸ばして攻撃している。
クロは、レナを守るように背中へ隠す。
それにスクナが狙うように笑む。
クロが気付き
「レナ!」
と、後ろを見た瞬間、レナを両手に抱き捕らえた者がいた。
クロがその者の名を叫ぶ
「ミカボシーーーーーー」
ミカボシがレナを両手に抱き捕らえて、クロの目の前の空間が歪む。
それをクロがグングルニルの刃が備わる下部で切り裂いたそこに、光を放つエネルギーがあった。
置き地雷エネルギー
それにクロは衝撃を与えてしまった。
爆風と熱波がクロへ襲いかかる。
ミカボシがレナを誘拐して空間転移すると、同時にスクナも空間転移して消えた。
爆煙が広がる通路だが、ズンとクロが踏みしめて
「アースガイヤ式魔導」
”ウィンドブラスト”
爆煙を空気の衝撃波で消す。
「アイツらぁぁぁぁぁぁぁ!」
と、クロは激怒して通路を走って宇宙へ飛び出す。
クロは、特別な改造を施されているので、真空で絶対零度の宇宙空間でも平気だ。
離れて行く宇宙戦艦達をクロが睨むと、レナにつけた印がレナの位置を知らせる。
クロは
「アースガイヤ式魔導」
”アース・グラビティ”
と、クロは魔導の力で重力エネルギーの圧縮した足場を作ると、それを蹴った瞬間、重力エネルギーが解放されてクロを瞬時に亜光速へ導く。
クロは問答無用にレナが囚われた宇宙戦艦へ突貫するが、ミカボシが現れて
「すまんね。彼女にゲストとして…アクジズ星系へ来て貰うよ」
ミカボシが放つ空間を歪める力によって、亜光速のクロが宇宙戦艦から反射させて外される。
「クソッタレがぁぁぁぁぁぁぁ!」
と、クロが叫ぶ頃には宇宙戦艦がアルテイル共和時空国の宇宙に満ちる超空間ネットワークの空間転移で移動して消えた。
クロが怒り
「上等だ…アイツら…」
と、鬼のような顔になっている後ろにグルファクシが近づいていた。
◇◇◇◇◇
レナは気付くと、何処かの宇宙戦艦の客間にいた。
自分の状態を見ると、装甲の装備は外されて、ドレスを着せられている。
ただのドレスではない、諸々のいろんなシステムがナノマシンで組み込まれた特注品だ。
レナは客間の中を歩いていると、入口のドアがスライドして開き、女性が姿を見せる。
女性は微笑み
「ごめんなさい。色々な装備は外させてもらったわ」
レナが女性を見つめて
「アナタ達は?」
女性が困った笑みで
「その…少しだけ私達につきあって欲しいの」
レナが
「理由は?」
と、尋ねる頃に、スクナとミカボシが入ってきた。
スクナが
「お目覚めとは…体の方はどうだね?」
レナが
「どうして、わたしがここにいるんですか?」
その問いかけにスクナは笑み
「君は、コクテンをおびき出す為にいる」
レナが首を傾げて
「コクテン? 誰です?」
スクナがミカボシと視線を合わせて、ミカボシが
「ええ…確か…もう一つが、クロード・リー・ナカタだったか…」
レナが瞬きして
「クロの事ですか?」
ミカボシが
「クロ? ずいぶんと…簡素な呼び名になったなぁ…コクテンは…」
レナがスクナとミカボシを見つめて
「アナタ達は…クロの何ですか?」
ミカボシとスクナは困惑で視線を合わせて、スクナが手をレナに向けると
「コクテン…クロと私達は、同じ存在なのさ」
と、差し向けた手から黄金の粒子が昇っていく。
レナが驚きで
「超越存在…」
ミカボシがレナを見つめて
「一時、コクテン…クロと共にあったのさ」
レナは戸惑いの視線だ。
クロからは、五百年前の時空爆弾で時間を飛び越えて、戻って来たと…いや、本当は…と疑っていた部分はある。
スクナがレナに
「話を聞きたいか?」
レナは頷いた。
クロの話を聞きたい。
スクナとミカボシは、時空爆弾で高次元へ飛び、エネルギー生命体のようになったクロの話を聞いて…
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