白夜 11話 クロとレナ


 クロは、レナが受けた依頼主の前にいた。

 苦笑いのクロ


 クロとレナの目の前にいるのは…ライアス達だ。


 ライアスが微笑み

「どうも…よろしくお願いします」


 クロは左にいるレナを見ると、レナが親指を立てて

「めっちゃ、報酬が良かった!」

と、満足そうだ。


 クロが額を摩りながら

「ええ…その…この惑星を管理運営しているメルカバー施設の復旧だったか…」


 ライアスが頷き

「はい。今回はロアデウスはありませんが…」

 ライアスの隣に並ぶ妹のファリナが

「メルカバーのシステムが書き換えられて…近づけないようになっているんです」

 ファリナの隣にいるエルフのマリアが

「ほとんどのシステムが戦闘用に回されて…周辺は、この惑星は…」


 クロが周囲、自分達がいる浮いている基地から大地を見下ろすと、砂漠が広がっていた。


 クロが

「なるほど…環境維持システムが働いていないのか…」


 マリアの少し後ろにいるツルギが

「ああ…そういう事だ」


 クロが

「原因はなんだ? メルカバーをそんな事にしても意味は無いだろう」


 ライアス達が顔を見合わせて

「その…テロなんです」


「テロ?」とクロが眉間を寄せる。


 ツルギが

「ここから五千万光年も離れた場所にある。銀河のとある星系地域で…独立運動が起こった」

 ファリナが

「無論、それはこの時空の統治機関も容認していません。だから…制圧しようと…」


 ライアスが苦しそうな顔で

「それを防ぐ為に、周辺の銀河にあるメルカバーへのハッキングとロアデウスを…」


 クロが額を抱えて

「やっと争いやら色々と終わって…平和になったら、それか…」

 

 要するに、アルテイル共和時空国からの独立を維持する為に、周辺へテロを行って混乱させた。


 クロが呆れたような、なんでだよって顔をして

「何時からテロは、主義主張をお通すモノじゃあなくて、手段になったんだ? おじちゃん…追いつけないよ…」


 それにレナがポンポンとクロの腕を撫でて

「大丈夫、そういう介護もわたしにお任せ!」


 クロをレナを見つめて

「いや…そのぐらいは学べるから…まだ、介護は早いぞ」


 クロとレナのなれなれしくホノボノな感じに、ライアスは微笑む

「本当に短期間で、二人は馴染みましたね」


 ファリナも微笑み

「ええ…元からずっといるみたいですね」


 クロがレナの頭を撫でて

「この子のお陰で…人として戻れた。感謝している」


 マリアが首を傾げて

「人として戻れた? どういう事ですか?」


 クロが遠くを見るように

「時空爆弾で高次元へぶっ飛ばされた時に、高次元やらその上の次元の影響を受けて…エネルギー生命体みたいな存在になったんだよ。あれだ!」

と、クロは指を立て

「勇者ロボットシリーズのエクスカイザーみたいなモンだ」


 ライアス達全員が首を傾げて、レナも同じく首を傾げた。

 分からないのだ。


 クロが少し悲しい顔で

「これがジェネレーションギャップ…」


 ライアスが

「あの…すいません。もっと、その具体的に…」


 クロが上を見上げながら

「まあ、要するに…高次元にいる神格みたいな存在になってしまったんだよ」


 マリアが驚きの顔で

「そんな事、可能なんですか? 人が…生命が高次元存在になるなんて…」


 クロが顎を撫でて

「まあ、超越存在がいるくらいなんだから。なれるんだろうな…。まあ、ともかくだ。そういう存在になってしまって、高次元から召喚される形でしか戻れなくなって…」


 ファリナがレナを見つめて

「じゃあ、レナちゃんが…クロさんを定義してくれた事で、戻れたって事ですか?」


 クロは頷き

「おう、そういう事だ!」


 ライアスが驚きの視線で

「なるほど、だから…色々と…ハチャメチャな事ができるんですね」


 ツルギが難しい顔で

「元、人で…超越存在に近く、そして高次元存在になって…人に戻った。だから…いろんな術を持っている…と、信じられない。でも」


 マリアがクロを見つめて

「でも、目の前にいる。人であり神であり、超越存在でもある」


 クロが笑み

「信仰の対象として見ないでくれ。気軽にクロちゃんとでも呼んでくれ」


 ライアス達が戸惑っていると、レナがクロの袖を摘まみ

「クロ、お仕事…」


 クロが「ああ…」とライアス達に

「で、どうするんだ? 今回は…」


 ライアスが頭を振り

「みんな、そういう事だから、何時も通りにクロさんでいいだろうから」

 ファリナとマリアにツルギも頷き、ライアスが

「クロさんには、ボク達の護衛をお願いします。ボク達は問題のメルカバーへ突貫します。そこに入って、システムの中央を制圧して…」


 クロが微笑み顎を摩って

「なるほど、分かりやすい」


 ライアスが手を差し向けて

「よろしくお願いします」


 クロがその手を握り

「任せろ」


 こうして、ライアス達が乗った宇宙戦艦が飛び立ち、それにクロとレナが操縦するオメガデウス・ヴァルヤが続く。


 雲海の如く空に漂うメルカバーの無人兵器達、その最奥にメルカバーの姿が見える。

 ライアス達の宇宙戦艦が全速力でメルカバーへ向かい、それにオメガデウス・ヴァルヤが併走して、襲いかかる無人兵器達を破壊して行く。


 クロとレナのオメガデウス・ヴァルヤの護衛によってライアス達の宇宙戦艦はメルカバーへ突貫して中央へ来て、メルカバーのコアであるシステムに接続してメルカバーを本来の惑星管理装置へ戻した。

 依頼は成功だ。


 ライアス達がメルカバーから出ると、無数の無人兵器達を倒したオメガデウス・ヴァルヤが空に浮かんでいる。

 この件を解決するには、宇宙艦隊規模の兵力が必要だ。

 だが、クロとレナのオメガデウス・ヴァルヤだけで同等、いや…それ以上の成果を生み出せる。

 オメガデウス・ヴァルヤのコアでありオメガデウスを動かす動力源は、クロであるのは間違いない。

 つまり、クロは…それ程までの力を持っているのだ。


 ライアスは改めて自覚する。

 クロは、五百年前の時空大戦の時に多大な戦果を上げた存在であると…


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