白夜 10話 スカウト


 クロとレナがグルファクシに乗って出発しようとした時に、イーシャが

「そうだ! クロード…いや、クロ…あのラーメン屋が五百年を過ぎてもあるよ」


 クロが驚きを向けて

「マジか!」


 イーシャが笑み

「ああ…有名になってチェーン店の展開をしたけど、本店だったあそこは、まだ残っているよ」


 クロがニヤリと笑み

「五百年も過ぎて味が変わっていないか…試してみるか…」


 クロはレナと共にグルファクシに乗って、別の惑星へ向かった。

 去って行くクロ達を見送るライアス達に、ライアスが

「また…出会えるでしょうか?」


 イーシャが難しい顔をして

「そうだね。案外…早いかもね」

と、告げた後にイーシャは右腕を上げて通信を開く

「これで良かったんだよな」


 立体画面の通信にいたのはガージェストだ

「ああ…これでいい」


 イーシャが嫌そうな顔で

「後でクロに恨まれるなぁ…」


 ガージェストが悲しく重苦しい顔で

「クロードの力は、自由にしていいレベルではない。大丈夫さ。我々のような愚かな者達の元へ行く訳では無い」


 イーシャが渋い顔で

「結局は、また…頼るしかないって事か…」


 ガージェストは頷き

「そういう事だ」


 ライアス達がその通信を見ていてファリナが

「どういう事なんですか?」


 イーシャがライアス達を見て

「そういう事だよ。察しな」


 

 ◇◇◇◇◇


 クロはレナを連れてラーメン屋へ来る。

 イーシャがいた惑星から数光年も離れた惑星の都市にあるラーメン屋。

 テーブル席とカウンター席があるけっこう広いラーメン屋に入るクロとレナ

 二人は人がいない店舗を見回して、レナが

「人がいないね」


 クロが時間を見て

「ああ…まあ、お昼時よりは早いから、少ないんだろう」

と、告げてテーブル席へレナを連れていく。

 

 クロとレナは対面に座り、販売ドローンが来るとクロとレナは注文をする。


 レナが

「ここがクロが来ていたラーメンって料理を出すお店なの?」


 クロが微笑み

「ああ…よく、仕事が終わった後に来ていたさ」


 レナがクロを見つめて

「どんな仕事をしていたの? その…マハーカーラ部隊に来る前は?」


 クロが水を運ぶドローンを止めて水を取りながら

「護衛とか傭兵、運搬品の護衛運送、あと…海賊狩りとか…そんな感じかな…」


 レナが水を飲みながら

「戦う事を主軸にする何でも屋さんって事?」

 

 クロは頷き

「ああ…スペース・フリーランスってヤツだ。当時は結構…内戦やらテロやら海賊が多かったからな」


 レナが首を傾げて

「そうか…海賊なんて…珍しい。わたし…会った事もないし話も聞いた事もない」


 クロが笑み

「それだけ、世の中が平和になったって事さ」

と、説明している間に目的の料理が運ばれてくる。


 ラーメン二つと、ラーメンの具や調味料を使ったラーメンライス二つ。


 レナがラーメンを覗き込んで

「これがクロが五百年前も食べた…」


 クロが笑み

「五百年しても変わっていないか…確かめてやろうぜ」


 クロとレナは、ラーメンを食べる。


 クロがラーメンを口にして

「ああ…変わんねぇ…うめぇや…」


 レナもラーメンをすすりながら

「へぇ…これが…」


 クロがラーメンを食べていると店舗内の音楽が変わる。

「ああ…キタニタツヤの永遠か…」

と、クロが曲を聞いて答える。


 レナが

「知っているの?」


 クロが

「ああ…まさか、また…聞けるとは…」


 クロは懐かしさを噛み締めて、レナはクロが大好きだった昔の味を噛み締めている。


 二人がラーメンを食べて楽しんでいると、店舗に人が入ってきた。

 次々と人が入り込む。


 クロがラーメンを食べる手を止めて

「おい…冗談じゃあねぇ」


 レナが鋭い声色となったクロを見つめて

「どうしたの?」


 そこへ

「お二人さん。相席いいかね?」

と、金髪に胸元が開いた小麦色の肌の男と、黒髪に凜とした男、クロと同じ四十代の男、それより少し上の六十代くらいの男、その四人がクロ達の席に来る。


 クロ達の席は大きな六人用だ。

 スペースは十分にある。


 呼びかけた金髪の男が

「相席してくれたら…お二人の食事代をこっち持ちでもいいぜ」 


 レナが戸惑っていると、クロが金髪の男を凝視して

「確か、ファクド…ウラグス・ファクド・ディフィスだったか?」


 金髪の男がニヤリと笑み、隣にいる同年配の男が鋭い顔をする。

 その鋭い顔の男にクロが

「おまえ…嫌だねって言ったのに…会いに来やがって…」


 クロの感じからレナが

「知り合い?」


 クロが四十代の男を凝視して

「何の用のですか? 聖帝ディオス様…と、超越存在の宇宙王達の纏め役、ゴールドジェネシスの宇宙王アヌビス様」


 それを聞いてレナは四人を驚きで凝視する。


 超越存在の宇宙王…時空を又に駆けて、時空へ万能といえるエネルギーを与える超越存在、その宇宙王の中でも強大な一角に当たる聖帝ディオスとアヌビスが…いる事に驚愕する。


 ファクドが

「やれやれ、穏便に話を進めたいんだけど…」


 クロが額を抱えて

「穏便に? 店舗内にいる全員、アースガイヤやゴールドジェネシスにその他の実力者達で埋めて、どういうつもりなんだよ…」


 店舗内にいる全員がクロの方を向く。


 聖帝ディオスが

「不快に思ったのなら謝罪するよ。彼らは私達の護衛でね」

 

 ファクドの隣にいる聖帝ディオスの息子ティリオが

「久しぶりだね。何時か…何処かで…の通りに会いに来た」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

と、クロは長い溜息をして額を抱え

「イーシャのヤロウか…」


 ゴールドジェネシスの宇宙王アヌビスが

「彼女達を責めないでくれ、我々のお願いを聞いてくれたにすぎないのだから」


 聖帝ディオスが

「ここも再現したんだよ。ここのラーメンが人気になってチェーン店展開をしたのだが…経営が一気に傾いて、大手の食品会社に吸収合併されてね。君を誘う為に…色々と情報を得てね…」


 クロが頭を振り

「だから、あの店主の親父に…欲目を出すんじゃねぇぞって言っていたのに…」


 聖帝ディオスが

「少し話をしよう」


 店舗内を覆い尽くす聖帝達の部下が聖帝ディオス達にイスを持って来る。


 クロが嫌そうな態度で

「で? オレをどうするつもりなんだ?」


 ファクドが笑み

「そう邪険にしないでくれよ。スカウトに来たんだよ」


 クロがハッキリと

「お断りする」


 ティリオが淡々と

「そういう訳にはいかない。アナタの…クロード殿の力は巨大だ。管理される場所にあるべきだ」


 クロが溜息を漏らして

「結局、過去と同じか…何かに縛られる…それだけか…」


 聖帝ディオスが

「君を利用しようとする訳では無い。だた、我々の側に所属して欲しい。そこから仕事を請け負って欲しい」


 ゴールドジェネシスの宇宙王アヌビスが

「君は自分の力が…どれ程なのかを知っているか? それはむやみやたらに振るっていい力ではない」


 クロが

「だから、お前等に従って管理されろって事かよ」


 ティリオが苛立ち気味に

「自覚があるのか? アナタの力は…」

と、強くなりそうなのを父である聖帝ディオスが止めて

「ティリオ、落ち着け」


 ティリオが俯き

「すいません」


 聖帝ディオスが微笑み

「こういう事だ。我々から提供される依頼を好きに選んで、それを熟してくれればいい。仕事を斡旋するギルド形式でいい。君がどんな行動をしているのか?を我々が知っていればいい」


 クロが無言でいると、レナが

「クロ…ここで断っても、どうせ…何処かで似たような人達が現れて…」


 クロが頭を振って

「分かっている。だが…全く」

 決められないクロにレナが

「クロが決められないなら、わたしが決めてもいい?」


 クロがレナを見つめて

「ああ…いいぜ」


 レナが聖帝ディオス達を見つめて

「報酬、いいですか?」


 ガクンとクロが崩れた。

 レナは報酬の良さで選ぼうとする現金さ…いや逞しさにクロは崩れてしまった。


 聖帝ディオスが笑み

「ああ…相応の十分な報酬を約束しよう」


 レナが親指を立て

「クロ、契約!」


 クロはテーブルから崩れ落ちてしまう。

 そして、崩れ落ちたテーブルからクロは這い上がって

「分かったよ」


 こうして、聖帝ディオス達から依頼を受けて仕事をするギルド形式の仕事を手に入れた。


 

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天元突破の超越達〜白夜と世界〜 赤地 鎌 @akatikama

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