白夜 9話 懐かしい顔


 ライアス達と共にクロとレナは、とある惑星に来た。

 海だけの惑星の空には、島が浮いている。

 島の下部には、島を浮遊させる反重力装置がついて、島を空に浮かべている。

 その空飛ぶ島の惑星へ、ライアス達の宇宙戦艦に運ばれて、とある島へ到着する

 千メートルくらいの浮遊島、その周囲には滑走路やら宇宙船の港、中央には工業施設がある。

 明らかに何を製造修理する場所に見える浮遊島へ、ライアスの宇宙戦艦が停泊する。

 宇宙戦艦から下りたクロは、宇宙戦艦に掛かった桟橋を渡り広い場所に立つと

「おーーーーい! ロリババエルフーーーー 元気かーーーーー」

と、レナを隣に大声で叫んだ。


 それにレナは困惑していると

「誰が! ロリババじゃあああああああ」


 奥の方から人の身丈ほどもある部品が飛んできた。


 それをクロは笑み、片手でキャッチする。


 レナは困惑と戸惑い、次に降りて来たライアス、ファリナ、マリア、ツルギの四人は苦笑いだ。


 ドスドスとガニ股で歩いてくる金髪エルフが、ツナギ服の袖にあるレンチを手にしてクロに殴り掛かる。

「お前は!!!!!!!!」

 もの凄く分かりやすい大振り


 レナが構えるが、クロが手を差し出して止めて

「やめろ」

と、前に出る。

 

 ツナギ服のエルフのレンチの一撃は、明らかに戦い慣れていない動きだ。

 それを軽く片手でクロは受け止めると、エルフがクロに抱き付き

「バカ野郎…五百年だぞ。アタシ…六百歳になっちゃったぞ」


 クロは抱き付いたエルフの背中を優しくなで

「悪かったよ、イーシャ」


 クロに抱き付いたエルフのイーシャがクロを離して

「全く、本当に遅い! 大遅刻だぞ」


 クロが肩をすくめて

「あまり、変わっていないようで良かったよ」


 イーシャは人でいうなら三十代くらいに見えるが…エルフの寿命は千年だ。その六割を過ぎている。

 同じエルフのマリアがイーシャに近づき

「イーシャおばあさま」


 イーシャがマリアの耳を摘まみ

「イーシャ、お姉さんって呼びなさい」


 不条理にマリアが悲しい顔をするが、クロが

「いいじゃねぇか…オレも百年は過ぎている。お互いに老けたって事さ」


 イーシャはフンと鼻息を荒げて

「ガージェストには…」


 クロは笑み

「最初に会ってきた」


 イーシャが肩を落として

「そうかい…なら、色々と事情は知っているって事か…」


 クロが少し悲しげな顔で

「アルの予言通りになっちまった…」


イーシャは

「ここで立ち話もなんだし、お茶を飲みながら話そう」

と、イーシャは全員を客間へ通した。


 テーブルに座る全員、ドローン達が色々な飲み物と食べ物をテーブルに運び、お茶会となっていた。


 イーシャが少し悲しげに

「本当に…クロード達がいなくなった後…大変だった」

 その一言に色んな重さがこもっている。


 クロが呆れ気味に頭をなで

「そんなつもりは毛の先もないのになぁ…」


 イーシャが悲しい顔で

「最初の時は、ヴァーシャの…アシェイラの言う通りになれば…長い争いも終わると本気で思ったさ。でも…」


 クロが

「より泥沼化して…か」


 イーシャがクロを見つめて

「クロード、アンタはこの先、どうするつもりだい? また」


 クロが笑み

「いいや、もう終わった過去の事だ。過去の亡霊は成仏するべきだ。今は…」

と、ライアス達を見つめて

「コイツらの時代さ」


 レナがクロを見つめると、クロが視線を合わせて

「この子に呼ばれて戻れたんだ」

と、レナの肩に手を置いて

「この子の、レナのそばにいるさ」


 イーシャが

「じゃあ、武器はどうするんだい? 丸腰みたいだけど…グレイプニルも…」


 クロが俯き気味に

「ああ…時空爆弾を喰らった時に…」


 イーシャが立ち上がって

「じゃあ、これが役に立つね」

と、歩き出して奥から巨大な一メートルの銃剣の二丁を持って来た。


 クロが黒光りする一メートルの銃剣の二丁を見て驚き

「これは…オリファルコンは…アルがいないと…」


 イーシャが微笑みながら

「ちょっとだけちょろまかしてね。それを使って作って置いたのを隠してあったんだ」

と、二丁の一メートルの銃剣が収められたケースを開けて

「グングルニル…それがこの武器の名さ」

 

 クロが

「これを手にしても…」


 イーシャが

「これはアンタにしか扱えない」


 クロが二丁の銃剣、グングルニルを握って持ち

「お代は…」


 イーシャが微笑み

「修理をする時は、アタシのファクトリーを使う事、そして…」

と、クロ達を宇宙戦艦の格納庫へ案内すると、クロの目の前に…

「ああ…グルファクシ…」

と、黒金色に輝く宇宙戦艦がそこにあった。


 イーシャがクロの隣に来て

「懐かしいだろう。クロードとアルードが駆け出しだった頃に使っていた宇宙戦艦だが…それをアップデートして時空戦艦にしてある。まさか…オメガデウス・ヴァルヤを持って来るなんて予想外だよ。オメガデウスを格納して運用するなら、これくらいの時空戦艦は必要さ」


 クロの目の前に立体映像の人工知性体DIが現れる。

 メイド服の人工知性体DI、グルファクシのDIシュレアが

「お帰りなさいクロード様」


 クロが懐かしくて

「すまないな…長く…不在にして」


 DIシュレアが微笑み

「いいえ…長い戦いが終わった後に、何時か…戻ってくると約束してくれました。それを叶えてくれましたし。イーシャの下で色々とお手伝いをしていましたから、退屈ではありませんでしたから…」


 クロがレナを隣に運び

「今度は、この子と一緒に…だ」


 レナがDIシュレアにお辞儀して

「レナです」


 DIシュレアが微笑み

「よろしくお願いします。レナ様」


 こうして、クロ達の新たな船出が始まった。




 ◇◇◇◇◇


 クロとレナがグルファクシに乗って出発しようとした時に、イーシャが

「そうだ! クロード…いや、クロ…あのラーメン屋が五百年を過ぎてもあるよ」


 クロが驚きを向けて

「マジか!」


 イーシャが笑み

「ああ…有名になってチェーン店の展開をしたけど、本店だったあそこは、まだ残っているよ」


 クロがニヤリと笑み

「五百年も過ぎて味が変わっていないか…試してみるか…」


 クロはレナと共にグルファクシに乗って、別の惑星へ向かった。

 去って行くクロ達を見送るライアス達に、ライアスが

「また…出会えるでしょうか?」


 イーシャが難しい顔をして

「そうだね。案外…早いかもね」

と、告げた後にイーシャは右腕を上げて通信を開く

「これで良かったんだよな」


 立体画面の通信にいたのはガージェストだ

「ああ…これでいい」


 イーシャが嫌そうな顔で

「後でクロに恨まれるなぁ…」


 ガージェストが悲しく重苦しい顔で

「クロードの力は、自由にしていいレベルではない。大丈夫さ。我々のような愚かな者達の元へ行く訳では無い」


 イーシャが渋い顔で

「結局は、また…頼るしかないって事か…」


 ガージェストは頷き

「そういう事だ」


 ライアス達がその通信を見ていてファリナが

「どういう事なんですか?」


 イーシャがライアス達を見て

「そういう事だよ。察しな」


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