白夜 8話 呪縛の拒絶
ライアスは愕然とする事実に直面する。
ライアスやファリナにマリアには、アルテイル共和時空国は平和的にインドラ時空帝国と融合して出来た時空国家である。
その時空国家に、平和の象徴として二対の男女の超越存在、宇宙王だった男性のマハーカーラと女性のヴァーシャ、夫婦だった二人の子供達が四大王家の元になり…それに自分達が連なっていると…教えられていたが…。
ガージェストと四大王家の王と女王の四人がいる席で、クロが
「ヴァーシャ…アシェエイラのヤロウ。アルードの遺伝子を使って、デザイナーズの子供達を」
四大王家の女王ミカガミが
「マハーカーラであるアルード様の遺伝子と、ヴァーシャであったアシェエイラ様の遺伝子、つまりアルード様の精子とアシェエイラの卵子を受精させて改造して、多くの優秀な子供達を生み出して…その中で優秀な因子と性能を誇る四名を王家としました」
クロが嫌そうな顔で女王ミカガミを見つめて
「テメェ…メディーサの…」
女王ミカガミが頷き
「はい、クロード様達の医療や因子研究を担当していたメディーサ女医の孫弟子に当たります」
ライアスが俯きか加減だ。
子供の頃から正統な王家の子孫と言われて育てられたのに…こんなのって…
ライアスの父マタイアス王は、同席しているヒックス大佐に
「大佐、ライアスとファリナにマリアを…」
ヒックス大佐は少し戸惑うも冷静に振る舞いながら
「は!」
と、命令に従ってライアス達を下げようとするが…
クロが皮肉に笑み
「別にいいだろう。下げなくても…。後々に分かる事なら早めの方が痛みは少ない」
マタイアス王が難しい顔をする。
ガージェストが笑み
「その強さ…変わらないなぁ…」
クロが呆れ気味に
「お前達が呆れる程に愚かなだけだよ」
ガージェストが笑み
「では、我らが裏切ったのも知っているのか?」
ライアスとファリナにマリアは青ざめて、ツルギは心を殺して静かにする。
レナが不安げに隣にいるクロの顔を見つめる。
クロが嘲笑を見せて
「ああ…あの時、今から五百年前か? オレ達がいた第七艦隊を時空爆弾で消滅させたのも、お前達だってのは気付いていたぜ」
ガージェストが懺悔のように告げる。
「そうだ。お前達が…忌々しかった。強く、誰よりも最強だった。だから…ヴァーシャは…カレイドのハジュン達の提案を呑んだ」
クロが額を掻きながら悲しげに
「そうか…結局は、弟のアルードが言っていた予言の通りになったのか…全部が…」
ガージェストが
「予言か…。我々は裏切り者になり世界を手にするだろう。マハーカーラが言っていたな」
四大王家のアルベルト王が
「だが、もう…状況が変わってしまった。クロード殿…いえ、最後の正統な超越存在の王よ。どうか…我らの上に君臨してくれないだろうか?」
四大王家のスクイナ女王が
「我々は超越存在の力をアルテイル共和時空国に連なる時空達に提供する事で、治世を保っている」
四大王家のマタイアス王が
「その総量に限界が来ている」
四大王家のミカガミ女王、レナを作って産んだ女王が
「幾度も…我らは新たな超越存在の王を産み出そうと、試行錯誤を繰り返した。でも…」
ガージェストが
「その試行錯誤も限界だ。クロード…本当の意味での超越存在、マハーカーラのアルードの対存在の超越存在のクロードに、このアルテイル共和時空国で宇宙王として立って欲しい」
クロにライアス達とレナの視線が集まる。
クロは額の髪を掻き上げて
「オレの答えは、これだ」
右手を握って中指を立てた! クソッタレ!と否定した。
「お前等の作った呪いくらい、お前等で何とかしろ!」
ガージェストが笑み
「お前は、何時も正しい選択をする。若い頃は、それが妬ましかった…だが、今は違う。クロード、お前のような正しさを選べなかった自分達の愚かさを痛感しているよ」
クロが怒り気味に
「いいか、オレは永遠なんて望まない。運命がどんなにクソッタレでも抵抗し続けるぜ。それが生きているって事だ。世の中には借金より恐ろしい事がある。お前等はそのツケを何とかしようとしなかったから、この結末なんだろうが!」
マタイアス王が
「我らが滅びるとしてもか? 汝が過去に守ろうとした、この世界が滅んでもか?」
クロが声を荒げる
「甘ったれた事を言うんじゃあねぇ! お前等が責任取れないから滅びるんだろうが! 責任ってのは問題を解決できる力であり、それを背負える覚悟があるって事だ! 背負う覚悟も、問題を解決する事もしない! 背負うんだな…そして問題を解決する為にあがらっていけ。お前等…ここの支配者だろう。自らが滅びようとしても重責を背負い続けろ」
ガージェストは微笑んでしまう。
目の前にいる…この男は…五百年しても変わらない。
何時も正しい。その正しさを貫いたからこそ…それを疎んじた自分達が裏切ってしまい…そして自分達が君臨して、このザマだ。
もし、過去に戻れるなら…あの時の過ちを止めて…いいや…もう
「分かった。クロード」
クロが
「オレはもう、クロードじゃあねぇ。クロだ。なぁ…レナ」
と、隣にいるレナに微笑む。
レナは少し戸惑いつつも頷き
「う、うん。そうだね…クロ」
クロが悲しげな笑みで
「クロード・リー・ナカタ、マハーカーラの第七艦隊にいた777は成仏しちまったぜ」
ガージェストが
「そうか、分かった。もう…好きにするといい」
クロが笑み
「好きにさせて貰うぜ」
と、クロは背中を向けて
「レナ、行くぞ。話は終わった」
レナが全体を見て頭を下げ、クロに続こうとすると、ミカガミの女王が
「レナ…クロード様に仕えなさい。良いですね」
レナが立ち止まりミカガミ女王に反応しようとするが
「黙れや!」
と、クロが怒りでミカガミ女王を睨み
「お前は、母親なんかじゃあねぇ。毒だ。レナの母親面するんじゃあねぇ! お前みたいなクソ、大嫌いなんだよ。レナに語りかけるんじゃね! 人を道具にする外道が…口を開くだけでも毒々しい匂いがして、苛立つんだよ! 黙って消えろ」
と、告げてクロはレナの肩を持ち、この場から去って行く。
それにライアス達が続き、ヒックス大佐が
「失礼します」
と、出て行った。
出ようとするヒックス大佐にガージェストが
「大佐、クロに伝えてくれ。イーシャは、生きている…とね」
ヒックス大佐が「は!」と敬礼した後にクロへ向かった。
クロ達が消えた室内では、ガージェストが
「本当に変わらないな。あの正しさは…」
マタイアス王が
「ガージェスト…我らは…」
ガージェストが
「クロの言う通りだ。我らは我らの責任を背負う。それだけだ」
◇◇◇◇◇
クロ達が歩いていると、ヒックス大佐が
「クロ殿…伝言です」
クロが立ち止まり
「伝言?」
ヒックス大佐が
「イーシャは生きている…と」
クロが驚きの顔で
「え? あのロリババエルフが生きているのか!」
マリアが
「イーシャお祖母様と知り合いなんですか? クロ様は…」
クロがエルフのマリアを見つめて
「様は止めろ。クロでいい」
その次にマリアに近づき
「もしかして、イーシャの親族?」
マリアが頷き
「は、はい…そうです」
クロがマリアに
「どこにいる?」
マリアが思い出して頭を撫でながら
「数年前に私達一族の総代をやって、今は…総代を引退して、武器や道具の整備をするマシンファクトリーをやっていますけど…」
クロが、ぷ!!と吹き出して笑い
「あの、イーシャが一族の総代!!!! 何の冗談だ? はははははは!」
マリアが微妙な顔で
「確かに、あのお祖母様が良くやれたなぁ…と私も思っています」
クロが嬉しげに笑みながら
「決まった。次の行き先は、イーシャの所だ。顔を見せに行くか…」
ライアスが
「じゃあ、ボク達の宇宙戦艦で行きましょうか。ボク達全員の装備も整備して貰っていますから」
クロがライアスに
「悪いな…助かる」
ライアスが首を横に振り
「いいえ。構いませんよ。それに…アナタは…」
言いよどんでしまうライアスにクロは…
「クロード・リー・ナカタは成仏した。オレはクロだ。偶々、出会ったダンジョン探索者のクロだ」
と、ライアスに微笑む。
ライアスは頷き
「はい。じゃあ、クロ、行こうか!」
クロが微笑み
「おう。よろしく頼むわ。いや、マジで…色々と変わりすぎて困っていたんだよなぁ…」
レナがクロの後ろに静かに付くと、クロがレナに手を伸ばして
「レナも頼りにしているぜ」
レナはクロが差し向けてくれた手を見つめた後に、その手を握り
「うん。分かった」
レナとクロは手を握り歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます