白夜 7話 今の世界


 クロはレナと共にヒックス大佐の宇宙部隊の宇宙戦艦に乗って、大都市の惑星へ来る。

 宇宙戦艦の窓からクロは、陸地の全てが都市部という惑星を見下ろして

「ここも…こんなに変わったのか…」


 隣に座っているレナが

「知っている場所なの?」


 クロが窓から顔を外して

「ああ…首都惑星エレメンタルだ…」


 クロの隣にいるライアスが

「ここは…評議会が主機能を置いている議会惑星エルサレムなんですよ。クロさんの時代は首都だったんですね」


 クロが悲しげに

「五百年ってのは…デカいなぁ…」


 ライアスが気楽に

「人類種の寿命が200年、他の知的種でも同等か…それ以上になりましたけど。五百年って歳月は大きいんですね」


 クロがライアスを見つめて

「君は、幾つだ?」


 ライアスが頬をかいて

「数え年としては45年ですが…寿命的な年齢段階なら二十代前半ですから」


 クロが腕を組み枕にして

「そうか…オレも数え年としては100年だから寿命的な年齢段階なら四十代後半だからなぁ…レナは?」


 レナは淡々と

「数え年として15」


 クロが驚き

「え? 未成熟年齢って事かよ」


 レナは頷き「うん」と答えた。


 クロが困惑気味に

「そうか…その…なんだ。まあ、オレはオッサンだから…気づけない事があるから遠慮しないで言ってくれな」


 レナがクロを見つめて

「うんん…大丈夫だから」


 クロが更に困惑した感じで

「大丈夫だから? え? どういう意味?」


 レナはクロの顔をジッと見つめていた。

 その意味をクロは分からなかった。


 そうしている間に宇宙戦艦が雲海を突き抜ける程の高いビル群の上に来て、そのビル群の中でも宇宙戦艦を収納できる程の巨大なビルへ入る。


 ビル内に入るとヒックス大佐を前にクロとレナ、その後ろにライアスとマリアにファリナとツルギの四人が続く。


 大きな扉の前に来て、ヒックス大佐が先に入ってクロ達を入れる。


「ようこそ…クロード」

と、老いたガージェストを中心に左右対称に二人と並んで座ったテーブルの場が現れた。


 クロがガージェストを中心としたテーブルの場を前にクロが少し悲しげな顔で

「久しぶりだなぁ…ガージェスト」


 ガージェストがシワの顔に笑みを浮かべて

「長生きするものだ…君に再び会えた」


 ガージェストの右にいる金髪の男性がライアスとファリナを見つめる。

 ライアスが視線をそらせてファリナがライアスの背に手を置いて労る。


 ガージェストの右席には、四大王家のマタイアスの王と、アルベルトの王

 左席には、同じ四大王家で黒髪のミカガミの女王と、青髪のスクイナの女王

 アルテイル時空共和国を統治する四大王家とその評議会長ガージェストがいた。


 クロに四大王家の王と女王の視線が集中する。


 レナがミカガミの女王を見ると俯き加減で下を向く。

 それにクロが気づき

「レナ…どうしたんだ?」


 ミカガミの女王が

「レナ1112。よくやりました」


 クロが驚きの視線をミカガミの女王へ向ける。


 ミカガミの女王が

「レナ1112は、私が産んだデザイナーズなので…」


 クロが青ざめる。

 デザイナーズ、遺伝子やナノテクノロジーで強化された創造人類の事だ。

 レナの能力の高さは、五百年という歳月が人に進化をもたらしたと思っていたが…


 レナがミカガミの女王にお辞儀して

「お母様のお役に立てて嬉しいです」


 その反応にクロとツルギが嫌な顔をする。


 ミカガミの女王がツルギも見て

「ソード」


 ツルギが嫌な感じで

「私は、もう…関係ありませんので…」


 クロが呆れた顔をする。

 色々とグチャグチャしそうな所に、ガージェストが

「さて、クロード。何か…言うべき事はないか?」


 ガージェストが方向を変えさせる。


 クロが溜息を漏らした後に敬礼して

「マハーカーラ直下、第七艦隊所属、ナンバー777、クロード・リー・ナカタ。ここに帰還報告を」


 ガージェストが席から立ち上がって敬礼して

「ご苦労! 汝の帰還を歓迎する」


 クロが凜々しく声を張り

「マハーカーラからの伝言を伝えます! 我に続く第二、第三の我は必要なし! 己が成したい事、成すべき事を実行せよ! 自らの意思で行動せよ! 解散! 以上」


 それを聞いた四大王家の四人は厳しい顔をする。


 クロが敬礼を下ろして

「何となくは…察していますよ」


 ガージェストが席に座って

「我らのインドラ時空帝国は、マハーカーラを失って崩壊の危機が訪れた。それを繋ぎ止める為に…」


 クロが呆れたように首を振り

「なるほど、ヴァーシャは…彼女は、人工的にマハーカーラの遺伝子と自分の遺伝子を混ぜて…」


 ガージェストが頷き

「そうだ。この四大王家を作りインドラ時空帝国を一時期は支えたが…その後、争っていたアルテイル共和時空連邦に危機が訪れて、インドラ時空帝国とアルテイル共和時空連邦が合体して、今のアルテイル共和時空国が誕生した」


 クロが皮肉な笑みで

「アイツの…カレイドのヤツ等の作戦勝ちって事ですか」


 ガージェストが

「そのカレイドも…今や勢力が衰えて、カレイドがある時空連合の治安維持組織になってしまった。もう…我々が戦っていた敵は、誰一人としていなくなった」


 クロが頭を振って皮肉に笑み

「マハーカーラの…弟のアルードの予言通りになったって事か…」


 ライアスが

「あの…マハーカーラ…弟?ってどういう事ですか?」

とクロに尋ねる。


 ガージェストが

「ライアス王子、言葉の通りだ。クロード・リー・ナカタは、マハーカーラであったアルード・イー・ナカタの兄だ」


 ライアスとマリアにファリナの三人は無言の驚愕をクロに向けた。


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