白夜 6話 クロの過去


 クロがドラグゼオンを発動させた頃


「なんだコレは! マイナスとプラスで無限大のエネルギー!」

「大佐! α125がある惑星で、信じられないような現象が!」

「こんなバカな! 高次元のエネルギーが我々の次元で干渉しないで行使されるなんて、有り得ない!」


 荒れる司令室の現状、それを監督する男性、ヒックス大佐は鋭い視線で、正面にある巨大スクリーンに映るドラグゼオンを睨み

「部隊をα125へ向ける。私も行くぞ!」


 クロの力を察知したのは、メルカバーα125を管轄とする宇宙部隊だった。


 ◇◇◇◇◇


 そして、現在、ヒックス大佐が率いる宇宙部隊がクロ達を包囲していた。


  ヒックス大佐が包囲している部隊達、人型機動兵器からクロ達へ呼びかける。

「こちらは、アルテイル時空共和宇宙軍だ。汝達の所属を聞かせて欲しい」


 オメガデウス・ヴァルヤに乗っているレナが機体を動かそうとする。

 この包囲からクロだけを連れて…

 

 ライアスが

「待ってくれ。自分達は…このα125の復旧をしていただけで何も」


 人型機動兵器の一つからヒックス大佐がライアスを見つめる。

「まさか…四大王家のライアス王子か?」


 ライアスとクロ達がいる台座を包囲している一団にライアス達の小型宇宙戦艦が近づき

「お待ちください!」

とファリナは、ツルギが操縦する天使機体ラファエルの両手に乗って近づく。


 ファリナは胸元からペンダントを取り出して

「私達は、四大王家の一つ、マタイアスの一族です!」

 ファリナが掲げる黄金のペンダントが光を反射していた。


 ヒックス大佐が乗る小型宇宙戦艦が近づき、ヒックス大佐が側面の扉から現れるとファリナに黄金のペンダントを交互に見つめて

「お久しぶりですね。ファリナ姫」


 ファリナがヒックス大佐の顔を見て

「ひ、ヒックス大佐ですか!」


 ヒックス大佐が頷き

「ええ…その通りです。ファリナ姫という事は…あそこにいるのは…」

と、ライアスを見つめる。


 ファリナが

「ライアス兄さんです」


 ヒックス大佐が溜息を漏らして

「分かりました。とにかく…事情を聞かせて欲しいですな。手荒なマネはしませんので」


 ファリナがライアスを連れてライアスがいる台座に来る。


 オメガデウス・ヴァルヤは台座の隅に座りレナは乗ったままだ。

 何時でも問題に対処できるようにする為に。


 ライアスと共に並ぶクロへヒックス大佐が近づき

「君の所属を聞きたいのだが…」


 クロがあさっての方向を見つめて

「存在しているか…怪しい」


 ヒックス大佐が鋭い目になり

「ほう…どういう意味かね」


 ライアスが落ち着けようと

「ヒックス大佐、彼のお陰でα125のダンジョンが復旧したんだ。だから」


 ヒックス大佐が鋭い顔で

「ここの復旧には感謝する。だが…怪しい人物には」


 クロが頭を面倒な感じで掻いて

「マハーカーラ指揮下の第七艦隊所属、クロード・リー・ナカタだ。第七艦隊所属番号、777だ」


 ヒックス大佐が訝しい顔で

「何を言っている。マハーカーラ? 五百年前に滅んだ超越存在の宇宙王の艦隊に所属していた? ウソも大概にしろ」


 クロが額を抱えたが、右腕を出して包んでいる装甲を開いて素手を見せると、その素手には電子回路模様の数字777と共に様々なコードが刻まれた生体回路を見せて

「認証端末はあるか?」


 ヒックス大佐が部下に

「認証端末を」

と、部下に認証端末を運ばせてクロの差しだした生体回路の認証を開始した。


 そして…


「登録確認、マハーカーラ氏、直属の第七艦隊所属、トリプルナンバー777のクロード・リー・ナカタ様と確認されました。本人です」


 その場にいた全員が「え?」と驚きの声を漏らした。


 ヒックス大佐が驚きの顔で

「まさか…そんな…マハーカーラの第七艦隊は時空爆弾で殲滅されて…」


 ファリナが補足するように

「クロさんの話では、クロさんは五百年前の時空爆弾に巻き込まれて時を越えたタイムドライバーと…」


 ヒックス大佐が驚きと困惑でクロを見つめていると、クロが嘲笑な感じで笑み

「認証端末は、故障していないぞ」


 ヒックス大佐が困惑気味に

「ほ、本国に連絡を…」


 そこへ強制通信で割り込んだ巨大な立体画面が現れて

「ヒックス大佐、彼を…こちらに向かわせて欲しい」

と、巨大な立体画面に老人の姿があった。


 ヒックス大佐が敬礼して

「最高評議会長。しかし、本当に…そうであるか…の厳正な確認を」


 巨大な立体画面に映る最高評議会長の老人が笑み

「心配ない。なぁ…クロード」


 クロが笑み

「老けたなぁ…ガージェスト」


 アルテイル時空共和国、最高評議会長ガージェスト・レオルオルが笑み

「昔は、お前に嫉妬して会う度に嫌みを言っていたのに…今は、懐かしさと哀愁と共に、会いたいと思っているよ」


 クロも溜息をして

「そうだ。オレも…ガージェストと話がしてみたいよ」 


 ガージェストが笑み

「ヒックス大佐、彼を…連れてきてくれ」


 ヒックス大佐が敬礼して

「了解しました」


 こうして、クロは…かつての仲間と再び…。


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