白夜 5話 ロアデウスの対処


 クロは体を解しながら

「それじゃあ、やって見ましょうか!」

 

 隣にいるレナが

「本当に成功するの?」

と、幼い顔に疑いを見せていた。


 クロはレナにウィンクして笑み

「成功したら儲けモン、成功しなかったら…まあ、何とかするさ」

と、告げてオメガデウス・ヴァルヤへレナと共に乗り込む


 オメガデウス・ヴァルヤが飛翔して進み、その後ろをライアス達の小型宇宙戦艦が追いかける。

 向かう先は、α125の中枢に巣くうロアデウスだ。


 α125の動力炉がある区画を全て覆い尽くす程の黒い存在…ロアデウス。

 侵食生体兵器であるロアデウスは、取り込んだ物質を全て自分の部品として活用する侵食兵器だ。

 そのロアデウスは、無限を発生させるα125の動力炉を取り込んで、進化した。

 ドラゴゾというドラゴン型の生体兵器端末を無限に作り出す存在へ進化したロアデウス。


 そのロアデウスへ向かって行くクロ達とライアス達。


 巨大な黒い柱となっているロアデウスの表面がざわめく。

 ドラゴゾ達がクロとレナのオメガデウス・ヴァルヤと、ライアス達の小型宇宙戦艦を発見して飛び立つ。


 膨大な数の黒いドラゴンの群れが向かってくる。


 ライアスは、自身の天使機体ミカエルに乗っていて

「この数…マズいのでは?」


 オメガデウス・ヴァルヤに乗るクロが

「問題ない」

と、オメガデウス・ヴァルヤに備わる相転移砲を発動させる。

 オメガデウス・ヴァルヤの背中に備わる装甲翼から膨大な数の光が発射される。

 それに触れたドラゴゾ達が抉れるように消滅する。


 それに小型宇宙戦艦にいるマリアとファリナが驚きを向けて

「あれ…なんて兵器なの?」

と、ファリナが指さす。


 マリアが首を横に振って

「私も…知らない」


 小型宇宙戦艦を操縦するツルギが

「まさか…失われた技術である相転移砲というヤツか…」


 マリアが

「相転移砲って! あの空間の真空エネルギーを操作する…アレの事!」


 ツルギが頷き

「だろうな」


 ファリナが驚きで口を押さえて

「凄い、やっぱりクロさんって、本当にタイムドライバーだったんだ」


 ツルギが操縦をオートにして

「私も出る。ライアスだけでは露払いは難しいだろう」

と、自分の天使機体ラファエルに乗り込む。

 小型宇宙戦艦から剣の翼を背負うラファエルが飛び出して、ライアスのミカエル機体に併走する。


 ライアスがツルギが乗るラファエルを見て

「ツルギ、ボク達は落とし損ねたドラゴゾの…」


 ツルギが

「来たぞ!」


 目の前から倒し損ねたドラゴゾが迫る。


 ライアスが頷き

「ああ…やるぞ!」


 オメガデウス・ヴァルヤの攻撃から逃れたドラゴゾがライアス達へ向かってくる。

 それを、ライアスの機体ミカエルは右手にエネルギーソードと左手にエネルギー砲で迎撃、ツルギの機体ラファエルは両手に剣を握って両断、二人の攻撃を小型宇宙戦艦の砲撃からマリアとファリナが援護する。


 クロとレナのオメガデウス・ヴァルヤは、先行する。

 目の前のドラゴゾ達を空間相転移砲で倒しながら

 レナが

「クロ、目標まで…後1500」


 クロが操縦桿から手を離して

「レナ、後は頼む。術式を組む」


 レナが頷き

「了解」


 オメガデウス・ヴァルヤの操縦と攻撃をレナが担当すると、クロは両手を合わせて意識を集中させる。

「アースガイヤ式魔導」

 クロを中心に光の円環の魔術陣が展開される。

 それはオメガデウス・ヴァルヤの外に出て、オメガデウス・ヴァルヤを包む程だ。

 幾つもの幾何学模様と円環が精密な歯車時計のように噛み合わさって行く。

 

 レナはロアデウスの巨大柱を周回するようにオメガデウス・ヴァルヤを動かす。

 

 クロが術式を発動させる。

”エルーゼフォン・ジェネシス”

 創世神の力を発動させる魔術を展開させる。


 魔術陣に包まれたオメガデウス・ヴァルヤから光がロアデウスの巨大柱へ降り注がれ、それがロアデウスを包む。

 高次元、神格からの力を作用させてロアデウスを別の存在に作り替えようと…した。

 だが、ロアデウスは自分のエネルギーコアとしているα125の動力炉、高次元接続器ゾディファールから、それを拒絶するエネルギーを召喚させて相殺させた。


 クロがそれを見て

「ありゃ…やっぱ…専門家じゃあないとダメか」


 それを通信でライアスが聞いて

「えええええ! それじゃあ、どうするんですか!」


 ツルギが通信に入り

「撤退だな」


 レナが頷き

「戻るか…」


 クロが当然、操縦席の開閉ボタンを押して

「これをやりたくなかったけど、しゃーねぇか…」


 半分開いたコクピットのドアにレナが戸惑い

「クロ…何をするつもり?」


 クロがコクピットのドアに立つと首を解しながら

「これ…やると、後で面倒なんだよなぁ…」

と、息を吐き出すと白く、クロの全身から紫電が漏れる。

 クロの体が少しづつ膨らむ。

 そして、クロが拳を構えた。

 その正面に、ロアデウスの巨大柱がある。

 クロが雄叫びを放つ


 ヴォオオオオオオオオオオ


 それは人の声が放つ領域を越えた獣の雄叫びだった。

 クロの全身から光の柱が昇る。

 一瞬でメルカバーα125の天井を突き抜け、遙か空へ宇宙へ昇る。

 その光の全長は惑星サイズを超えている。

 惑星の直径を超える光の柱から鉤爪が伸びて、それを門のように開ける。


 ゴオオオオオオオオ!

 

 光の柱から数万キロの巨大な存在が現れる。

 赤く輝く結晶の躯体、凶暴な龍の顎門を持ち、一撃で惑星を粉砕するに相応しい龍の腕を持つ存在


 クロが

ドラグゼオン超龍星王


 赤く輝く結晶の躯体、惑星を一撃で粉砕する程の龍腕を持つドラグゼオンが拳を振り上げる。

 下ろす先は、惑星の大地に埋没するメルカバーα125だ。

 銀色の全長100キロの円盤大地に

「行くぜ…」とクロが拳を振り下ろすと、ドラグゼオンも同じく振り下ろす。


 100キロの円盤大地を遙かに超える程の巨大な拳が天から落ちてくる。

 それが円盤大地へ直撃する。

 ドラグゼオンの拳が持つエネルギーの全てが円盤大地の中心にいるロアデウスへ降り注がれる。


 ロアデウスは更に膨大なエネルギーに晒されて、それを取り込んだ高次元接続器ゾディファールで対処しようとするが、その高次元接続器さえも越える力をドラグゼオンが放ち、高次元接続器を破壊、そして、ロアデウスと高次元接続器を作り替える。


 メルカバーα125内部は、その光に包まれる。


 ライアス達はその光景に唖然として、メルカバーα125内部にいたドラゴゾ達は蒸発するように消える。

 ロアデウスの消滅に呼応して共に…


 ロアデウスが取り込んだ中核は、再構築される。

 光が消えた後、そこには…結晶で構築された巨大な柱が出現する。

 その中心に再構築された高次元接続器ゾディファールの二つが浮かんでいる。

 黄金に輝く全長が十五メートル前後の黄金の石版装置の二基、ゾディファール

 結晶で構築された巨大な柱は、電子回路のような模様を広げると、エネルギー活動が低下していたメルカバーα125全体にエネルギーを供給する。

 暗闇がほとんどだったα125のダンジョンの全体が明るくなり、光に包まれる。

 大地に埋まっていたメルカバーα125が浮上を開始する。

 それと同時に、埋まっていた大地、荒れた世界に光が広がり、様々な場所で恵みの雨と生命の息吹が伝播していく。

 メルカバーα125は、本来の力。惑星維持機構を復活させた。

同時に惑星の上にいるドラグゼオンが細かく砕け散って、惑星へ降り注ぎ、惑星の再生を速める力となった。


 ◇◇◇◇◇


 オメガデウス・ヴァルヤが新たに創造されたメルカバーα125の動力炉、二基のゾディファールがある台座の場所へ着陸すると、後からライアス達も来て着陸する。


 オメガデウス・ヴァルヤからクロが降り立ち、二基のゾディファールの下にある、結晶の棺の前に来る。


 それにクロも機体ミカエルから下りて続き

「クロさん!」


 クロが結晶の棺を見つめて

「ロアデウスをこの子に構築し直した」


 ライアスが結晶の棺を見ると十歳程度の小さな女の子が結晶の棺で眠っている。

「この子が…元ロアデウスだったなんて…」


 クロが

「後は、この子がちゃんと育てられる環境を…」


 ライアスが

「任せてください。それは、ボク達が」


 メルカバーα125に侵入する多数の部隊。

 それがライアスとクロの元へ来る。

 幾つもの人型機動兵器がメルカバーα125の中心を囲み、数機がライアスとクロに銃口を向けて

「動くな!」

と、警告をする。


 クロ達は包囲された。


 クロが溜息を漏らして

「だから、面倒な事になるから…嫌だったんだよ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る