白夜 4話 遺跡の復活

 

 クロ達とライアス達は、ダンジョン内にあるセーフゾーンへ来る。

 セーフゾーンとは、モンスター達が集まらない場所で、ダンジョン探索者の休憩場所として使われている。

 元は、ダンジョンの中継部分だったらしく、モンスター達に残るダンジョン維持本能がそこを襲わないようにしているのだ。


 セーフゾーンである中継港のそこは、ライアス達とクロ達しかいなかった。


 クロとレナに、ライアス達四人と共に休息を取る事にして、ツルギとマリアが休息場所の施設の中から生産された食料を持って来る。

 マリアとツルギがライアスとファリナに配り

「はい、アナタ達も」

と、マリアがクロとレナに食事のパレット、施設の培養食品製造装置で作られたレーションを渡す。

 レーションのパレットをクロが受け取り

「サンキュー」

 レナはお辞儀して受け取る。


 ライアスが

「一緒にどうだ?」


 クロがレナを見ると、レナが

「わたしは構わないよ」


 クロが

「じゃあ、一緒に…」


 広場の空いているテーブルに全員で囲んで食事を取っていると、ライアスが

「アナタ達は、どうして…このダンジョンに?」


 クロが

「オレは、この子に呼ばれてな…」

と、レナを見る。


 ライアスの隣にいるマリアが首を傾げて

「呼ばれた?」


 レナが

「何処かの緑地に覆われた装置の場所でクロと出会ったの」


 ライアスが驚きを向け

「緑地化している場所があるのか?」


 ツルギが右腕の装甲を触りダンジョンの地図を出すと

「どこだ?」


 レナが地図を指さして

「ここ…多分…」


 ファリナが驚きの顔で

「そこは、高次元との接続装置がある場所だけど…もう装置は動かなくなっているはず…」


 ライアスが考えながら

「何かのショックがあって動かなくなった装置が動いて、その装置からの高次元の作用で、周囲が緑地化したのか…」


 マリアがライアスに

「もし、まだ…動いているとしたら…ライアス! 行ってみよう」


 ライアスが頷き

「ああ…それを使えば…」


 クロが

「高次元と接続する装置が欲しいのか?」

 

 その問いかけにライアス達が黙ってしまうが…ファリナが

「ねぇ、クロさん、レナさん…私達に協力してくれないでしょうか?」


 クロが顎を摩りながら

「内容次第だが…何をするつもりだ?」


 ライアスが真剣な目で

「もう一度、このダンジョンを、α125を復活させる。統制が執れた制御下に置いて…」


 ツルギが

「ここは、多くの遺産達が狩り尽くされている。残っているのは施設内のシステムだけ。だが…この施設内のシステムがフル稼働できれば…」


 マリアが願うように

「このα125がある惑星の環境を多くの生き物が生活できる環境に変えられる」


 クロが

「要するに、このα125がある惑星を救いたいからって事か?」

 

 ライアスが頷き

「その通り。察しが良くて助かる」


 クロが隣にいるレナを見て

「だとよ。レナ…どうする?」


 レナが静かに

「報酬次第…」


 ライアスが

「それなりの報酬は出す。手伝ってくれないか?」


 クロが

「報酬の内容は?」


 ライアスが

「重力子エネルギーが100GWと反粒子エネルギーが10Tで…」


 クロが悩む

 明らかに自分達の時の報酬感覚とは違い過ぎる。

 レナを横見すると、レナが暫し考えて

「質量化物質エネルギーも20GW」


 ツルギが呆れ気味に

「欲張りだなぁ…」


 ライアスが少し困る様子を見ると、レナがクロを見つめて

「クロは、昔…ここの施設で働いていた」


「え?」とライアスとファリナにマリアがクロを凝視する。


 クロが笑み

「オレは、五百年前の時空爆弾に巻き込まれてな。高次元へ行っちまって、そして…レナの呼びかけで戻れたって寸法さ。その時に、この施設…メルカバーα125を補給で使っていたから…な。色々と使っていたのさ」


 マリアが目を見開き

「タイムドライバー…初めて見た」


 ファリナがクロを見つめて

「じゃあ、この施設の具体的な構造や、動力関係の事も…」


 クロが頷き

「ああ…知っているが。それの事を鑑みても…ここが、なんでこんなにエネルギー不足な感じなんだ?」


 クロ達がいる休憩場所を含めて、周囲は暗い部分が多い。


 ツルギが

「さっき、ドラゴゾと相対したはず。それが原因の元だ」


 クロが訝しい顔で

「ドラゴゾって何? この施設には無かった存在だし、生体兵器は使用禁止で使われていなかったぞ。オレがいた五百年前は…」


 ライアスが真剣な顔で

「今から三十年前…このα125の遺跡ダンジョンの中心に放たれた侵食生体兵器、ロアデウスの端末がドラゴゾです」


 クロが首を傾げて

「何? ロアデウスって何だ?」


 マリアが

「オメガデウスを生体兵器化したモノです」


 クロが驚きと呆れの顔で

「えええ…そんな事できるの?」


 ライアスが

「ロアデウスの技術は、アースガイヤという別時空の産物なんですが。それの技術が色んな場所に横流しされて…それが使われて…悪意ある人物によって、ここに使われて。今ではそれが原因で、このα125が廃棄される予定に…」


 ツルギが

「ロアデウスが取り憑かなければ、ここは潤沢な遺産資源で賑わっていた。有数のダンジョンのだが…」


 ファリナが

「ロアデウスが取り憑いた結果、このような閉鎖寸前で明日にでも廃棄封鎖される状態になっています」


 クロが考えながら

「そのロアデウスってのは倒せないのか?」


 ライアスが困った顔で

「それが倒せないから、別の動力をバイパスして、ここを復活させようとしているのですが…」


 クロがそれを聞いて、考える。

 ロアデウス…アースガイヤという時空の産物か…

 もしかして…


 クロが考え事をしていると、レナがクロを見つめて

「クロ、何か…あるの?」


 クロが

「そのロアデウスってヤツ、見に行ってもいいか?」


 ライアスがファリナとマリアに視線を合わせた後に

「別に構いませんが…でも、倒せませんよ」


 クロが

「一応は、見て置きたい。それだけさ」


 ライアス達がどうしようか?と迷っているとツルギが

「良いんじゃないか? この二人が乗っている機体、オメガデウスなんだから」


 ライアスがハッとして

「オメガデウスなんですか!」


 クロが頷き

「ああ…オレとレナしか動かせないな…」


 ライアスが

「分かりました。遠巻きに見るだけですよ」


 こうして、このダンジョンの中心に生息するロアデウスという存在を見に行く事になった。


 ◇◇◇◇◇


 クロはレナと共にオメガデウス・ヴァルヤにライアスを乗せて、遺跡ダンジョンの中心へ向かうと…

 そこには…

 巨大な黒い円柱が見えてくる。

 

 操縦席にいるクロが鋭い顔をになり

「まさか…動力炉全体を覆っているとは…」


 クロとレナの並ぶ操縦席の間に座るライアスが

「あそこに動力炉があるのを知っているんですね」


「ああ…」とクロが頷く。


 オメガデウス・ヴァルヤは、巨大な黒い円柱、ロアデウスに侵食されたα125の動力炉から数キロくらいの距離を保って飛行する。

 見つからない為に…


 クロが黒く覆われる動力炉を凝視していると…黒い柱の動力炉の全体が翼のような鱗を立ち上げる。

 その翼の一つ一つがドラゴゾだ。


 クロがそれを見て

「なるほど、これじゃあ…別の動力炉をって話になるわ」


 ライアスが

「はい。なので…」


 クロが

「だが、別の動力でここを維持しようとしても…ムリだろうな」


 ライアスが

「クロさんが来た高次元装置なら…」


 クロが渋い顔で

「緑地化している場所の規模を見れば、分かる。この施設全体やα125がある惑星を支えるなんてムリだ」


 ライアスが悲しい顔で

「じゃあ、もう…方法はないんですね」


 クロが顎を摩り

「無いわけじゃないが…でも、付け焼き刃だしなぁ…」


 ライアスが驚きの顔を向けて

「方法があるんですか?」


 クロが

「ロアデウスがアースガイヤ産の技術で出来た生体兵器だって事が重要なのさ」


 

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