第48話 頼んで
ナニコのことは気になるが、特にその後、話題にするでもなく、ナニコ本人とも何事もなかったかのように生活し続けて一週間が過ぎた。
その間もファイ子はエネを取り戻そうと試みては失敗して、俺にベタベタと触ってきた。二度ほど、俺の夕食に怪しい錠剤が混入していたが、ナニコが気付いてすぐに箸で取り出しゴミ箱に捨てていた。
土曜の夜のことだ。ナニコはいつものように俺の部屋で背中丸めてヘッドホンをつけ、ゲームをしている。俺は勉強と筋トレを黙ってしていると、扉が開いて制服姿のチリが泣きそうな顔で入ってきた。後ろには爺ちゃんも難しい表情でついてきている。
「どうした?」
尋ねると、爺ちゃんが
「チリちゃんのお父さんが東北の高速で事故に巻き込まれた」
「えいなりいいいい」
チリは俺に抱きついてきて大泣きしだした。
ナニコはゲームをしたまま
「やんないよ」
と言う。爺ちゃんはナニコの横に座ると難しい表情で
「不平等だとは思うが、えいなりの周りには幸せが溢れていて欲しいんじゃ」
「私、幸せじゃないよ」
「それは、ナニコが探していけば良い」
「……」
ナニコはその場から跡形もなくきえた。俺とチリが戦慄していると、爺ちゃんは苦渋の表情で
「婆さんに医者を操って貰ってもたせてみるか……えいなり、悪いがファイ子さんに頼んでナニコを探してもらえんかね?」
「……?」
「チリちゃんのお父さんを救うためじゃ」
良く分からないがチリのためならと頷くと、爺ちゃんはうなずき返して出ていった。
少し、考える。ファイ子を呼ばないと?
ああ……これしかないなあ。俺は部屋の扉を閉めると涙目のチリに
「俺の男性ホルモンを上げて、ファイ子を呼びたい。キツイなら一人でするけど」
チリは気丈にも頷いて、黙ってベッドで制服を脱ぎ始めた。正直、こんな状況で興奮するほど鬼畜ではない。でも、これなら一発でいけるはずだ。俺も制服を脱いでベッドに入ると下着姿のチリを抱きしめた。
そして柔らかい身体を触り始めると、次第に頭がボーッとしてきて、チリと口づけしていた。
「えいなり、安心する……」
「チリ……」
俺が下着の中に手を入れようとしたときだった。
シュイイイイイイインン
前も聞いたワープ音が室内に閃光とともに響き渡る。
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