第46話 さっぱり分からん
爺ちゃんと一階仏間に布団を敷き、爺ちゃんがナニコおばさんを背負ってきて寝かせる。
俺は家族で軽く夕飯を食べたあと、自室に戻って、勉強、筋トレ、寝る準備を済ませて寝た。両親はナニコに関して特に気にもしていないようだった。
翌朝、朝食時にナニコは起きてこなかった。俺が仏間に様子を見に行くと、布団をぐちゃぐちゃにして白い腹とヘソを出しながら仰向けで寝ていた。どう見ても五十に見えない。布団をかけて、高校へと向かおうと玄関を開けた瞬間にファイ子から抱きしめられた。
「……出てくるの早くない?」
「気になってることがあってえ……」
ファイ子はそう言うと、敷地内端の蔵の方に手を引いていく。蔵の裏の裏山に面している場所では全裸のエネが必死の形相で、武術の形のようなことをしていた。俺と蔵の端に隠れたファイ子が
「連れ戻したいんですけどお。全裸なのは何とか許容しますー」
「無理だろうなあ……」
話していると
「あーえいなりーみちゃだめだよー。あの人女の子じゃんー」
ナニコの声がしていきなり目隠しをされた。
ファイ子が驚いた声で
「……ネーゲアゲストラーモ」
ナニコは俺の両目から手を離すと
「……えいなりの彼女ー?」
ファイ子は震えながら俺に抱きついて
「フィアンセですう!」
と声をあげた。驚いたエネが駆け寄ってきて
ナニコも慌てて俺の両目を前から手で覆った。
なんだこの状況、朝から何なんだ。高校に行かせてくれ。あとフィアンセじゃねええ!!と思っていると
ナニコが悲しそうな声で
「うーみんな、付き合ってる……何で私は」
と言って、次の瞬間には気配が消えていた。
両目を開けるとナニコは跡形もなく消えていた。
ファイ子がその場にしゃがみ込み。エネが心配そうに背中をさすりだし、耳元に何か囁くと、すぐにファイ子は落ち着いてきて
「事情はわかりましたあ」
スッと立ち上がるとまた抱きついてきて
「もっと好きになりましたー」
と言うと、俺の手を引いてうちの敷地外に出ていく。エネはまた蔵の裏に戻っていった。
……何なのかさっぱり分からん!……けど、もういいや……登校さえできれば……。
電車の中や、歩いている最中、ファイ子は男性ホルモンを下げる注射や薬について延々と医学的なさっぱり分からん学術的な説明をしながら、とにかく俺へのボディタッチが激しかった。
「いや、そんなにホルモン上昇が気になるなら、触らんかったらいいだろ」
と言っても首を横に振って
「あとで下げればいいだけですー」
と言いながら、うっとりした顔で右手の指を1本ずつ触っていく。会話も成立してないし
何かおかしいな。と思いながら触られながら歩いているとチリが猪のような勢いでかけてきて
「おいっ!寂しいからって通学路でえいなりを触るな!」
そうか寂しいのか。そういうことかとようやく理解していると、ファイ子は余裕顔で
「フィアンセだからいいのですうー」
「えいなりも否定しろっ」
「はっきり言ったらこいつ泣くだろ……」
チリに困り顔を向けると、少し唸りながら考えてから
「じゃあ私も触る!!ファイ子の上をいくテクで天国を見せてやる!」
とアホな結論にたどり着いてしまった。
さっそく頬を赤らめてはーはー言いながら股間やら尻に手を伸ばしてきたので、俺はその場から全力で逃走するしかなかった。
ほんと朝から何なんだ……勘弁してくれえええ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます