第33話 参拝
外は真っ白な通路がまっすぐ左右に続いていた。
「私、メルチンと言いますー。このセンターの副管理長ですのよ‐」
ゴスロリ服の大男は胸に手を当てると丁寧に挨拶してきた。
相変わらず何も着ていないエネはキッと睨んで横を向く。メルチンは苦笑いすると
「先輩は、エネ・マ・イカと本名は申しまして、有名な神官家の出身です。そしてですね、我々日本移住組の基準では、超がつくほど美形なので、王族のお側付きになりましたー。カプセルのバグで極稀に生まれる見た目なんですよー」
エネは涙目になり、全身を真っ赤にして
「勝手に紹介するな!あとまるで私がコネと見た目だけで警護官をやっていると言うんじゃない!公正な審査の末だ!」
抗議するが、メルチンはニヤニヤして答えずに、聞いた俺達は事情が飲み込めてしまった。そして俺は何となく嫌な予想が出来つつある。もはや聞きたくもないが。
窓の無い白い通路歩いていく。
メルチンは大きな扉の前で立ち止まり
「エネ警護官と、連行されてきた地球人3名参拝」
と言った。横滑りで扉が開き
その広い中は、無数の桃色の泡が舞い、虹色の巨大なスライムたちが床や壁をウネウネと動き回っていた。メルチンは俺たち四人が入ると
「では、私は待ちますので」
外から扉を閉めた。
すぐにスライムたちはエネを飲み込んでは吐き出して別のスライムが飲み込んでという行動を始めた。爺ちゃんは興味深そうに
「情報摂取と伝達しとるな」
飲み込まれたエネは口を半開きにして恍惚の表情をしている。スライムたちは俺たちにも恐る恐る近づいてきて、申し訳無さそうに触手を伸ばしてきた。
俺が人差し指でチョンッと触れると、すぐ引っ込めて、今度は爺ちゃんに伸ばしてきた。
爺ちゃんは右手で触手をガッと掴むと
「はいはい、孫が世話になっとります。あーわしは、農家をしとるしがないジジイですわ。すんませんなあ、全部は教えられんのです」
というと、パッと手を離し
「体を持たぬ意識集合体から話しかけられたわい。ファイ子さんを頼むとのことじゃ」
俺とチリが頷くと、ちょうどエネがスライムからペッと吐き出されて戻ってきた。
ヌルヌルの体でふらつきながら
「さ、参拝終わり!」
と扉に向かって言う。
自動扉が開くと、メルチンは黙ってエネにバスタオルを差出し、さすがに今度は受け取られ、エネは体を拭きだした。
メルチンは明後日の方向を向きながら
「あーカードキー3枚ほど何処かに落としたわー。あれあると地下までフリーパスなのよねえ」
と言いながら、チラチラ足元を見る。
爺ちゃんが風のような動きで落ちていた白いカード3枚を拾うと
「今から尋問のために拘禁室まで連行します。先輩、罪状は何でしたっけー?」
エネは身体を拭きながら固まってしまった。考えていなかったらしい。メルチンが苦笑いしながら
「軽度他次元干渉罪でしたよねー。勾留半日その後記憶抹消ってとこね。じゃあついてきてねー」
通路を先ほど来た方と反対に歩き出した。スムーズすぎて拍子抜けしつつある。
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