第13話 アルハルファデパート

アルハルファデパート、この変な名前のデパートが建てられたのは九十年代前半のこと。

アルハルファという、県内企業が建てて、立地は良かったのに、一切流行らずに5年ほどで撤退した。その後、謎の企業が名前ごと買い、客が入っていないのに、未だに営業が続いていると不気味がられていたが

「異星人の拠点だったのねっ」

チリが商店街の外れにあるくすんだ5階建ての横広なビルを見上げて言う。


トイレ用品や庭具などのワゴン品が並ぶ一階入口から入っていく。

ギラギラした化粧品売り場を横目にエスカレーターに乗ったファイ子についていく。

そのまま5階まで上がると、寂れたゲームコーナーだった。

たぶん九十年代に流行った古い格闘ゲームやもっと前のアクションゲームの筐体が並び、向こうにはエアホッケーや、クレーンゲームも見える。もう夕方だが当然のように客は居ない。

ファイ子は、両替機に硬貨を入れてメダルと変えると、それを握ってまっすぐにプリクラ撮影機に向かった。

そして、撮影機に硬貨をいれるとボタンを押し

「入ってくださいー」

と俺達を撮影機の中に引っ張り込む。

身体全体がグニャッと歪んだ感覚があって、次の瞬間には、3人だとさづがに狭い、この撮影機内が青みがかった白黒の色に変わった。

「な、なんだこれ」

ファイ子はホッとした表情でキャスケットを脱ぐと

「3.5次元ですよー」

と外へ出ていく。俺とチリも出ると

青みがかった白黒のゲームコーナー内は奇抜な格好をした色とりどりの人々で溢れていた。


輪郭がぼやけたセーラー服の女子がこちらに興味深そうに近づいて来て、何か話そうとした瞬間に消えた。

「2004年9月26日17時4分ですかあ」

ファイ子が感慨深い表情で言ったので

チリと首をかしげていると

「今の思念体の出現時刻ですよお」

「今2007年だけど……?」

ファイ子は賑わっている辺りを見回して

「存在できなかった可能性が姿をもった存在も混ざっていますよー」

意味不明なことを言ってきて、俺たちは余計わからなくなった。

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