第2話 俺とレベッカの家族
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?!?」
俺は思わず叫んでしまうが周りは馬車の事故に気を取られていたようであまり悪目立ちはしていない。
それに幸いこの事故でのけが人は出ていないようだ。
ってそんなことよりも!
さっき頭の中に流れ込んできた声はなんだ!?
レベッカを包んだ魔法陣の光が何かしら関係しているのかもしれない……
「レベッカ、少し首を見せてくれ」
「へっ?」
俺はレベッカの返事を待たず顎を優しく掴んでクイッと上に持ち上げる。
レベッカの首には異様な紋章が入った首輪が付いている。
その紋章と首輪はとても見覚えのあるものだった。
(
俺は今、目の前で起こった事象が理解できず頭が混乱する。
前例のない事態が今まさに目の前で起こってしまっている。
考えるだけで頭が痛くなってきた。
「ちょ、ちょっと!いつまで触ってるのよ!」
思考に没頭していたせいで顎を掴んだままだったのが我慢ならなかったのかレベッカが俺の手を振り払う。
いつもならこれくらいで大袈裟に怒り過ぎだろう、と思うだろうが今俺の頭には別の声が流れてきていた。
『顎をくいってされちゃった……!本当はもっとされたかったけどこれ以上は私の心臓が爆発しちゃう……でももったいないことしちゃったかなぁ……』
だいぶコメントし辛いことを言っていた。
というかこれ本当にレベッカの心の声なの……!?
態度と思ってることが違いすぎじゃない!?
「お野菜は……大丈夫みたいね」
『お野菜が無事でよかったぁ……これで美味しいお夕飯を作らなくちゃね。ライアン、美味しいって言ってくれるかなぁ……』
顔は真面目に野菜の状態を確認しているようにしか見えないんだけど……
逆に本当にこれが心の声なのかわからなくなってきた。
使役はテレパシーでコミュニケーションが取れるようになる魔法だけど俺の思考がレベッカに伝わっている様子はない。
でも響いてるのは本人の声なんだよな……
「どうしたの?そんなに難しそうな顔をして」
『ライアンどうしたんだろう……まさかどこか怪我してるとか!?』
「い、いや。ちょっと考え事をね。それよりもレベッカ、どこか体に異変とかない?」
「異変?大丈夫よ。どこも怪我してないし違和感も感じないけど……首輪みたいなのが急に現れたくらいかしら」
『私の心配してくれるなんて……やっぱりライアンは優しいなぁ……』
うん、ギャップ差がありすぎて意味がわからなくなってくる。
まあレベッカに怪我がないならいっか。
面倒くさいことは後で考えるとしよう。
「その首輪は害は無いはずだよ。とりあえず帰ろうか」
「何か知ってるなら後で教えなさいよね」
俺は面倒事を先送りにして帰宅することにした。
再びレベッカと並んで歩き出す──
◇◆◇
「ただいま」
「お邪魔します」
俺とレベッカは15分ほど歩き家に戻る。
といっても今日はレベッカの家で集まって食事会をする日なので俺もレベッカの家にお邪魔する。
「あら、おかえりレベッカ、ライアンくん」
出迎えてくれたのはレベッカのお母さんであるレイラさん。
レベッカのような白いツヤツヤな毛並みとレベッカとは違い髪を腰くらいまで伸ばしている優しげな目元が特徴的な人だ。
俺も昔からよくお世話になっている。
「こんにちは、おばさん。今日はお邪魔します」
「あらあらそんな他人行儀にならなくてもいいのよ。気軽にレイラお義母さんって呼んでくれると嬉しいわ」
「ちょっとお母さん!」
『そんなの私とライアンが夫婦ってことじゃない!嬉しいけど……お母さんに言われるのは恥ずかしいよぉ……』
レベッカが心の中と口で文句を言っているがおばさんは慣れているためなんのその。
全く動じている様子はない。
「考えておいてね?ライアンくん。ライアンくんにならうちの娘あげちゃうわよ」
「なっ……!?」
「はは……」
そう言っておばさんは家の奥に消えていった。
おばさんの破天荒ぶりに俺は苦笑いを浮かべることしかできない。
でもレイラさんはこれがデフォルトなのだ。
気にしていたらきりがないので俺達もおばさんに続いて家の奥へと行く。
後ろのレベッカが可愛らしく頬を膨らませていたのは見なかったことにしよう。
口に出すと絶対怒られるし。
「おっ!二人共帰ってきたのか。おかえり」
「おかえりなさい」
「二人共おかえり。ライアン、荷物置いたらこっち手伝ってくれ」
レベッカのお父さん、俺の母さんと父さんに次々とおかえり、と言われる。
俺は父さんの要請に応えるべく荷物を置いて手を洗うと父さんが担当していた肉の下ごしらえを手伝い始める。
「どうだった?今日のレベッカちゃんとの買い出しは」
「まあ概ね平和だったよ。と言いたいところだけど馬車の事故に巻き込まれかけた」
「「「えっ!?」」」
あんまり俺は大きな声で言ってなかったのだが親たちは耳聡く聞きつけ俺に詰め寄る。
でも何もなかったと言うと後から親を心配させてしまうかもしれないからここで一気に説明できるのはちょうどいい。
「大丈夫なの!?二人共どこか怪我してない!?」
「大丈夫だよ、おばさん。俺達二人共怪我してないから」
「ライアンが転びかけた私を守ってくれたの。お陰で無傷よ」
レベッカが横から補足説明を入れる。
俺としてはわざわざ言うつもりはなかったのだがレベッカは有耶無耶にする気はなかったらしい。
おばさんは目を輝かせ、おじさんは俺にしきりに感謝を伝え、母さんはニコニコと穏やかに笑うだけ、父さんは機嫌良さそうに豪快に笑って肉の付いた手で触ってこようとしてきたので丁重にお断りした。
なかなかにカオスな状況である。
「それじゃあ今日はライアンくんへの感謝も込めて夕飯は豪華にしましょう。ね?レベッカ?」
「まあそうね。私としても異論はないわ」
『ライアンに美味しいって言ってもらうために頑張らなくちゃ……!』
「はは……ほどほどでいいからね?」
こうして夕飯作りがスタートする。
ハーディ家とホワイト家が一緒に食事をするときは大抵一緒に作る。
こんな大所帯だとキッチンに入り切らないのでテーブルで作業する人も出てくるけどできるころは結構あるのだ。
食べる人数が多い分、作る人数も多いほうが効率もいいしね。
「あら?レベッカそれ……首輪?」
そんなとき、キッチンで調理をしていたおばさんがレベッカの首輪に気づく。
みんなの視線がレベッカの首に集まる。
「これ?これはライアンのまほ……ムグッ……!?」
「俺がレベッカにあげたチョーカー!最近若者の間でこういうのが流行りなんだ!」
レベッカの口を手で塞いで食い気味に言う。
ここでまさか俺の魔法のせいで付いた、なんて話をしたらテイムの話までしないといけなくなる。
まさかレベッカの両親に『あなたの娘さん使役しちゃいました。テヘ』なんて言えるわけがない!
どうやら誤魔化しは成功したらしくお熱いね、なんてからかわれたけどそれ以上の追求はなかった。
「ごめんよ、レベッカ。急に口を塞いじゃって」
「べ、別に良いわよ……」
『ライアンの手が私の唇に触れてた……!あれ?でも私達キスしてるんだっけ……?』
レベッカの心の内は相変わらずだった。
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昨日の日間は29位!(告知をほぼしなかったからちょっと低め)
砂乃自身の知名度は低いのでこれから頑張っていきます笑
すごい人とか一日目で☆100超えてるもんなぁ……
☆とフォローぜひよろしくお願いします!
それだけで砂乃のモチベはバク上がりします笑
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