第21話 英雄の力

 狼魔族コボルトは1匹350リン、狼魔族の剣士コボルト・ソードマンは1匹500リンで売れた。狼魔族の剣士コボルト・ソードマンはボスモンスターなだけあって魔石が出てきたが、使い道のないものだったため、売却しておいた。


 ーーーーーー

【嘉六のステータス】

 名前:嘉六

 レベル:7

 称号:【天空竜の祝福】

 体力:40/40

 魔気:7/7

 筋力:11

 速力:11

 知力:6

 能力値+0

 お金:10430リン(+3350)

 ルーン:仮初1不明2

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 お金がちょうど1万を超えている。これは思い切ってルーンの鑑定をして貰うのがいいんじゃないか。また金欠になる。レヴァナントを素手で倒せることを考慮すれば武器はまだいらない。お金はお魚周回をすればいいだけのこと。


「すいません、ルーンの鑑定ってできますか?」

「いいですよ……ルーンってなにかミーティアから聞いてますよね?」

「わかりません」


 リックは頭を抱えていた。


「……ルーンには特別な力が封印されています。この鑑定でその力がどんな力なのかを調べることができます。回復や浄化をできるものがほとんどですが、極稀にですが英雄の力を宿したルーンが存在します」

「英雄ですか?」

「はい。ですから鑑定していないルーンがありましたらこちらに持ってきてください。もちろんその分のお金はいただきますが」


 情報は簡単にくれるが、そこから商売につながるところが冒険者ギルド、なかなか悪いやつだ。買取金よりも高い金で売ってるんだ。なんて嫉妬も芽生えるが、結局のところボクには販路がない。売れなければゴミも同然。売れるなら冒険者ギルドに売るよねって結論になる。


「名前のないルーンは鑑定するのはわかりました。この仮初のルーンは鑑定は必要なんですか?」

「いいえ、仮初のルーンは鑑定は不要です。それは万能のルーンとも呼ばれるものです。願いを形にするルーンとも言われてます。詳しくは上位の冒険者に聞くといいですよ」


 仮初のルーンは即座に使用できるルーンだった。なにも考えずに使用しなくてよかった。外で待っている蒼汰やクルシュに聞くのがいいだろう。


「じゃあこれの鑑定をお願いしていいですか」

「はい、いいですよ。少しお待ちください」


 リックは戸棚からルーペを取り出し、白い手袋をはめた。ルーンに光を当てて本格的に鑑定し始めた。宝石の鑑定をするようにじっくりと調べている。


「ふむ……これはmか?なるほど…これは、自己のルーンか」


 真剣に鑑定していたリックは、ハンカチで汗を拭うとループを置いた。


「鑑定が完了した。こちらは自己のルーンでした」

「自己のルーン!ってなに?」

「ですよね。自己のルーンは英雄の力を秘めたルーンです。おめでとうございます」

「わ、わーい」

「詳しいことは上位の冒険者に聞いてください」


 核心的なことは聞けなかった。これで名前が判明したルーンが2つになった。依頼掲示板が気になっているが、それよりもルーンがどのようなものが知りたい。まずは蒼汰とクルシュに聞くことにした。


 冒険者ギルドを出ると、蒼汰とクルシュが談笑していた。足音を聞いてふたりはこちらを見て手を振ってきた。


「話は終わったようだな」

「うん。そのことでクルシュに聞きたいことがあるんだ」

「ん?何でも聞いてくれ」

「仮初のルーンについて聞きたい」

「仮初のルーン、万能のルーンは何の力にでも手に入れることができる。ああ、もちろん1つだけだ。それでも自由に選べるのは強い。ちなみに俺は静寂のルーンを選んだ」


 クルシュは何もないところに手を伸ばして握った。その瞬間、氷のエフェクトが発生して握った先から氷の刀が出現した。刀を振るうとキラキラした氷の粒がパラパラと落ちていった。


「静寂のルーンは侍の力を宿したルーンだ。レベル1で刀を生み出す力を得る。他にもあるがこれが一番良く使うルーンの力だな。蒼汰のも見せてやったら?」

「いいですよ。僕は2つのルーンを併用して使ってます。これが僕のルーンです」


 蒼汰は右手を空に向け、左手を地面に向けた。すると、左手から棘がついた蔓が伸びて斧に変化し、右手には光が集まり剣に形態変化した。


「斧は棘のルーン、狂戦士の力を宿してます。剣は神聖のルーン、聖騎士の力を宿してます。僕もクルシュも接近戦を得意としてるんで、こんな物騒な構成になってます」

「ルーンっていっぱいあるんだ」

「そうなんですよ。このルーンってルーン文字から創られてるから20以上はあると思いますよ」

「うわっ……そんなにあるの?めちゃくちゃ迷うな。ちなみに自己のルーンってどんな力が宿ってるか知ってる?」

「知らないルーンだ……」

「俺も聞いたことない」


 蒼汰もクルシュも知らないルーンだった。使った瞬間呪われるものだったらどうしよう。使うか迷っていると、蒼汰が肩を叩いた。


「迷いますよね。けど安心してください。ルーンには外れがないから大丈夫ですよ。僕もこういうの引いたんですけど、これって使わなかったら効力発揮しないんです。だから覚えることで損は発生しません」


 蒼汰が見せてきたのは棺だった。見るからに怪しい雰囲気を醸し出している。これがどういう効果があるのか、蒼汰は未だにわかっていないとか。


「これに入って寝たらリスポーン地点を変えれると思ったんですけど、そんなことはなく普通に宿屋のベッドで起きました。訳わかりません」

「なるほど……」

「だから使ってみてください。そして良い物だったら教えてください!」


 蒼汰は期待するような目で見てきた。悪いものではないなら使ってみる価値はある。


「で、どうやって使うの?」

「食べません。使用するって願ったら使えます」

「こうか?」


 なんだ、食べないのか。自己のルーンを握って使用してみる。ルーンがふっと消えると同時に白紙の本が出現した。白紙の本に自己のルーンの詳細なデータが刻まれていく。そこに書いてあったのは、自己のルーンが仙人の力を宿しているということ。そしてレベル1で使えるのは腕輪の型だった。


「自己のルーンは仙人の力を宿してるみたいです。腕輪の型?ってのを使えるんですけど、なぜか発動しないです」

「うおお、仙人!使えないのはアレですね。魔気以外に振り分けてないからですね」

「魔気以外?」

「魔気以外は習得してないですか?」

「うん」

「習得するのは簡単です。ルーンの力を得ると自然に使えるようになります。なので自己のルーンのおかげでステータスに闘気の項目が追加されてませんか?」

「あ、本当だ」

「音声認識でもできますが、今回はマニュアルで。ステータスにある魔気を−1して闘気に+1してください。それで振り分けられると思いますよ」

「あ、本当だ!すごい!」


 ーーーーーー

【嘉六のステータス】

 名前:嘉六

 レベル:7

 称号:【天空竜の祝福】

 体力:40/40

 魔気:5/5(−2)

 闘気:2/2(+1)

 筋力:11

 速力:11

 知力:6

 能力値+0

【ルーン】

 仙人 闘気(自己のルーン)

 レベル1:腕輪の型

【所持品】

 お金:430リン(−1万)

 ルーン:仮初1不明1

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 これで腕輪が発動できる。試しに1だけ込めて発動してみる。手首の近くに小さな珠がくるくると腕を中心に回転し、その軌跡を光の線で繋がった。腕輪にも色々種類があるが、ブレスレットっぽい。


「これが腕輪かな?」

「不思議な武器ですね」

「おしゃれか?」


 蒼汰もクルシュも不思議そうに腕輪をじーっとみつめる。太陽を中心にくるくると廻る小惑星みたいだ。なんだか可愛らしい。


「仙人のルーンでしたっけ?ちょっと腕輪をつけた手で肩を押してみてもらえませんか?」

「危なくないかな?」

「死んでも宿から帰ってくるんでお願いします」


 お試しで蒼汰の肩を叩く。すると腕輪の周りをくるくる廻っていた珠が消えた。蒼汰を見るとなにも起きてる様子はなかったが、さっきと違う点は叩いた肩で珠が廻っていることだけだ。


「うーん、ダメージはないみたい?」


 平気そうにしているが、ボクとクルシュはあることに気づいた。


「ん?どうしたの、ふたりして?あれ、僕移動してる?というか浮いてない?」


 蒼汰は徐々に後ろへ移動していた。最初の頃は慌てていたが、すぐに慣れてキャッキャとはしゃぎ出した。もう状況に適応したらしい。


「あれどこまで行くんだろう」

「さぁな」


 どこまでも遠くに飛んでいく蒼汰をボクとクルシュは眺めることしかできなかった。

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