形の無い愛
天川裕司
形の無い愛
タイトル:形の無い愛
イントロ〜
あなたには今、愛する人が居ますか?
その人のどこを愛して居ますか?
こんな事を言えば「どこなんてそんな問題じゃない!」
と怒る人も居るかもしれませんが、
でも結局はそう言う事だと思います。
外見と中身、リアルと過去、フィクションとノンフィクション…
その境界線は、いろんな形容で区切られるでしょう。
その境界線を愛をもって越えた人が、今日も又
その人なりの幸せに辿り着けたようです。
メインシナリオ〜
ト書き〈ベンチ〉
あの男の人はいつもベンチに座って、ああして隣に誰か居るように話しかけ、
その話の要所で肩を抱いたりしながら、他人にはまるでパントマイムのように見えていた。
何やってんだろ?…こうなるのが普通の光景。
でもその人はやめない。ずっとそれを何年も繰り返してる。
(或る日)
その男の人に或る日、1人の女性が近づいた。
ヒカリ「その方の事、まだ追ってらっしゃるんですね」
伊育「ええ、わかりますか?はは、こんな話のわかる人と出会えると、やっぱり嬉しいもんですね♪」
2人のそんな会話から、2人の名前を知ることができた。
女の人は夢野(ゆめの)ヒカリさん。そして男の人は多和練 伊育(たわれ いすく)さん。
2人とも古い知り合いかと思ったが、別にそうでもなかった様子。
でも、親しみのある交流が続き、
その光景をずっと傍らで見ていた私にとっても、
そんな交流が少し羨ましく思えたものだ。
ヒカリ「その人、あなたが愛した人だったんですね?」
伊育「ええ。この上なく、愛した人でした」
ヒカリ「では、その人に会いに行きますか?」
伊育「え?出来るんですかそんなこと?」
ヒカリ「あなたが信じれば、何でもできますよ?」
伊育「じゃあお願いします」
信じられない事だったが、伊育さんは普通にそう言ってお願いしていた。
そしてそれを承けて、ヒカリさんも普通に応えていた。
ト書き〈伊育目線で〉
依子「あなた、お久しぶり♪やっと会えたわね。この世のしがらみ、越えることができたみたい。私の外見より、中身を愛してくれて有難う」
伊育「よ、依子…!お前、本当に依子なんだな…!依子ぉ!いやぁ会いたかったぞぉ!!」
彼女の名前は依子(よりこ)さんと言うらしい。
ヒカリ「フフ♪良かったですわね」
伊育「ええ!本当に有難うございます!…あ、あの」
ヒカリ「はい?」
伊育「こんなにしてもらって、こんな事を言うのも何なんですけど…でも、ずっとこの先、彼女と一緒に居る事はできないでしょうか?」
ヒカリ「できますよ?そうしたいのですか?」
伊育「え?できるんですね!?ええ、ぜひそうして下さい!!お願いします!」
ヒカリ「でもそうしますと、あなたはもう普通のご結婚はできないですよ?その方の魂をここに留めて置くという事は、その責任を取り、あなたは今後一生、その余生を懸けて、その方と添い遂げなければなりません」
少し考えた伊育さんは…
伊育「…ええ、それでお願いします」
と答えた。普通ならかなりの難問になる事だ。
ヒカリ「わかりました、ではそうしましょう」
ト書き〈数年後〉
それから数年後。彼はまだあのベンチに座り、同じように誰も居ない隣の席に語りかけ、
肩を抱くような素振りまでして、ずっと笑顔で居る。
(ヒカリ目線で)
ヒカリ「魂を呼び寄せ、彼の目の前で具現化してあげたのは、彼の過去の恋人、もう亡くなった依子さん」
ヒカリ「彼女の姿は彼にしか見えない。彼女は生前、それなりに女性の美貌を気にしていた。つまり外見を気にしていたが、彼はその彼女の中身を愛していた。外見(かたち)がどう変わろうと、彼女を愛すると」
ヒカリ「それがはっきり立証されたわね。外見はもとより、その中身まで無くした彼女でさえ、彼はその心の想像により具現化し、彼女の存在を愛したんだから」
そのベンチは依子さんの生前、2人がよく来ていた場所だと言う。
思い出の場所。その場所が彼女を形作り、そのぬくもりを彼の心に与えていたのか。
エンディング〜
出来ればこう在りたいものですね。それでは又。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=HvABzl-NS0g&t=67s
形の無い愛 天川裕司 @tenkawayuji
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