最終話 帰郷

 それからというもの、闘いを見ていた朱鬼と蒼鬼の助力もあって、二本角族は夕の傘下へと入り、一本角族と和解する流れとなった。


焼かれてしまった桃の巨木は、夕と一緒に神通力の雷に打たれたことで、再び命が芽吹いていた。


 そうして鬼ヶ島は、千草と夕の統治のもと、仙人と鬼とが共存する島となって、今現在も彼らの子孫が桃の結界の中で豊かに暮らしているという。



「おじいちゃん!おばあちゃん!行ってきます!」


ここに、鬼ヶ島へ向かう子供が一人。

胸元には桃の首飾りが揺れている。


“さすがは鬼の子、成長も早いのぉ。“

「気をつけて行くんじゃよ。」

声をかけたのは変化の術で人間に化けている一本角族の長老である。


「ほれ、吉備国の名物のきびだんごじゃ。道中腹が減ったら食べなさい。」

鬼ヶ島での戦いから戻った千代婆も一緒だ。


「ありがとう!」

子供は二人に手を振り颯爽と駆け出した。



人は彼を桃太郎と呼んだ。



表向きは鬼退治という名目であったが、これがただの里帰りであったのは、知る人ぞ知る話である。


めでたしめでたし。




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