17.大会経過

剣術大会は間に1日休みを入れた5日間に渡って開催される。


初日は参加者200人の総あたり戦で、100試合。

これはさすがに一試合ずつやっていては終わらないので、5組ごとにまとめて行われる。

まとめてなので、隣の試合とかち合ったり、弾き飛ばされた試合用の刃を潰した剣が乱入してきたりするが、それも含めての試合だ。強い者は何だかんだで勝つ。


2日目は初日を勝ち抜いた100人で50試合。

やはり、一試合ずつはやってられないので、3組ごとにまとめて行われ、更に勝ち抜いた50人の試合も2組ごとにまとめて行われる。


ここまでは、観戦料も安く、観客席にも空席がある。観客は贔屓の騎士以外の試合はのんびり横目で観戦する。


そして1日の休息を挟んでの4日目。

雰囲気が変わるのはここからだ。

4日目は、勝ち抜いてきた25人に、シード枠の6人と調製枠の1人を加えた32人で行われる16試合と、それを勝ち抜いた16人での8試合が行われる。リンはここからの参加だ。

試合は1組ずつ行われる。


この4日目からは観戦料も上がり、一気に観客達の熱も入る。

対戦するのは、ここまでを勝ち抜いた強者達に、シード枠の団長達なのだ。剣の打ち合いはぐっと厚みを増し、人気の騎士同士の組み合わせも多い。

貴族席も一般席も満員となっている。


試合を行う騎士の名が呼ばれて、入場すると歓声が上がり、黄色い声援が飛び交う。


リンも、入場すると大歓声で迎えられた。

初戦の相手は、ベンジャミン・ユルムだった。ここまで勝ち上がってきたということは、なかなかの腕前だったようだ。

もちろん手加減なしで、三手様子を見た後は、四手目で勝利を決めた。


二戦目は準々決勝となる。

相手は予想通りファビウス。

2人が見えると、会場をより大きな黄色い歓声が包んだ。

ご婦人方に特に人気のある両者なのだ。


手合わせは、子供の頃から星の数ほどしてきた幼馴染みなので、手の内は知り尽くしている。

リンは、ファビウスの華麗な剣捌きに合わせて、自身も流れるような太刀筋で受けた。


「おい、手加減するなよ」

「スタイルの変更だ、手加減はしてない」


まるで一対の美しい剣舞のようで、特にレディ達は大盛り上がりだ。

きゃあきゃあ、と甲高い歓声が届いてくる。


剣舞を堪能した後、リンの突きがファビウスの胸元で寸止めされた。


「参った」

やはり、星の数ほど聞いてきた従兄弟の言葉だ。剣を納めて手を差し出すと、ぐっと握り返される。


「勝負あり!勝者はカリン・ネザーランド!」

立ち会いの騎士がそう告げた。




そして剣術大会最終日の5日目。

この日は準決勝と決勝だ。

昨日からルーナを訪れている、サンズの第二王子も貴賓席にて観戦している。

試合は昼過ぎからだったが、早めに詰めかける観客や、勝敗予想の賭けを行う人達で、会場は午前中より熱気に包まれていた。


これだけ盛り上がって、決勝どうするんだ、という熱気の中、リンは準決勝に臨む。


相手は第三騎士団の団長だった。


粘りつくような太刀筋の男で、リンが苦手なタイプだったが、

無論、勝った。


礼をしながら、少々手こずったそのいらやしい太刀筋に、今度、手合わせを願おうと決めるリンだ。



そして決勝、誰もが期待したカードでの対戦となる。


リンは静かにイーサンと対峙した。


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