春の星々(140字小説コンテスト2024)テーマ「細」
ほしおさなえ主催・文芸創作コミュニティ『hoshi boshi』
春の星々(140字小説コンテスト2024)
テーマ「細」の漢字を使った140字小説
(1)
駅の階段を上り切ると肩を叩かれた。
振り返ると知らないおばさん。
「あなた、スーツの上着、しつけ糸がつけっぱなしよ」
おばさんは口元に手を当てて嬉しそうに笑う。
断捨離中、そんな入社式の恥ずかしい事件を思い出した。試しに袖を通す。細身のスーツは腕も腹もボンレスハムになった。捨てます。
(2)
感染すると嘘がつけなくなる細菌が発見され、僕は空気感染するようにそれを遺伝子操作して街にバラまいた。世界が平和になりますようにと願いを込めて。
でも、今まで以上に戦争が起きて、和平はちっともまとまらないし、夫婦は離婚、親子は絶縁。みな友を失った。
「嘘も方便」
神様は僕の肩を叩く。
(3)
ビニ傘を叩く雨の音はあまりにもか細く。まるで具現化した私の心情。故郷を出て幾日か。期待に胸を膨らませ自信満々で来たこの都会。
今日も大学の食堂で一人。もう友達を作っている人達を羨望し、スマホで新幹線のチケットを取った。GWは帰省しよう。
「さっきの授業一緒だよね?」
私は顔あげた。
<応募感想>
今回は三作とも予選敗退でした。前回はビギナーズラックだったのかな、と140字小説の難しさを実感……。
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