言の葉140字文芸:死んだ青い(背景の白い)鳥文庫
笹 慎
2023冬の星々(140字小説コンテスト第4期)テーマ「広」
ほしおさなえ主催・文芸創作コミュニティ『hoshi boshi』
冬の星々(140字小説コンテスト第4期)
テーマ「広」の漢字を使った140字小説
(1)佳作受賞
コタツにむいた蜜柑の皮を広げる。薄皮はそのままで食べるのが好きだ。
天板に顎を乗せた犬が私の口へと運ばれていく蜜柑を懸命に見つめている。そっぽを向いて蜜柑をあげようとしない私にため息をつくと、父は彼に一粒の果肉を与えた。
今はもうどちらもいないコタツで残された母と私は蜜柑を食べる。
(2)
広げていた要点ノートを閉じた。
儀式のように丁寧に鉛筆を削る。明日はマークシート式。シャープペンから鉛筆に持ち替える時間がもったいないので、鉛筆しか使わない。
十本削り終わるとキャップをつけた。
次に消しゴム。予備のために二つ。腕時計も二つ。最後に受験票。
一つ一つ鞄にしまっていく。
(3)
父は屋台で小ぶりの揚げたジャガイモが串に刺さったオヤツを買ってくれた。
ほんのりと甘くて大好きな揚げ芋。
ススキノの広場。たくさんの大きな雪像。有名ウイスキーの看板。雪でできた滑り台。
関東に引越し、ジャガイモどころか水道水さえも不味くて絶望した小学一年生の冬。
ここは星も見えない。
<応募感想>
小説関連で初めて賞をいただけて、とても嬉しかったですね。そもそも小説に限らず賞なんて小中高の皆勤賞と小学生の県絵画コンクールくらいしかもらったことなかったので。
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