暗闇の犯人

天川裕司

暗闇の犯人

タイトル:(仮)暗闇の犯人



▼登場人物

●戸月(とつき)メル:女性。27歳。独身OL。そこら辺に居る一般的なイメージでOKです。

●香取義男(かとり よしお):男性。41歳。身長170センチ。銀縁の眼鏡を掛けている。黒髪。独身サラリーマン。覗き・窃盗の常習。昼間は趣味の為ほとんど部屋に居ない。

●警察1:男性。50代。ベテラン警部のイメージで。

●警察2:男性。40代。警察1の助手の様なイメージで。

●沼田弘和(ぬまた ひろかず):男性。40歳。無職。覗き・窃盗のプロであり変質者。香取と背格好・特徴がほとんどピタリ一致。銀縁の眼鏡も掛けて居た。


▼場所設定

●メルの自宅:都内にある一般的なアパートのイメージでお願いします。

●向かいのマンション:メルが住むアパートからそれほど離れてない。普通のマンションのイメージでOKです。香取の部屋はそのマンションの2階。


NAは戸月メルでよろしくお願い致します。



イントロ〜


あなたは誰かに、自分の部屋の中を覗かれた事はありますか?

自分の日常を誰かに覗かれると言うのは

まるで心の中を覗かれているようで嫌な気がしますよね。

でも、そうした覗きと言うのは、向こうから一方的にやってくるもの。

回避しようとしてもなかなか出来るもんじゃありません。

今回は、そんな覗きにノイローゼになり、

その犯人をどうしても突き止めそれなりの制裁を下そうとした

ある女性にまつわる奇妙なエピソード。



メインシナリオ〜


ト書き〈自宅アパートで・覗かれている〉


私の名前は戸月メル。

今年27歳になる独身OL。


私は都内のアパートに住んでおり、

周りにはマンションやアパートが同じように建っている。


そして私は今悩んでいる。


(夜)


メル「…ま、まただわ…。絶対にあれ、こっちを覗いてるわよ…」


カーテンの隙間から向かいのマンションを覗いて見ると

丁度このアパートから数百メートルも離れていないマンションの2階から、

私の部屋をじっと観察している誰かが居るのだ。


おそらく男。

部屋の電気を消してあるから、手持ちの双眼鏡で相手を覗いてみても

実際その人がどういう人なのか…それがよく分からない。


ト書き〈数日後〉


でも確実にこっちを覗いていると知ったのは

それから数日後の事だった。


電話「プルルルル!プルルルル!」


私の部屋には会社の仕事の都合で固定電話を設置しており、

それが毎晩決まった時間に鳴るのである。


(恐る恐る電話に出る)


メル「…はい」


謎の男「…よぉ、今日もキレイだなぁ、あんた。へへ…なぁ俺と付き合ってくんねぇか?今お前の事をよく見てるぜ、向かいの部屋からよ」


メル「ひっ…!」


私はすぐに電話を切った。

「明日必ず警察に通報してやろう」

そう思いその日は寝ようとしたのだが、

それから電話が数回鳴った。


もう取るまいとしていたのだが、

知り合いや会社からの電話かもしれず、

全部無視するわけにも行かない。


と言うのも、私は今携帯電話を持っておらず、

固定電話や電子メールで連絡のやり取りをしていたから。

急ぎの用事なら電話でかかってくる。


そしてもう1度出てみると、やっぱりあの男。

すぐに電話を切った。


でもこんな事で怯えている内、

「どうして私がこんな奴の為に悩まなきゃならないのよ」

と言う気になり、私はまた部屋のカーテンを少し開け、

向かいのマンションのあの部屋を

暫くじっと睨み付けるように覗いてやった。


やっぱり電気は消してある。

でも僅かな明かりが部屋の中にあったようで、

それを頼りに、今この部屋を覗いているあの男の

輪郭のようなものが薄っすら分かった。


眼鏡をかけている?それも銀縁の眼鏡。

体格はそれほど大柄ではないが私よりは背が高い。

多分170センチぐらい?


それぐらいしか分からなかったが、電話の事と

その向かいのマンションに明かりを消して人が居る事から、

「確実に、あの男が私の部屋を今覗いてるんだ」

と言う事が分かった。

これだけでも大きな収穫だ。

あの男を警察に通報し、捕まえて貰う為には。


ト書き〈奇妙な展開〉


次の日、私は会社を休んだ。

そして朝少し迷った後、やっぱり警察に通報する事にして、

少しカーテンを開けてまたあの部屋を覗き、

それから受話器を取ろうとした。


でも、これは前から思っていたが、

あの向かいの部屋、昼間はずっと誰も居ない。

おそらく仕事で居ないんだろうと思っていたが、

これまで土日や祝日にあの部屋をここから見ていた事もあり、

その時でも誰も居なかったのを思い出していた。


少し変だ。

つまり人の気配が全くしないあの部屋。

夜になるとその時だけあの悍ましい人の気配がし、

その暗闇から私の部屋を覗き続けている… という

奇妙な展開になっている。


でもそんな事はどうでも良いとして私は警察に通報。


(警察が来る)


警察1「あの向かいのマンションですか?」


メル「ええ、もうずっとなんです。ほんとに気味が悪くて…」


警察1「ふむ…」


警察2「とりあえず行ってみますか?」


2人の警察官が来てくれて

私の部屋から向かいのマンションを確認した後、

そのマンションの部屋まで歩いて行った。

私はもちろん自宅で待機。


でもやっぱり留守で、警察はすぐに帰ってきた。


それから数日後。

また同じようにして警察に通報。

その日は、向かいのマンションの部屋にあの男が居たからだ。


双眼鏡でこっそり覗いてやったが、

銀縁の眼鏡をかけており、そんなに大柄ではないが背は170センチぐらい。

髪は黒髪で、いかにも真面目そうに見える男だ。

昼間だから良く見える。


私があの夜にこっそり覗いたあの男の特徴に一致している。

確かに暗闇の中だからそんなに自信はなかったが、

こんな状況ながらそれが精一杯。


でも恐怖で心が敏感になっていたのもあり、

自分の身を守る為にと相手の特徴をそれなりにしっかり掴んで居た。

だからある程度は確かだろう、そう思える確信も私にはあった。


ト書き〈警察の取り調べ〉


その日は私も警察に連れられて、

一緒に向かいのマンションの部屋まで行った。


この男は昼間ほとんど居ない。

だからこの時こそ捕まえて、もう2度とあんな事をさせないように

ととどめをさしてやろうと思って行ったのだ。


(向かいのマンションの部屋の前で)


香取「え?私がこの方の部屋を覗いてたって?」


警察1「ええ」


香取「じょ、冗談じゃありませんよ!そんなこと私1度もした事ありません」


メル「嘘よ!毎晩、毎晩、覗いてたじゃない私の部屋を!」


香取「な、なに言ってるんですかこの人は…?」


警察2「あなたの自宅に置いてある固定電話から、発信履歴を確認させて貰いました。この部屋からあなた、向かいに住んでおられるこの方の部屋に電話をかけていますね?それも深夜帯に」


香取「は、はあ?」


警察1「まぁ彼女が被害を報告したのは今月の事ですので、まだ電話料金には気づいてませんでしたか?でもここから彼女の家に電話をかけていると言う事実がある以上、あなたを疑わないわけには行きません」


香取「ちょ、ちょっと待って下さいよ!僕ほんとにそんな事してないんですって!」


警察1「犯人は誰でもそう言いますよ。とにかく任意の形ではありますが、一度署までご同行を願って、そこで事情聴取させて貰って良いでしょうか?」そのほうがあなたの為にもなると思いますよ?」


このマンションの住人は香取さんと言った。

もちろんここへ来るのは初めて、

彼とこうして対面した事もこの日が初めて。


でもこうして見ていると、

やはり彼が犯人だと言う確信が段々膨らんでくる。


犯人は自分のした事を隠す。

警察が言った通り、彼は秘密を隠している。

その事が私にもよく分かってきた。


ト書き〈数日後〉


それから数日後。

あの男・香取さんはやっぱり逮捕された。

理由は覗き・窃盗。


民家に勝手に侵入して泥棒までしていたらしく、

部屋の窓から他人の部屋を覗くのが趣味だったらしい。


メル「やっぱり…」


私もそれを知って、改めて恐怖した。

これまで何のトラブルもない

平穏な1日を過ごして居ると思っていたのに、

まさかあんな人が私のすぐそばに居たなんて。


(後日に警察が来て)


警察1「まぁこれでもうあなたの日常が脅かされる事はないでしょう。よく通報して下さいました。街の平和を守る事ができて、あなたに感謝しますよ」


メル「こちらこそ、ほんとにどうも有難うございます。お陰で夜、ゆっくり眠れそうです」


警察2「まぁまた何かあればすぐにご連絡下さい。それでは」


警察は後日にやってきて、事後報告をして帰って行った。

警察は頼りにならないなんて言うけれど、実際はそうでもない。

ちゃんと然るべき措置を取ってくれ、

あの男を牢屋に収監してくれた。


これで私の平穏な1日が戻ってきたのだ。


ト書き〈本当のトラブル〉


でも、それから僅か数日後の事だった。

仕事から家に帰ると、

部屋の中の様子が何か微妙に違っているのに気づいた。


テーブルの上に置いてあった筈の物が無く、

他のアンティークなんかも微妙に位置がズレている?


「何かしら?」と思いながらも更に部屋を確認していく。

すると悍ましい光景を目にした。


メル「な…なによ、これ…」


下着をしまってあるタンスの引き出しをあけて見た時、

白い液体のようなものが所々に付着していたのだ。

おそらく男性の体液…?


恐怖におののいたその時、電話が鳴った。


電話の音「プルルルル!」


メル「ひっ…!」(呼び出し音に驚く形で)


私を悩ませ続けたあの男かと思ったが、もちろん相手は警察。


警察「今、ご自宅に居られますか?」


メル「え?あ、はい」


警察「良いですか?落ち着いてよく聞いて下さい。まずその部屋をすぐに出て下さい。そしてすぐ警察のほうへ来るように」


メル「え?…何を言って…」


警察「あの男の電話履歴とアリバイを調べた結果、あなたが掛けてきたと言うその時間帯に、香取は部屋に居なかったんです」


メル「……え?それはどう言う…」


警察「つまり香取じゃなかったと言う事です。警察をそちらに向かわせてますから、到着したらあなたはすぐに彼らに従ってこちらへ来て下さい」


警察「香取は確かに覗き・窃盗の常習犯で、昼間は自分の趣味の仕事に当てていた日が多かったようです。だから昼間、あの部屋にほとんど居なかったのでしょう。でもそれはあなたの部屋じゃなく、別の人の部屋だったんですよ」


警察「良いですね?あなたはすぐにその部屋から出て、そこから最寄りの並木公園に行って下さい。そこは人通りが多い筈。あなたのアパートとその公園に、二手(ふたて)に分けて警察を向かわせてますから」


始め訳が分からなかったが、よくよく冷静になってみると

その事情が全て解った。


この部屋が変わっている様子。

そして何よりさっきのタンスの中の異常な光景。

「この部屋に居るのは危ない」

確かにそう察知して私はすぐ部屋を飛び出そうとした。


(トイレからゆっくり沼田が出て来る)


するとトイレの中から…


沼田「はぁあぁぁ〜♪よくも俺を捕まえようとしやがってぇ♪でもやっと2人きりで会えたねぇ。さて警察が来るまでに、君にはそれなりの制裁を受けて貰う事にしようかぁ…」


私はただ目をまん丸くしたまま、一言も言えずに

その男を棒立ちで見ているしか出来なかった。


ト書き〈数日後〉


それから数日後。

私は今、警察署に居る。


あれから本当に運良く警察が私の部屋に踏み込んでくれて、

あの男を逮捕して私を助けてくれた。


私の部屋を本当に覗いていた真犯人はこの男。

名前を沼田弘和と言った。


(署内の談話室にて)


警察「本当に、事が起きる前にあなたを助ける事ができて良かった」


メル「あ…有難うございます…」


私は少し放心状態でいる。

これから警察の勧めでとりあえず病院へ向かうところ。

心の静養の為。


警察「まさか沼田があの部屋に侵入していたとは。香取もそれに気づかず、我々にとってすら盲点でした。背格好・特徴が似ていたと言うだけで。香取が部屋に不在の時を狙って入っていたのでしょう、その際に自宅の鍵を盗み予備キーを作って居たようです。奴は先に捕まった香取よりも、その道にそれなりに精通したプロの覗き屋、窃盗の常習だったようですね」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=Nye32gMH1nY&t=196s

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

暗闇の犯人 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ