愛の色彩

「もし愛に色があるとすればこの花のような色なんだろうね」と彼はことあるごとに薔薇をくれた。


大切にしたくて枯れないようにと素人知識で作ったドライフラワーはもう黒ずんでしまった。


私の目の前に横たわる彼から溢れた中身のように。


よくある話だと思う。

彼には妻子がいて、私は所詮秘密の遊び相手。

別れ話を切り出された末、手近にあった電源コードを彼の首に巻き付けてからもう48時間が経過した。


ふと、思い立ってキッチンから包丁を持ってきたのは確かめたかったからだ。

彼には愛があったのか。


「あなたのうそぶいた愛の色は貴方の中には無かったのですね」


ぽつりと呟いて、私は自分の首に包丁をあてがった。

あぁ、私の愛はこんなにも綺麗な赤色だ。


※『短歌の秋』投稿作品からSS書いてって言われたので書きましたっ

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雪月の淡々とショートショート 雪月 @Yutuki4324

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