第2話 再チュートリアル
ゲームが起動し、キャラクターを新規作成をする画面から始まる。
二度目となるニューゲームスタート。
一度目とはわけが違い、既に周りと比べれば出遅れている状態。
だが、今まで培った知識と新たに攻略知識を得た遊戯にとっては最初で躓くことも、行き詰ることもないだろう。
キャラクターの外観やキャラクターネームを決める画面に切り替え、少々いじる。
このゲームは特殊な技術によって現実世界の性別と体型、そして顔だちのままゲームのリソースにスキャンされ、そのままの自分が反映される。
その為、ゲーム上であっても性別を変えることや本来の体型をいじることはできない。
その要素も、第二の人生とも呼ばれる所以だ。
このキャラクター画面においていじれるのは、髪型や眉毛、まつ毛なんかもいじれる。
身体構造をいじるものじゃなければ、基本的にゲームで変えられるというわけだ。
「前回のキャラに似せるか?」
このゲームにおいて色んな楽しみがあり、その中でもロールプレイングという、通称RPが流行っている。
ゲームのキャラクターになりきって個性を出し、あたかも別の自分を演じているかのようにキャラクターを操作することでこのゲームを楽しむ人もいる。
その人の一人である遊戯だが、前回のキャラクター設定と同じにしようかと考えた。
「やっぱやめとくか。今回はロールプレイングなんてやってる暇ないんだ。普通でいこう」
前回のキャラクターのロールプレイングはかなり特殊で、設定をこだわってプレイしていたが、今の自分には荷が重いと感じその案を却下する。
何も見た目はいじらずに名前を設定していく。
「そうだな......タダノでいいか」
なんとも安直で苗字に一文字を追加しただけだが、特にこだわりがないのでそのまま決定することにした。
遊戯改めタダノは確認ダイアログを承認し、キャラクタークリエイトを終了すると画面が移り変わった。
《ようこそ。我々の世界、ライフへ。ライフの地へ降り立つ前にただいまより、チュートリアルを始めます》
パッと現れて出てきたのはチュートリアルの案内人、AIのウルズ。
基本操作や遊び方についての説明を彼女がしてくれる。
《ライフでは剣や槍、魔法といった攻撃システムが存在し、これらの要素は
ジョブ。
このゲームのRPG要素として、各武器や専用スキルといった習得できるジョブが専門的に決まっている。
剣を持ちないなら剣士系統のジョブ、魔法を使いたいなら魔法士系統のジョブに転職しなければならない。
ジョブはレベルを一定値上げて協会の施設に行かなければ基本的には転職できない。
ただ例外は存在し、【ライフ】には特別な要素として“ユニークジョブ”や“ユニークスキル”というたった一人のプレイヤーしか転職、または会得することができないものがあり、専用クエストを受けることで転職できるようになる。
乗っ取られてしまったタダノのアカウントも、ユニークジョブに転職したレアキャラだったのだ。
《プレイヤーのレベルを上げると転職可能クエストが受注できますので、レベルアップなライフをお楽しみください》
ユニークジョブはたった一人しか手に入れることができないジョブだ。
情報が出回っているわけもなく、何かしらの転職条件を満たさなければユニークジョブの転職は難しい。
今回はそこまで期待していないタダノ。
場面転換され、見慣れたスキル画面の様子がホログラム上に映し出される。
《次にスキルについてのご説明です。スキルはこのように、スキルツリーを用いてスキルを解放していき、プレイヤーの能力が上がっていきます》
説明としてスキルツリーが映し出され、どんどん解放されていく様子が映る。
ジョブによってスキルやスキルの多さも変わってくる。
スキルはこのゲームにおいて重要な要素といえるだろう。
《スキルの取得条件はプレイヤーのレベルを上げるか、各スキルの条件を満たすことによって解放されます》
そして、映し出されていたスキルツリーの映像が変わり、次にスキルを使っている棒人間が現れた。
《次にスキルレベルついてのご説明です。各スキルには熟練度があり、スキルの使用量とモンスターの強さ、または作業の難しさによって熟練度の経験値の取得量が変わります》
モンスターを倒す棒人間や料理をして経験値を稼いでいるアニメーションが、無駄に凝っていて面白いと評価するタダノは以前のチュートリアルと比較した。
(アプデでこんなところも変わったのか)
初期の頃はこんなホログラムは用意されていなかったが、誰でも分かりやすいようにとアップデートで追加したのだろう、と予想するタダノは次の説明を聞く。
《更に熟練度を上げることによってスキルの威力や効率がアップし、今まで以上の効果が期待できるでしょう》
それからのチュートリアルの説明は、 スキルの使い方やスキルツリー、ステータスの出し方の説明が行われ、学び直すいい機会となった。
《それでは最後に、モンスターとの戦闘についてご説明いたします。プレイヤーの方には戦闘を行って頂きますので、インベントリからご自由に武器をお持ちください》
と、目の前に最初のモンスターであるゴブリンが現れた後、武器がインベントリに用意される。
武器種はジョブに依存するが、例外としてジョブに転職していない状態では武器の制限は受け付けない。
しかし、ジョブ持ちと比べるとスキルの種類もごくわずかで、魔法要素にも触れられないジョブだ。
つまり、ノージョブは自分に合ったプレイスタイルを見つけるためのお試し期間のようなものだ。
以前と同じく、タダノは剣を選び構える。
《モンスターにはそれぞれ弱点が存在し、戦闘を通して弱点を見つけてみましょう。それではモンスターの戦闘を始めます》
今まで動かなかったゴブリンが動き始める。
通常のゴブリンは棍棒を持っているはずだが、制限として素手で戦おうとしていた。
《モンスターにもHPが存在し、モンスターの頭上にHP表記を現すHPバーがあります。モンスターに直接ダメージを与えるとHPゲージが削られ、ゼロになるとモンスターは倒れます》
ゴブリンは襲い掛かるようにタダノに駆け出し、攻撃を狙う。
タダノは素手の攻撃を剣で受け止め、蹴りを放つとゴブリンは後ろに倒れかける。
その隙を逃すわけがなく、剣でゴブリンにダメージを与える。
だが、ゴブリンも負けじと攻撃を放った。
しかし、その攻撃は華麗に交わされる。
意表を突かれたゴブリンは、残り半分のHPを削られあっという間に戦闘が終わる。
モンスターの弱点は個体によって場所も違うため、戦闘を通して弱点を探す必要があるのだが、モンスターの弱点がわかる前に倒してしまった。
だが、まだチュートリアルは終わっていないようだ。
また次にゴブリンが現れ、続いては棍棒を持ったゴブリンだ。
《戦闘システムには、武器がぶつかり合うときにタイミングを合わせると“パリィ”といった攻撃をはじき返すカウンターシステムが存在します。実際に成功するまで試してみましょう》
この戦闘はパリィが成功するまで続くチュートリアル。
パリィをする際に戦闘アシストシステムがタイミングを教えてくれる。
時間をかけることはないだろうが、成功するまでに慣れが必要となる。
先ほど、タダノは戦闘アシストシステムをオフにしていた。
とはいえ、プレイヤースキルはお手の物。
ゴブリンの棍棒をタイミングよくはじき返した。
パリィをすると、数秒の間攻撃モーションに入るまでに遅れる。
その隙がねらい目だ。
《おめでとうございます。これにて戦闘チュートリアルが終了となります》
ゴブリンを倒し終えると、チュートリアルの案内人であるウルズが拍手を送り、ここでのチュートリアルが終わったことを伝えた。
《それでは、これよりライフの地へ転移します。わからないことがあれば、ステータス画面よりヘルプを押していただくとご説明が記載されていますので、ご参照ください》
最後の最後でチュートリアルの案内人らしく、説明くさい。
ただ、やっと本当の意味で【ライフ】に舞い戻るんだと、鼓動が高鳴る。
《それでは転移を始めます。よいライフを!》
ウルズが手を振り、プレイヤーの転移を見送る。
そしてタダノは徐々に身体が消えるように転移を始めた。
目を閉じ、転移の感覚が終わると同時に瞑っていてもわかる光が閉じた瞼越しにも光がさす。
徐々に目を開けると、そこは始まりの町と呼ばれる最初の初期スポーン地点であり、全ての始まりの場所―――。
「帰ってきたぞ、ライフ!」
周りには防御を固めた装備を着るプレイヤーや、オシャレな服装を身にまとうプレイヤー。
そして、まるで本物の人間のように生活するNPC。
新たなスタートがここから始まる。
第二の人生は、これからなのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます