第三十三話 消える

 都内某区の、とある町なかに、奇妙なスポットがある。

 昼間は何の変哲もない、細い道路である。しかし夜間に、道路の「ある一点」を通り過ぎようとする時だけ、おかしなことが起きる。

 明かりが、消えるのだ。

 例えば、車や自転車のライト。あるいは、手にしたスマートフォンの光。そういったものが、パッと消える。

 すぐにその場所を通り過ぎれば、再び元どおり点くのだが、光が消えたことに驚いてその場に留まったりすると、いつまでも点かないままだ。

 そうした理由からだろうか。この付近だけは、街灯も建っていない。

 代わりに「夜間注意」とだけ書かれた看板が、近くの電柱に、ひっそりと取り付けてあるばかりだ。


 光が消える原因は、今もってはっきりとしない。

 ただ、ちょうどこの地点に、お稲荷様の小さな社がぽつんと建っているのは、きっと偶然ではない……のかもしれない。


  *


 『絵本百物語』に曰く、「ぎつね」は時折提灯の火を取り、蝋燭ろうそくを食らう。

 突然明かりの消える場所があったら、それは狐の仕業かもしれない。

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