第2話
まろと僕が出会ったのは、そんな毎日の繰り返しのなかだった。
なんで家に連れて帰ったのかはっきりとは覚えていない。初めて出会ったのは家の近くのドラッグストアだった。その日もスロットに負けた僕は、カップラーメンにお菓子、ジュースと生きるための主食を買いに行った。すると、柵の中にまろがいた。しかも半額のシールを頭に貼られて。
─ドラッグストアってぬいぐるみまで売ってるのか。
そう思ってなんとなく近づいてみた。
「こぶたのブーちゃん」
タグを見てあまりにそのままの商品名に思わずクスッときてしまった。そして、四十cm程のこいつを思わず買い物カゴに入れた。
なんで連れて帰ったのか覚えてはいないけれど、でもきっと、少しでも寂しさを紛らわせたかったんだと思う。半額になってなかったら買っていなかったかもしれないけれど……。
丁寧に半額シールを剥いだつもりだけど、少しだけ眉間?のところに後がついてしまった。
「シール貼るなんて酷いよな」
「仕方ないでぶ。みんな貼られる前にどっか行ったでぶ」
もしかしたら、ぬいぐるみの世界は人間の世界よりも大変なのかもしれない。
「どうしてまろを連れて帰ってくれたでぶか?」
「うーん。寂しいからかなぁ。あと正直言うと、半額だったから。てか、自分のことまろっていうんかい」
その瞬間、こいつの名前は「こぶたのブーちゃん」ではなくなった。
「まろちゃんやな。今日からまろちゃん」
「良いでぶ。良いでぶ。まろ可愛いでぶ。まろは可愛いうさぎさんでぶ」
「うさぎさん?あぁ……うん。まろは可愛いうさぎさんやな。とりあえずよろしくね」
本人は自分のことを、こぶたではなくうさぎさんと思っているらしいことが、このとき初めてわかった。
って、ぬいぐるみと話し始めるなんていよいよ終わりって他人は思うかもしれない。
でも、正直言うと、まろが家に来てくれて、毎日がこれまでより楽しくなりそうな気が僕にはしていた。
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