歩様

 歩様は柔らかさとリズムをよく見るべきだろう。個人的には特に柔らかさを重視する。


 まずはリズムから入る。

 リズムのよい歩きとは、歩行時の各部の動きが滑らかで高い連動性を持ち、バランスよく歩く事である。

 馬体の回でも述べたが、走るという動きは全身運動であり、地面を蹴った力を上手に推進力に変換しなければならない。その為には各部が滑らかに可動し、かつ連動していなければならない。人間でも走る際に足の動きに合わせずにデタラメに腕を振っては上手く走れない。それは馬も同じである。

 また、リズムよく歩ける馬は運動神経が良く、センスのある走りをする場合が多いと言われる。

 では、リズムの良い歩様とはどのようなものかという本題に移る。

 とりあえず見るべきは背中と首の動きである。背中を上方に反らすと同時に首を上げ、背中を丸めると同時に首を下げる。首とトモの上下運動が同時に行われ、波打つような動きをしているものがよい。

 その動きが足の動きと綺麗に連動しているかも重要である。一歩前に進むごとに馬は首を下げるが、脚の動きと首の動きが揃っているかも見るべきだろう。

 この際、首だけが前へ前へと突きだす動きのものは良くない。トモ力が弱く、首の力で無理に推進している可能性がある。しかし、単純に気性の荒さという可能性もあり、脚周りの動きも良く見ておく必要がある。

 上記した首、背中、脚等の要素が全て上手く噛み合い、高い連動性を持った馬は走った際にスムーズな走りを行うと考えている。


 次に歩様の歩様の柔らかさに移る。歩様の柔らかさとは、体の柔軟性及び可動域が重要である。背中、前躯、後躯の部位に絞って歩様の個人的な判断基準を綴る。なお、ダート馬と芝馬では後者の方が柔らかい為、血統面等を鑑みて判断する必要がある。


 まずは背中だが、柔らかさのある馬は歩いた際に背中が波打つような動きをする。

 チーターは走る際にダイナミックに背中を動かす、四足歩行の生物は走る際に背中を使う。馬はチーター程は背骨の曲がらない生き物だが、これは馬も同じであり、背中を上手く使える馬はよく走ると考えている。


 前躯とは書いたが、ここで最もよく見るべきは肩となる。

 前肢を出す際、しっかりと肩から動いているかを確保する。肘だけが曲がって肩関節が殆ど動いていないものは可動域が狭く、動きも悪い場合が多い。

 また、肩関節が固くては前肢を前に伸ばしきれる事が出来ず、必然的に一完歩が小さくなってしまう。そのため、肩の柔らかさ、可動域が重要となる。


 後躯は可動域と飛節に注意を払うべきだろう。前肢の踏んだところよりも前に後脚が着き、蹴り切る際に飛節が伸び切っているものは可動域が大きく良いと言われる。個人的にはどの馬も前肢の踏んだ地点かそれより前に後脚が着いていると考えている。そのため、脚を開いた際の角度や体の中心からどの程度の位置に脚が着くかという見方をする。しかし、走法によってピッチはストライドよりも可動域が小さい場合がある。

 曲飛であろうと直飛であろうと飛節が曲がらない物は良くない。しっかりと曲がっているかを歩様で確認する必要がある。また、ピッチとストライドでは飛節の動きが違うので注意して曲がり方を見るべきだろう。

 蹴り切る際には飛節が伸び切っているものが良いが、この際に蹄が上に逃げる動きをする場合、地面を蹴りきれずに力が上に逃げている可能性がある。

 飛節が伸び切ってからバネの様に戻るものが良い。


 歩様のリズムと柔らかさについて述べたが、馬体同様に全体と細部の双方を見て馬の良し悪しを判断するべきだろう。しかし、歩様は複雑な為に一度の判断で全てを決めてしまうのは早急であり、判断を何度も繰り返し、時間をかけて馬を理解する事が重要である。

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