馬体、第一印象と細部

 正直に言えば馬体が一番難しく、見れば見る程わからなくなってくる。なので個人的には第一印象、ぱっと見たときの印象が信頼できると考えている。細部を見すぎないで全体のバランスだけを瞬時に捉えているからだろう。


 名馬と呼ばれる馬は美しい馬が多い。これは真理だと私は思っている。

 理由なくこのような事を思っている訳ではない。歪みのない美しい骨格、適切に位置して十分に発達した筋肉、健康を示す毛艶、走るための要素は外見的美しさの要素でもあり、美しい馬は走る馬だと考えている。

 では、どうやって馬体を見るかであるが、ぱっと見る見方、細部を見る見方がある。いわゆる全体バランスと細部の造りの話である。

 パッと見る見方は論理的に説明可能だが、感覚的な部分が大きい。極端な話、見ればわかる。名高い芸術作品を見れば美しいと感じるのと同じで、好馬体は見れば美しいと感じる。

 感じる、感覚という物は最終的に人間の脳が処理している論理的な代物(神経伝達等)である。つまり、脳が美しいと感じる論理があってそれを上手く言語化できていないだけである。それを言語化及び細分化したものが細部を見る見方に繋がる。

 まず、馬を見た時、最初に見て良いと思ったらその感覚をよくよく自己分析するのが良いと考えている。なぜ良いと感じたのか、自分の好みが過分に含まれていないか等を精査する事でよりその馬の本質的能力を推し量れるだろう。


 細部の話は細かくすればどこまでも細分化できるが、ここではある程度大枠として馬の各部位について簡単にまとめていく。


 頭。

 頭は首と共に歩行時に振ってバランスを取る。人が歩く時に腕を振るのと同じである。

 そのため、頭が大きすぎたりするとバランスが悪くなる。

 馬は鼻で常に呼吸するため、鼻腔は大きい方が良い。

 耳は注意の向く方向に動き、威嚇等の緊張状態だと耳を後ろに向けて、絞る。馬体写真や動画を見る際にその動きから気性をある程度把握出来る。目も同様に気性の把握に役立つ。


 首。

 頭同様に歩行時のバランスを取る際に重要となる。

 重量のある頭を支えるので太さのあるしっかりとした首が良い。しかし、距離適性によって長さや太さの傾向が異なるので血統含めたその他要素も加味しなければならない。


 肩。

 立っているか寝ているかで距離適性が変わってくるので、角度に注意を払う必要がある。筋肉量は多いほうが良いが、サンデー系とミスプロ系では後者の方が筋肉質になるなど、血統も加味しなければならない。


 前肢。

 肩の中心辺りから伸び、反りなくまっすぐ伸びているのが良い。馬体写真では繋の角度でやや前肢を内側に向けているのも見られるが、重量重心から大幅に逸脱していなければ問題はない。基本的に真っ直ぐで十分な筋肉を伴っていれば良い。

 前肢全体のバランスは前腕が管より1.3倍程度長い方が良い。管が細い、長いのは足元が弱く、好走し辛い傾向がある。そのため、長すぎずに太さのある頑丈な管が良い。

 繋は芝ダートで変わるが45度を基本として立ぎみ寝ぎみを判断すると良い。立つにしろ寝るにしろあまり角度が大きいと推進力を発揮しない場合が多い。

 各関節はゴリッとしてしっかりとした丈夫なものが良い。


 背。

 キ甲からトモにかけて下がって盛り上がるラインが滑らなものが良い。成長によってキ甲の高さが変わるので、若駒を見る際は留意するべきだろう。窪みすぎ、平坦過ぎるものは背中を上手く使えない可能性がある。


 腹。

 血統によるが、ある程度腹袋はある方が良いと個人的に思っている。


 胴。

 胸の深い方が心肺機能に関係する臓器の容量が大きく良い。背骨の突起であるキ甲から胸下という測り方をすると、内臓容積の推測を誤りやすい。そのため、胸の深さと浮いたアバラを見て肋骨のサイズを意識するとやりやすいと個人的に考えている。

 前躯、中躯、後躯の比率と合わせて背中側のラインと腹側のラインにより距離適性、脚質を推測できる。


 トモ。

 推進力を生み出す重要な点であり、容積の大きいほど良い。

 斜尻や平尻等、骨盤の角度があるが、最近の産駒はほとんど斜尻の印象である。極端な場合を除いて個人的に角度はあまり気にしない。代わりにヒバラから臀端にかけての幅や、後脚付根の幅といった、容積を重視する。


 後肢。

 トモで記述したが付根部、脛の筋肉がしっかりとついている方が良い。飛節は曲がり方で瞬発力の有無を推測できるが、胴の長さ等の要素とのバランス次第でもある。

 臀端から垂直のラインに飛節の端が位置しているのが良いが、立ち姿次第でわかりにくい場合があるので注意。

 管は前肢同様に太いほうが良い。ただし、前肢と違い、脛と比較して同じ程度で長い方が良いとはならない。

 

 蹄。

 地面と接する部位であり、厚みがある方が良い。長すぎたりすると地面を蹴りきれなかったりするので良くないが、装蹄の過程で整えるので、極端でなければ良い。


 ざっと連ねたが、これら含めた各部位を吟味する事でその馬への理解を深めることができる。

 何度も書くが、第一印象で良いと思ったらそれを忘れずにいると良いだろう。しかし、それを過信せずに冷静に細部に目を向ける事も同じく重要である。

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